
編集長
私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!
こんな人におすすめ
- 「生前整理」と「遺品整理」の違いがよくわからない人
- 自分が死んだ後、家族に金銭的・精神的な迷惑をかけたくないと強く思っている人
- 親の家がモノで溢れており、将来の遺品整理に今から絶望している人
- 親に「片付け」を切り出したいが、「縁起でもない」と怒らせそうで悩んでいる人
- 業者に頼むべきか、自分でやるべきか、判断基準が知りたい人
この記事でわかること
- 【根本的な違い】 「生前整理」と「遺品整理」の目的・主体・費用の決定的な違い
- 【メリット】 生前整理をしないと家族が負う、リアルな「費用」と「精神的負担」
- 【実践法(本人)】 遺族が本当に困る「デジタル遺品」「金融情報」から始める正しい整理手順
- 【実践法(親へ)】 親を傷つけずに「生前整理」を始めてもらう、上手な切り出し方とNGワード
- 【業者比較】 「生前整理業者」と「遺品整理業者」のサービスの違いと、後悔しない選び方
【第1章】「生前整理」と「遺品整理」は”別物”。2つの決定的な違い
「生前整理も遺品整理も、どっちも片付けでしょ?」 私も、数年前に祖父母の家を片付けるまでは、そう思っていました。
あの地獄を経験するまでは。
私が泣いた日。「遺品整理」は“答え合わせ”のない片付け
祖父が亡くなった後、親戚とアパートの片付け(遺品整理)に入りました。
私は「ただの片付け」だと思っていました。
しかし、タンスから出てくる、一度も見たことのない大量の着物。 台所の奥にしまい込まれた、高そうな食器の数々。 そして、仏壇の引き出しから出てきた、誰のものか分からない古い印鑑。
そのすべてを前に、私たちは立ち尽くしました。
「この着物、おじいちゃんは残してほしかった?」
「この印鑑、捨てたらマズいやつ?」
「この通帳、解約していいの?」
誰も、答えを知らないのです。 故人はもういないから。
結局、私たちは「きっとこうだろう」と推測で作業を進め、大量のモノを処分しました。
作業が終わった時、達成感はありませんでした。 あったのは、「本当にあれで良かったんだろうか」という、重苦しい後悔だけです。
「遺品整理」とは、故人の想いが分からないまま、遺族が“答え合わせ”のない決断を迫られ続ける、精神的に過酷な作業なのです。
決定的な違いは「主体」「目的」「期限」の3つ
「生前整理」と「遺品整理」は、言葉は似ていますが、正反対の作業です。
あなたが今、どちらについて悩んでいるのか、この表で明確にしてください。
| 比較項目 | 生前整理(今、あなたが検討中) | 遺品整理(未来の家族の苦労) |
| 作業する人(主体) | 自分(本人) | 遺族(家族) |
| 目的 | 自分のため(人生の棚卸し) 家族のため(将来の負担減) | 故人のため(供養) 遺族のため(相続・退去) |
| 期限 | ない(元気なうち) | ある(相続、退去日など) |
| 最大の価値 | 自分の意思で「残す」を決められる | 故人の意思を「推測」するしかない |
「遺品整理」は、時間制限(退去日)に追われながら、故人の想いを推測し、悲しみの中で行う「マイナス」の作業です。
対して「生前整理」は、期限がなく、元気なうちに、自分の意思で「これは残す」「これはありがとう」と決められる、「プラス」の作業なのです。
データが示す残酷な現実。「あの時…」と9割が後悔している
「うちの家族に限って、そんな苦労は…」 そう思うかもしれません。 しかし、現実のデータは、私たちに「準備」の必要性を突きつけます。
【お片づけの窓口の独自のアンケート】
「遺品整理を経験した300人に聞きました。生前に故人・親と『やっておけばよかった』と後悔したことは?」(複数回答可)
- 1位:不要なモノの処分(捨てていいかの確認)…… 78.2%
- 2位:財産(通帳・印鑑)の場所の明確化 …… 65.5%
- 3位:デジタル遺品(スマホ・PC)のパスワード共有 …… 49.1%
- 4位:写真・アルバムの整理 …… 42.0%
- 5位:保険・契約書類の整理 …… 38.8%
(調査主体:お片づけの窓口 2025年 独自調査)

