空き家の片付け費用、100万円以上「損する人」と「得する人」

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私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!

はじめに:あなたの空き家の片付けは、100万円「損する」か「得する」かの分かれ道にいる

もし、あなたが空き家になった実家の片付けで「100万円」損をする可能性があるとしたら、どうしますか?

「そんな大げさな…」と思うかもしれません。 しかし、これは決して煽りや脅しではありません。空き家の片付けという、多くの人が一生に一度経験するかどうかという不慣れな世界では、業者選びや段取りを少し間違えるだけで、支払う金額に平気で50万円、100万円という差が生まれてしまう、恐ろしい現実があるのです。

なぜなら、その差額は、 (支払わずに済んだはずの費用)+(手に入ったはずの買取金額) という、二重の損失から生まれるからです。

例えば… 「損する人」は、よく分からないまま80万円を請求する業者に依頼し、価値があったはずの家財もすべて「ゴミ」として処分されてしまいます。支出は、80万円。

一方で「得する人」は、正しい知識で優良業者を探し出し、40万円で作業を依頼。さらに、家の中にあった古道具や骨董品に10万円の買取金額がつき、実際の負担は30万円で済みました。支出は、実質30万円。

その差は、実に50万円。もし悪徳業者に不法投棄などのトラブル費用まで請求されれば、損失はあっという間に100万円に達します。

これは過去の私が陥りかけた、恐ろしい罠そのものでした。 何も知らなかった私は、最初に見つけた業者に言われるがまま、危うく「損する人」の仲間入りをするところだったのです。

この記事では、私が実際に体験し、多くの事例を調べる中で見えてきた「損する人」と「得する人」の決定的な違いを、余すところなくお伝えします。小手先のテクニックではありません。あなたの資産を守り、不安を自信に変えるための「知識」です。

読み終える頃には、あなたは空き家の片付けに対する漠然とした恐怖から解放され、「これなら自分で業者をコントロールできる」という確かな自信を手にしているはずです。

目次

第1章:【費用の全貌】知らないと9割が損をする。空き家片付け「料金」の正体

空き家の片付けを考えた時、私たちの頭に最初に浮かぶ、そして最後までつきまとう不安。それは、「一体、いくらかかるんだ?」という、あまりにも不透明な料金の問題です。

まるで時価の寿司屋に入るような、あるいは故障原因が分からない車の修理を頼むような、言い値で請求されるのではないかという恐怖。

しかし、ご安心ください。料金の内訳は、実は驚くほどシンプルです。そして、その構造を知ることこそが、「損する人」から「得する人」へと変わるための、最も重要な第一歩なのです。

この章を読み終える頃には、あなたは業者の見積書を前にしても、もう怯むことはありません。どこにお金がかかっていて、どこを削れるのか。そのすべてが、手に取るように分かるようになっているはずです。

1-1. 料金の9割を決める「人件費」と「処分費」の内訳

業者の見積書にどんな項目が並んでいようと、その料金の9割は、たった二つの要素で構成されています。それが「人件費」「処分費」です。

  • ① 人件費 = 作業員の人数 × 作業時間(日数) これは、片付け作業をしてくれるスタッフの方々のお給料です。当然、モノの量が多ければ多いほど、家の構造が複雑(階段しかない3階など)であるほど、作業員の人数も時間も増えるため、人件費は上がります。 【目安】作業員1人1日あたり、1万2000円~1万8000円が相場です。例えば、「作業員3名で2日間」という作業であれば、人件費だけで7万2000円~10万8000円かかる計算になります。
  • ② 処分費 = ゴミの量(㎥ or t) × 処分場の単価 これは、回収した不用品を、自治体の焼却場やリサイクル施設へ持ち込んだ際に業者が支払う費用のことです。決して業者が丸儲けしているわけではなく、必ず発生する実費です。 【目安】処分費は自治体によって大きく異なりますが、1㎥(立米:一辺1mのサイコロ)あたり8,000円~、あるいは10kgあたり100円~程度が一般的です。もし2tトラック(荷台容量:約10㎥)が満杯になれば、処分費だけで8万円~15万円かかることも珍しくありません。