このアンケート結果が示すのは、遺品整理で苦労した人のほとんどが「モノ」と「情報」の2つで後悔しているという事実です。
「捨てていいか分からない」 「どこにあるか分からない」 この2大ストレスは、すべて「生前整理」で解決できることだったのです。
「生前整理」は、家族へ渡す最高の“愛”の形
「生前整理」と聞くと、「死の準備」のようで縁起が悪い、と感じるかもしれません。私も、自分の親に切り出すときは、とても勇気がいりました。
しかし、発想を転換してください。
これは「死」のためではありません。 あなたが「残りの人生を、より快適に、スッキリと生きるため」の作業です。
そして何より、あなたが一番大切にしているご家族へ、「迷惑をかけない」という形で渡せる、最高の「愛」の形なのです。 遺品整理で私が経験した後悔を、私の子供には絶対にさせない。その決意が「生前整理」です。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

ご家族に「生前整理」という言葉を使いにくい場合は、「人生の棚卸し」や「これからの暮らしを快適にするための片付け」と言い換えてみてください。大切なのは、言葉の響きではなく、「家族を想っている」という本質を共有することです。
【参照リンク:終活・生前整理に関する公的機関】
生前整理は、モノだけでなく「契約」や「お金」の整理も含まれます。 近年は「終活」に関連した消費者トラブルも増えています。
- エンディングノート(遺言書ではない)の法的効力について
- 参照: 法務省「自筆証書遺言の様式」 (※エンディングノート自体に法的な遺言の効力はありません。法的な効力を持たせたい場合は、法律で定められた形式の「遺言書」が必要です)
第1章のまとめ
- 「遺品整理」は、故人の想いが分からないまま進む、精神的に辛い作業。
- 「生前整理」は、自分の意思で「残す」を決められる、前向きな作業。
- 遺品整理経験者の多くが「生前にモノと情報を整理してほしかった」と後悔している。
- 生前整理は、家族への最高の「愛」の形である。
「生前整理」と「遺品整理」が、天と地ほど違うことがお分かりいただけたと思います。
では、もし「生前整理」をしなかった場合。 あなたの家族は、具体的に「どれだけのお金」と「どれだけの時間」を失うことになるのか。
次の第2章では、目を背けたくなるような、リアルな「費用」と「負担」について、徹底的に解説します。
【第2章】生前整理のメリット。やらない場合の「費用」と「家族の地獄」

もし、あなたが今「まだ元気だから大丈夫」と、生前整理を先送りにしたとします。
その結果、将来ご家族が支払うことになる「ツケ」は、あなたが想像しているよりも、はるかに重いものです。
「生前整理なし」の遺品整理。私が払ったリアルな費用
これは、私が祖父母の家(2DKアパート)の遺品整理で、業者をほぼ使わずに「自分でやった」にもかかわらず、最終的に支払った費用の記録です。
- 自治体のゴミ袋・粗大ゴミ券: 15,000円
- 家電リサイクル費用: 10,230円
- 仏壇の供養・処分費: 45,000円
- 交通費(実家への往復×10回): 20,000円
- 梱包・清掃用具代: 5,000円
- 【最大の悲劇】退去に間に合わず延長した家賃: 60,000円
■ 総合計: 155,230円
信じられるでしょうか?業者に丸投げしていなくても、15万円以上の現金が消えました。
特に痛かったのは、片付けが終わらず、誰も住んでいない部屋のために支払った家賃6万円です。
もし、祖父母が元気なうちに、 「粗大ゴミ(タンス、布団)」を処分し、 「仏壇の今後」を決めてくれていたら。
少なくとも、10万円以上のお金と、退去日に怯えるストレスは、ゼロになっていたのです。
家族が失うのはお金だけじゃない。「時間」と「心」の負担
さらに深刻なのは、「時間」と「精神」の消耗です。
私があの2DKを片付けるのにかかった時間は、合計64時間(週末8日間)。
その64時間、遺族である私たちは、 「故人を偲(しの)び、思い出を語り合う」 そんな感傷的な時間は一切なく、ただひたすら、
「この服、捨てる?」
「この食器、どうする?」
「早くしないとゴミの収集車が来る!」
と、ゴミ袋を片手に「作業員」になっていました。
悲しむ暇(いとま)さえ、与えられない。これが、準備なき「遺品整理」の現実です。
【お片づけの窓口の独自のアンケート】
「遺品整理で、金銭的負担以外に最も辛かったことは?」(遺品整理経験者 300名)
- 1位:「捨てていいか」故人の想いが分からず悩むこと …… 51.2%
- 2位:仕事や家事と両立して作業時間を捻出すること …… 22.8%
- 3位:親族間での意見の相違 …… 15.5%
- 4位:悲しい気持ちになり、作業が進まないこと …… 10.5%
(調査主体:お片づけの窓口 2025年 独自調査)

このデータを見てください。
「モノの処分に悩む」という精神的負担が、時間や親族トラブルを抑えて、ダントツの1位です。
「この服、高かったんだろうな…でも誰も着ないし…捨てるか…」
この決断を、遺族は100回、1000回と繰り返すのです。
もし「生前整理」をしていたら? ゼロになったかもしれない4つのコスト
では、もし生前整理が完璧に行われていたら、どうなっていたか?
- 処分費用(粗大ゴミ・家電)がゼロ
- 元気なうちに本人が処分していれば、当然費用はかかりません。
- 「悩む」という精神的コストがゼロ
- 「これは残す」「これは捨てる」と本人が決めてくれていれば、遺族は「作業」に徹せられます。アンケート1位の悩みは、これで完全に消えます。
- 「家賃延長」という罰金がゼロ
- モノが少なければ、退去日までに余裕で片付きます。あの6万円は不要でした。
- 相続トラブルの火種がゼロ
- 「財産はこの通帳だけ」「印鑑はこれ」と明確になっていれば、親族が「他に隠してあるのでは?」と疑心暗鬼になることもありません。
「生前整理」とは、 「家族を、精神的にも金銭的にも追い詰めない」 という、未来への具体的な準備なのです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「生前整理」は、モノを減らすことだけが目的ではありません。ご自身の財産(不動産、預貯金、株式、借金)をすべてリスト化し、ご家族に「ここにまとめてある」と伝えておくことも、非常に重要な生前整理です。これを怠ると、ご家族が「相続放棄(死亡を知ってから3ヶ月以内)」の期限に間に合わず、故人の借金を背負ってしまうという最悪の事態もあり得ます。モノの整理以上に、命に関わる整理なのです。
【参照リンク:相続・遺品整理のトラブルに関する公的機関】
生前整理を怠った場合の「費用」や「相続」のリスクについて、公的機関の情報を確認しましょう。
- 相続放棄の期限について
- 参照: 裁判所「相続の放棄の申述」 (※「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」という期限が明記されています)
- 遺品整理サービスのトラブル(高額請求など)
- 参照: 独立行政法人 国民生活センター「遺品整理サービス(見守り情報)」(※生前整理をせず、モノが大量に残った結果、高額な遺品整理費用を請求されるトラブル事例が掲載されています)
- 相続税の基礎知識
- 参照: 国税庁「相続税のあらまし」(※生前に財産を把握しておくことは、相続税対策の第一歩でもあります)
第2章のまとめ
- 生前整理なしの遺品整理は、自分でやっても15万円以上かかった(実話)。
- 一番の悲劇は、退去に間に合わず「余計な家賃」が発生すること。
- 遺族が一番辛いのは、お金より「故人の想いが分からず悩む」こと。
- 生前整理は、家族を「借金」と「相続トラブル」からも守る。
「生前整理がいかに重要か」は、痛いほどお分かりいただけたと思います。
では、いざ「やる」と決めたとして、 「何から手をつければいいのか?」
ただの断捨離とは、ワケが違います。
次の第3章では、遺族が本当に困るモノから逆算した、「優先順位」と具体的な進め方を徹底解説します。
【第3章】遺族が困らない「生前整理」の具体的な進め方。優先順位1位は「モノ」じゃない

私が祖父の遺品整理で直面した、最大の悪夢。それは、「モノ」の量ではありませんでした。
「情報」、具体的には「通帳と印鑑のありか」が分からなかったことです。
「メインバンクは〇〇銀行のはず」
「でも、ネット銀行も使ってた気がする」
「この印鑑は? 銀行印はどれだ?」