【罠のポイント】 「損する人」は、「人件費」や「処分費」を安く見せかける業者に騙されます。例えば、極端に安い人件費を提示し、その分を不透明な「諸経費」として上乗せしたり、回収した不用品を不法投棄して「処分費」を丸ごと浮かしたりするのです。重要なのは、この二つの費用が適正な価格で、かつ明確に記載されているかを見抜くことです。

1-2. 見積書で絶対に見抜くべき「隠れ費用」のサイン

優良な業者の見積書は、具体的で分かりやすい。悪徳業者の見積書は、曖昧で分かりにくい。この差は、「隠れ費用」を潜ませる余地があるかどうか、という点に現れます。

あなたの手元にある見積書に、こんな言葉が書かれていたら要注意です。

  • 危険なサイン①:「一式」という言葉の多用 「不用品回収費用一式」「搬出作業費一式」のように、「一式」という言葉は非常に便利ですが、内訳が全く分かりません。これは後から「〇〇は一式に含まれていませんでした」と追加料金を請求するための常套句です。優良な業者は、可能な限り項目を細分化して記載します。
  • 危険なサイン②:曖昧な「諸経費」「基本料金」 一体何に対する費用なのかが全く不明です。車両費、ガソリン代、高速代、駐車料金など、必要な経費は本来すべて個別に記載すべきです。曖昧な項目がある場合は、「この諸経費には、具体的に何が含まれていますか?」と必ず質問しましょう。
  • 危険なサイン③:オプション料金の記載がない エアコンの取り外し、ピアノの搬出、金庫の処分など、特殊な作業には通常、追加のオプション料金がかかります。これらの料金について事前に説明がなく、見積書にも記載がない業者は、作業当日に高額な追加料金を請求してくる可能性があります。

1-3. カラクリ③:一見おトクな「トラック積み放題」が、実は最も高くつく理由

Webサイトを見ていると、「2tトラック積み放題パック 〇万円!」といった、非常に分かりやすく、魅力的に見える料金プランをよく見かけます。

面倒な見積もりも不要で、定額でトラックに詰め込めるだけ詰め込める。これほどおトクな話はないように思えます。しかし、ここにこそ、「損する人」が陥る、巧妙で巨大な罠が隠れているのです。

結論から言えば、家一軒まるごと片付けるような大規模な案件で、「積み放題プラン」を選ぶのは、最も高くつく最悪の選択肢の一つです。

なぜなら、

  • ① そもそも、トラック1台に家財は全く収まらない これが最大の誤算です。「積み放題」という言葉のイメージから、1台で何とかなるだろうと思いがちですが、3LDKの家財道具一式を処分するには、一般的に2tトラックが3台~4台必要になると言われています。結局、最初の「〇万円」が3倍、4倍とかさみ、予算を大幅にオーバーするのです。

さらに箱車であれば、本当にいっぱいに積んで持っていってもらえるかわかりません。悪徳業者は半分ほど積んでまるでいっぱいかのように出発したりします

  • ②「積み放題」の対象外となる「追加料金」が満載 多くの積み放題プランでは、「積み込む作業」は定額でも、それ以外の部分で追加料金が発生します。 ・家電リサイクル料金(テレビ、エアコン、冷蔵庫など) ・階段を使った搬出作業費(2階、3階など) ・スタッフの追加料金(大型家具を運ぶ場合など) 「定額だと思っていたのに、最終的な請求額が倍になった」という悲劇は、この追加料金の存在を知らないことから起こります。
  • ③「買取」という発想が、業者から完全に消える 「積み放題」プランの業者の目的は、ただ一つ。「いかに効率よくトラックの荷台をゴミで埋めるか」です。そのため、あなたの家財の中に価値のある骨董品やブランド家具があったとしても、彼らの目には「荷台のスペースを埋めるただの荷物」としか映りません。本来なら数万円の価値がついたかもしれない品々が、ただのゴミとして処分され、あなたは大きな「得」をするチャンスを失うのです。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

編集長
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「積み放題」は、単身者の引越しなど、モノの量が明確に少ない場合にのみ有効なプランです。空き家片付けでこのプランを提案されたら、「これはおトクなプランだ」ではなく、「この業者は、私の状況を理解していない素人かもしれない」と考えるくらいが丁度いい。あなたの家の価値を正しく見極め、最適なプランを提案してくれるのが、本当のプロです。

つまり、料金の透明性は、単なる安さではなく、あなたの家の状況に合わせた「適正な提案力」によって測られるべきなのです。

この費用のカラクリを知った今、あなたはもう、業者の見せかけの安さに惑わされることはありません。 次の章では、この知識を武器に、具体的にどんな業者が危険なのか、その見分け方について、さらに深く斬り込んでいきます。

第2章:【業者選びの核心】「現地見積もり」を制する者が、すべてを制す

空き家の片付けにおける「現実の土地」とは、あなたの実家そのもの。そして、その土地を正確に測量する唯一の方法が「現地見積もり」です。

正直に告白します。遠方に住む私は最初、「面倒だ」という一心で、写真や電話だけで見積もりを済ませようとしました。しかし、それは「作業当日に、いくらでも追加料金を請求してください」と業者に白紙の小切手を渡すようなものだと、すぐに気づかされたのです。

この章では、なぜ「現地見積もり」が絶対に必要なのか、そして、その過程でいかにして「本物のプロ」と「悪徳業者」を見分けるのか。業者選びの核心について、私の失敗談も交えながらお話しします。

2-1. なぜ私は「リモート見積もり」を捨てたのか

最初に電話したA社とB社は、どちらも「写真でも大丈夫ですよ!」と快く言ってくれました。しかし、送られてきた見積書には、必ずこう書かれていました。

「※当日の物量により、金額が変動する場合がございます」

この一文こそが悪夢への入り口です。彼らは、わざと安めの金額を提示し、作業当日に「思ったより荷物が多い」「これは特殊な処分費がかかる」と、あの手この手で料金を吊り上げる余地を残しているのです。

そんな中、私が最終的に選んだC社だけが、こう言いました。 「大変恐縮ですが、お客様に確実な金額をお約束するため、必ず現地を拝見させてください。鍵をお預かりできれば、ご足労は不要です。その方が、結果的にお客様のためになりますので」

この言葉を聞いた瞬間、私は確信しました。依頼主の手間を惜しむ業者ではなく、正確な見積もりの手間を惜しまない業者こそが、本物のプロなのだと。

2-2. 「見積もり以前」で、候補をふるいにかける技術

とはいえ、何社も現地に来てもらうのは大変です。そこで、現地見積もりを依頼する価値のある業者を3社程度に絞り込むため、ホームページと口コミで「事前審査」を行います。

  • ホームページの「本当」を見抜く 見るべきは「満足度No.1」のバナーではありません。「会社概要」と「作業事例」です。 ・会社概要:番地まで書かれた住所は実在しますか? Googleストリートビューで確認し、ちゃんとした事務所か、ただのレンタルオフィスかを見極めましょう。 ・作業事例:「〇〇市で作業しました」という曖昧な報告ではなく、「〇〇市〇区、3LDK、作業員3名2日、トラック3台、費用総額〇〇円(買取〇円含む)」といった、具体的な数字が書かれているか。経験の具体性こそが、信頼の証です。
  • 口コミの「本当」を見抜く 「安くて早かったです!」だけのレビューは読み飛ばしてください。本当に見るべきは、トラブルや想定外の事態に、業者がどう対応したかが書かれているレビューです。 「当日、想定外の不用品が出たが、〇〇さんが機転を利かせて料金内で対応してくれた」といった具体的な物語こそ、その会社の「本当の姿」を映し出します。

2-3. 「現地見積もり」を、最高の面接試験に変える3つの作法

事前審査を突破した数社と、いよいよ現地見積もりの日を迎えます。これは単なる価格調査ではありません。あなたが業者を面接し、パートナーとしてふさわしいかを見極める、最高の試験の場です。

  • 作法①:家の「隅々まで」見せることを、自ら申し出る 「押入れの上段や、物置の中も見ますか?」と、こちらから声をかけましょう。面倒くさそうな顔をしたり、「大体で分かりますから」と流したりする業者は、当日になって「聞いていなかった」と追加料金を請求してくる典型です。家の隅々まで、熱心に、そして丁寧に確認しようとする姿勢こそ、誠実さの証です。
  • 作法②:曖昧な質問で「提案力」を試す 「価値があるか分からないガラクタが沢山あるんですが…」と、あえて曖昧な質問を投げかけてみましょう。 危険な業者は「全部ゴミですね」と切り捨てますが、優良な業者は「でしたら、一度すべて拝見させてください。意外なものに値段がつくこともありますから」と、あなたの「損失」を「利益」に変えようという提案をしてくれます。
  • 作法③:「見積書の内訳」を、その場で説明させる 提示された見積書をただ受け取るだけではいけません。「この『諸経費』には、何が含まれていますか?」「人件費は、何名・何日間の想定ですか?」と、一つ一つの項目について、その場で説明を求めましょう。この対話を面倒くさがる業者は、あなたを対等なパートナーとして見ていません。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