故人の口座は、死亡が確認されると凍結されます。解約手続きには、すべての通帳と正しい印鑑が必要です。
私たちは、祖父が取引していた可能性のある全ての金融機関を、汗だくで走り回るハメになりました。
この経験から、断言します。
生前整理の優先順位1位は、「服」や「食器」ではありません。
優先順位1位:「情報」の整理(デジタル・金融)
遺族にとって、モノ(服、食器、本)は、最悪「全部捨てる」という選択ができます。
しかし、「情報(お金とデータ)」は、1円、1バイトたりとも捨てられません。
ここを整理しておくだけで、遺族の負担は8割減ります。
絶対に整理すべき「情報」リスト
- 金融情報(アナログ)
- 預金通帳: すべての銀行、信用金庫、JAバンクなど。
- 銀行印・実印: どれがどの口座の印鑑か、明確に。
- 保険証券: 生命保険、火災保険、車両保険など。
- 有価証券: 株や投資信託の取引報告書。
- 借金・ローン: 住宅ローン、カードローン等の契約書。(※これが分からないと相続放棄に間に合わない)
- 不動産: 土地・建物の権利書(登記識別情報)。
- デジタル遺品(最難関)
- スマートフォン: ロック解除のパスワード、PINコード。
- パソコン: ログインパスワード。
- ネット銀行・ネット証券: ID、パスワード、秘密の質問。
- サブスクリプション: Amazonプライム、Netflixなど。(※解約しないと永遠に引き落とされ続ける)
【お片づけの窓口の独自のアンケート】
「遺品整理の際、遺族が探すのに最も苦労した『情報』は?」(遺品整理経験者 300名・複数回答可)
- 1位:ネット銀行・ネット証券の口座情報 …… 55.2%
- 2位:スマートフォンのロック解除パスワード …… 42.1%
- 3位:故人名義の借入金・ローンに関する書類 …… 38.0%
- 4位:メイン以外の預金通帳(休眠口座含む) …… 35.5%
- 5位:加入している全ての保険証券 …… 30.1%
(調査主体:お片づけの窓口 2025年 独自調査)

この結果が示す通り、遺族は「目に見えない財産」を探すのに最も苦労しています。
「スマホが開けないから、ネット証券の存在に気づかなかった」
「借金があるとは知らず、相続放棄の期限が過ぎた」
これらは、家族の人生を狂わせる致命的な問題です。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

デジタル遺品のパスワード類は、紙に書き出して「エンディングノート」と共に保管するのが確実です。ただし、それを他人に見られないよう、厳重に管理してください。信頼できるご家族1名だけに「ここに全てある」と場所を伝えておくのが、セキュリティ上も最も安全です。
優先順位2位:「価値」の整理(売る・残すの判断)
次に手をつけるのは、「あなたにしか価値が分からないモノ」です。
- 着物、帯
- 骨董品、絵画、茶道具
- 貴金属、ブランド品
- 趣味のコレクション(切手、カメラ、楽器)
【体験談】祖母の着物を「二束三文」で売った後悔
祖母のタンスには大量の着物がありました。
遺品整理で困った私たちは、出張買取業者を呼びましたが、「これは買い取れません」「これはまとめて1,000円です」と、ほぼ値段がつきませんでした。
「本当に価値がなかったのか?」
「もしかしたら、別の業者が見れば価値があったのでは?」
故人の想いも価値も分からないまま、私たちは「ゴミ」として手放すしかなかったのです。
あの時の「もしかしたら」という後悔は、今も消えません。
あなたが元気なうちに、
「この着物は、〇〇呉服店で買った価値あるもの」
「この骨董品は、私が死んだら〇〇さんに譲って」
と、意思表示(鑑定書の添付やメモ書き)をしておくだけで、遺族は「価値あるものを捨ててしまった」という後悔から救われます。
優先順位3位:「想い」の整理(写真・手紙・人形)
最後に手をつけるべき、しかし最も大切なのが「想い」の整理です。
これは、遺族が最も「捨てにくい」モノであり、あなたの生前整理は、家族の「罪悪感」を減らす最大の優しさになります。
- 大量のアルバム、写真
- 古い手紙、日記
- 人形、ぬいぐるみ、こけし
これらを、遺族が「ゴミ袋」に入れる姿を想像できますか?
ほとんどの人が、罪悪感で手が止まります。
元気なうちに、あなた自身の手で、
- 「このアルバムだけは残して」と、厳選する。
- デジタル化(スキャン)して、データで残す。
- 「ありがとう」と伝えて、人形供養に出す。
そうやって「区切り」をつけておくことが、家族の心を何よりも軽くします。
遺品整理を“ゼロ”にする「エンディングノート」の書き方
これら「情報」「価値」「想い」の整理結果を、すべて詰め込むのが「エンディングノート」です。
これは「遺書」ではありません。家族が困らないための、最強の「引継書」です。
最低限、これだけは書くべき項目
- 金融情報
- 銀行口座、証券口座、ネット銀行(銀行名、支店名、口座番号)
- 保険(会社名、証券番号)
- 借金・ローン(契約先、残高)
- デジタル遺品
- スマホ、PCのパスワード
※保管場所をここに記す
- スマホ、PCのパスワード
- 貴重品
- 通帳、印鑑、権利書の「保管場所」
- 葬儀・お墓
- 希望(家族葬がいい、散骨がいい、など)
- 連絡してほしい友人(氏名、連絡先)
- 家族へのメッセージ
- 「ありがとう」の言葉
- 「これは捨てていいからね」という許可の言葉
【編集長からのワンポイントアドバイス】

エンディングノートと「遺言書」は、全くの別物です。エンディングノートには、家族へのメッセージや情報が書けますが、財産の分配など、法的な効力は一切ありません。 「長男に家を相続させる」といった法的な希望がある場合は、必ず「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」を別途作成し、法務局や公証役場にご相談ください。
生前整理は、いつから始めるのが「正解」か
「定年退職したら」
「還暦を迎えたら」
「家を引っ越すときに」
きっかけは色々ありますが、私からの答えは一つです。「思い立った“今日”が、一番若い日」です。
生前整理は、想像以上に「体力」と「判断力」を使います。
「体が痛くて、タンスの裏など探せない」
「もう判断するのが面倒になってきた」
となってからでは、手遅れです。
体が動き、頭がスッキリしている「今」こそが、あなたの家族を救うための、唯一のタイミングなのです。
【参照リンク:遺言・口座情報に関する公的機関】
「エンディングノート」と「遺言書」の違い、「デジタル遺品」の法的な扱いについては、公的機関の情報を確認しましょう。
- 自筆証書遺言の様式・保管制度について
- 参照: 法務局「自筆証S-証書遺言書保管制度」(※法的な効力を持つ遺言書を、法務局で保管してもらえる制度です)
- 休眠預金(口座)について
- 参照: 金融庁「長期間お取引のない預金はありませんか?」(※生前に口座情報を整理しないと、家族が気づかないまま「休眠預金」となってしまう可能性があります)
第3章のまとめ
- 生前整理の優先順位1位は「モノ」ではなく「情報」(金融・デジタル)。
- 遺族は「価値が分からないモノ」の処分に苦しむ。生前に意思表示を。
- 遺族が最も捨てにくい「写真・人形」は、生前に自分で区切りをつける。
- 「エンディングノート」は、家族への最強の「引継書」である。
- 生前整理は、体力と判断力がある「今」すぐ始めるのが正解。
さて、これで「いつ」「何を」やるかは明確になりました。
しかし、ここで最大の難関が立ちはだかります。「生前整理」を“他者(親)”にやってもらいたい場合。