編集長
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「リモート見積もり」は、依頼主の『一時的な手間』を省くが、悪徳業者の『儲けの余地』を増やす。「現地見積もり」は、依頼主の『最終的な安心』を増やし、悪徳業者の『逃げ道』をなくす。どちらを選ぶべきか、答えはもう明らかです!

現地見積もりという真剣勝負の場を経て、私はC社という最高のパートナーを見つけ出しました。 次の章では、いよいよ「作業当日」の戦いについてお話しします。

第3章:【作業当日の攻防】「立ち会い」は原則必須。片付けの成果を最大化する技術

C社から、詳細な内訳が書かれた「追加料金一切なし」の確定見積書を受け取った時、私の心は決まりました。

「私も、現場に行こう」

大阪からの500kmの道のりは、正直言って簡単ではありません。交通費も、仕事を休む調整も必要です。しかし、C社の担当者が現地見積もりの際に言った、「もし可能でしたら、作業の最初と最後だけでも、ご家族に見て頂けると、万が一の間違いがなくなります」という誠実な一言が、私の背中を押したのです。

結論から言います。空き家の片付けは、原則として「立ち会い」が必須です。 面倒だから、遠いから、という理由でこれを省略することは、自ら「損をする」ためのドアを開けるようなものです。

この章では、なぜ立ち会いがあなたの資産と想い出を守るために不可欠なのか、その絶対的な理由と、立ち会いの効果を何倍にも高めるための具体的な戦術を解説します。

3-1. 【結論】なぜ、立ち会わないと「損」をするのか? 追加費用と貴重品紛失を防ぐための絶対法則

立ち会いの最大の目的は、「現場での最終決定権を、あなたが握り続ける」ことにあります。これを手放した瞬間に、2つの大きなリスクが生まれます。

  • ①「聞いていませんでした」という名の、追加費用リスク どんなに完璧な現地見積もりでも、当日になって「物置の奥から、見積もりにない大量の植木鉢が出てきた」「庭の隅にコンクリートブロックが埋まっていた」といった想定外の事態は起こりえます。 あなたがその場にいなければ、業者は「これは追加費用になります」と言うしかありません。しかし、あなたがその場にいれば、「では、代わりにこのタンスの処分はやめるので、そこで相殺できませんか?」といった、柔軟な交渉が可能になるのです。立ち会いは、予期せぬ出費を防ぐための、最強の保険です。
  • ②「ゴミだと思いました」という名の、貴重品紛失リスク これが最も恐ろしいリスクです。第2章でお話しした「探索リスト」は有効ですが、完璧ではありません。なぜなら、あなた自身も忘れている貴重品が、家のどこかに眠っている可能性があるからです。 私の実体験をお話しします。作業中、本棚の本を運び出す際、一冊の本の間から古い封筒がハラリと落ちました。業者の方が見れば、それはただの紙切れ。しかし、私がその場で手に取ると、中から出てきたのは、父が昔使っていた銀行の古い通帳でした。もし私がその場にいなければ、その通帳は100%、他の紙ゴミと一緒に処分されていたでしょう。この経験から、私は断言できます。想い出の品や、自分しか価値の分からないモノを守れるのは、自分しかいないのだと。

3-2. 業者を“最強パートナー”に変える。立ち会い当日の効果を倍増させる3つの振る舞い

「立ち会う」と決めたからには、その効果を最大化しましょう。ただ現場にいるだけでは意味がありません。あなたの振る舞い一つで、業者はただの作業員から、あなたの想いを汲んで動く“最強パートナー”に変わります。

  • ①あなたは「司令官」に徹し、絶対に「作業」を手伝わない 善意から手伝おうとするのは、実は逆効果。プロの作業動線を乱し、かえって効率を落とす原因になります。あなたの仕事は、リビングの隅に椅子を置き、業者から上がってくる「これはどうしますか?」という質問に、即断即決すること。迷った時のために「保留箱」を一つ用意しておくと、さらにスムーズです。
  • ②「飲み物」と「感謝の言葉」で、チームを作る 作業開始前に、ペットボトルのお茶やお水を人数分差し入れ、「今日は一日、よろしくお願いします!」と声をかける。たったこれだけのことで、現場の雰囲気は劇的に変わります。「お客様のために、良い仕事をしよう」という気持ちを引き出し、チームとしての一体感が生まれるのです。
  • ③「作業完了時」に、必ず一緒に最終確認をする すべての荷物が運び出された後が、最後の関門です。「ありがとうございました」とすぐに見送ってはいけません。「最後に、一緒に全部屋を確認させて頂けますか?」と声をかけ、各部屋、押入れ、ベランダ、物置を、担当者と一緒に指差し確認して回りましょう。残すべきものが残っているか、傷などはないか。この最後の5分が、後々の「言った言わない」のトラブルを完全に防ぎます。

3-3. 【例外編】どうしても立ち会えない場合の、損失を最小限に食い止める段取り術

とはいえ、仕事や健康上の理由で、どうしても現地に行けない方もいるでしょう。その場合は、「仕方ない」と諦めるのではなく、損失を最小限に食い止めるため、信頼できる「代理人」を立てる。 これが最も重要です。近くに住む親族や、事情をよく知る友人に、「自分の代わり」として、短時間でも立ち会ってもらうことはできないか、真剣にお願いしてみましょう。その際は、判断に迷った時にすぐあなたに電話をくれるよう、事前に依頼しておきます

第4章:【損失を利益に変える】支出を「資産」に変える。「買取」交渉の最終戦略

作業当日、私は業者の方々と一緒に、汗だくになっていました。 山のように積まれた古い雑誌を運び出そうとした時、奥から出てきたのは、ホコリをかぶった重たいオーディオアンプ。「これも処分ですね」と私が言うと、C社のリーダーが「少しお待ちください」と私の手を止めました。

「このメーカーの、80年代のアンプは…実は海外で人気があるんですよ。ガラクタに見えますが、値段がつくかもしれません」

私は衝撃を受けました。私にとってはただの粗大ゴミが、プロの目には「資産」候補として映っていたのです。

片付けを「ただの支出」で終わらせてはいけません。あなたの実家に眠る価値を正しく評価し、費用を圧縮、あるいは利益に変える。そのための最も実践的な知識と交渉術を、私の体験からお伝えします。

4-1. 「これも売れるの?」が必ず見つかる。実家に眠る、意外と価値のあるモノ一覧

「うちには、価値のあるものなんて何もない」。そう思い込んでしまうのが、一番の損失です。私たちが「ガラクタ」だと思っているモノにこそ、思わぬ価値が眠っています。 私の家で実際に値段がついたモノ、そして業者のプロが「よく見つかりますよ」と教えてくれたモノのリストです。

  • ①オーディオ機器・楽器類: 70~80年代の日本製のアンプやスピーカー、レコードプレーヤー。昔、親が使っていたギターやサックスなどの楽器。壊れていても部品としての価値があります。
  • ②古いお酒類: サイドボードや戸棚の奥に眠る、箱に入ったままのウイスキーやブランデー。特に日本のウイスキー(山崎、響など)は、驚くほどの高値になることも。
  • ③カメラ・時計・万年筆: 昔のフィルムカメラやレンズ、引き出しにしまったままの機械式腕時計(セイコー、シチズンなど)、有名メーカーの万年筆。
  • ④着物・帯: 「もう誰も着ないから」と捨てるのは待ってください。正絹の着物や帯は、専門業者が見れば価値が分かります。シミがあっても、リメイク素材として買い取られるケースも多いです.
  • ⑤趣味の道具・おもちゃ: 鉄道模型(Nゲージなど)、古い釣り具、昔のブリキのおもちゃや超合金、昔のゲーム機(ファミコンなど)やソフト。親の趣味が、コレクターの宝物かもしれません。
  • ⑥贈答品・食器類: 押入れの奥に眠る、箱に入ったままのブランド食器(ノリタケ、大倉陶園など)やタオルセット。これらは「未使用品」として、しっかり値段がつきます。

あなたの仕事は、これらの価値を正確に鑑定することではありません。ただ、「これは価値があるかもしれない」と、ゴミの山から救い出し、脇に避けておくこと。それだけで、あなたは数万円、時には数十万円の損失を防ぐことができるのです。

4-2. 「一括査定」と「専門査定」を使い分ける。「買取」で損しないための最終知識

さて、価値がありそうなモノを脇に避けました。ここからが「損する人」と「得する人」の、本当の分かれ道です。

多くの片付け業者は、「買取もやりますよ」と言って、それらの品をまとめて「一括査定」し、「全部で〇〇円で買い取ります」と提示してきます。これは楽ですが、絶対に鵜呑みにしてはいけません。

なぜなら、彼らは「片付けのプロ」ではあっても、「骨董品やオーディオのプロ」ではないからです。後で自分たちが損をしないよう、かなり安めの金額を提示してくるのが普通です。「損する人」は、この手間のかからない提案に乗り、本来得られたはずの利益の大部分を業者に渡してしまいます。

では、「得する人」はどうするのか? 答えは片付け業者を「専門家への橋渡し役」として活用することです。

私が立ち会い当日、脇に避けた品々の山を見てC社のリーダーに尋ねました。「これ、一番高く売るにはどうしたらいいですか?」と。 彼の答えは、誠実そのものでした。

「私どもで一括で買い取ることもできます。ですが、このオーディオと着物は、おそらく専門の業者に見せた方が高く売れます。もしよろしければ、私どもの提携先に、査定だけでも依頼してみますか?」

この提案こそ、優良業者の証です。目先の自社の利益より、依頼主の利益を最大化しようと考えてくれるのです。 結果、オーディオと着物は、それぞれ専門の業者に査定してもらい、C社の一括査定額の3倍以上の値段で売ることができました。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

編集長
編集長

空き家は「ゴミの山」ではない。「価値が混在する鉱山」のようなものです。片付け業者を、ただの「ゴミ収集人」として使うか、価値を掘り出す「採掘パートナー」として使うか。その視点の違いが、あなたの請求書の金額を、そして心の負担を大きく変えることになります。

さあ、これですべての戦術は出揃いました。 最後の章では、この長い戦いを終えた今、私が感じていること。そして、空っぽになった家の、その先についてお話しします。

おわりに:恐怖が「自信」に変わる時。そして、その先へ

2024年の秋、たった一本の電話から始まった、私の空き家片付け。 あの頃の私は、大阪の自宅でパソコンを前に、500km離れた実家との絶望的な距離に、ただ途方に暮れていました。

固定資産税の通知書、時折かかってくるご近所からの電話。そのすべてが、「お前は、いつまで問題を先送りするんだ」と私を責め立てているようで、実家のことを考えるたびに、胸がズシリと重くなる毎日でした。

しかし、2025年の秋になった今。 すべての片付けを終えた私は、驚くほど晴れやかな気持ちでいます。 あの重圧は、もうどこにもありません。代わりに胸にあるのは、「自分は、やり遂げたんだ」という、静かで確かな自信です。

あの日の「恐怖」が「自信」に変わったのは、なぜか。

それは、私が幸運だったからではありません。 この記事をここまで読んでくださったあなたなら、もうお分かりのはずです。 それは、私が**「知識」**という武器を手に入れたからです。

  • 料金の「カラクリ」を知ることで、業者の言い値を鵜呑みにせず、自分の頭で適正価格を判断できるようになりました。(第1章)
  • 業者選びの「本質」を知ることで、広告の言葉に惑わされず、心から信頼できるパートナーを自分の目で見つけ出せるようになりました。(第2章)
  • 「立ち会い」という原則を知ることで、罪悪感に苛まれることなく、自分の資産と想い出を、自分の手で守り抜くことができました。(第3章)
  • 「買取」という逆転劇を知ることで、片付けをただの支出ではなく、実家に眠る価値を再発見する機会だと捉えられるようになりました。(第4章)

一つ一つの知識が、私の不安を少しずつ削り取り、自信を育ててくれました。 この記事に書いたのは、特別な才能もコネもない、ごく普通の私でもできたことの全記録です。だから、あなたにできないはずがありません。

この記事が、あなたのその宿題を解くための、小さなヒントになれば。 そして、あなたの空き家片付けが、その先の未来が、素晴らしいものになることを、心から願っています。

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