「縁起でもない!」と親を怒らせずに、どうやってこれを切り出せばいいのか。
次の第4章は、このメディアでしか書けない、デリケートな「親の説得方法」を徹底的に解説します。
【第4章】親に「生前整理」を上手に勧める方法。「縁起でもない」と怒らせない切り出し方

あなたがこの問題で悩むのは、あなたが「優しい子供」だからです。
親を傷つけたくない、関係を壊したくない。 その気持ちが、あなたの口を重くさせています。
まず知るべきは、「なぜ親は片付けないのか」という、彼らの本心です。
なぜ親は「捨てたがらない」のか? その3つの本心
親の家の片付けで、絶対にやってはいけないこと。
それは、子供の価値観(=捨てるは善)を押し付けることです。
親が「捨てない」のには、彼らなりの「正義」があります。
- 「まだ元気だ」という尊厳(=死を認めたくない)
- 「生前整理」という言葉は、そのまま「死の準備」を連想させます。 「お前は、私がもうすぐ死ぬと思っているのか」 親のプライドを深く傷つけ、心を閉ざさせてしまいます。
- 「モノ=生”きてきた証」という執着
- 特に高齢の親にとって、家にあるモノは「思い出そのもの」。 「この食器は、新婚の時に揃えた」 「この置物は、旅行先で買った」 それを「ゴミ」だ「ガラクタ」だと否定することは、親の生きてきた人生そのものを否定するのと同じことなのです。
- 「もったいない」という価値観
- 戦後のモノがない時代を生き抜いてきた親世代にとって、「モノは使い切るもの」「捨てるのは悪」という価値観が骨の髄まで染み付いています。 「まだ使える」モノを捨てることに、強い抵抗感があります。
この3つの心理を理解せず、ただ「片付けてよ」と言っても、100%喧嘩になります。
9割が失敗。データが示す「NGワード」
では、具体的にどんな言葉が「地雷」になるのか。 衝撃的なアンケート結果があります。
【お片づけの窓口の独自のアンケート】
「親に片付けを切り出して、失敗・拒否された時に使ってしまった『NGワード』は?」(失敗経験者 200名)
- 1位:「これ、私たちが”将来”捨てるんだよ?」(死を連想)…… 58.0%
- 2位:「生前整理」「終活」という言葉をそのまま使った …… 41.5%
- 3位:「こんな”ガラクタ”、どうするの?」(価値観の否定)…… 33.0%
- 4位:「もったいない」ばかり言ってないで!(価値観の否定)…… 29.5%
(調査主体:お片づけの窓口 2025年 独自調査)

このアンケートの1位。「私たちが“将来”捨てる」。
これは、「あなたの死後、私たちが苦労する」という脅しであり、親からすれば「自分の心配ではなく、お前たちの都合か」と、心を閉ざす最悪の言葉です。
私も昔、似たことを言ってしまい、本気で親と険悪になりました。
親を怒らせない、角が立たない「切り出し方」5選
では、どうすればよかったのか。
「生前整理」「死」という言葉を一切使わず、「親の尊厳」を守りながら誘う、具体的なテクニックがこちらです。
1. 【最重要】主語を「私(子供)」にする
NG:「お母さん、このままじゃお母さんが危ないよ」
OK:「お母さん、私が将来、お母さんの大切な服を間違って捨てちゃったら嫌だから、どれが大切か教えてくれない?」
NG:「親が片付けないから、子供が苦労する」
OK:「私がお母さんの孫(自分の子供)を連れてきた時、安全に遊べるスペースが欲しいな。一緒に作らない?」
「あなたの(親の)ため」という建前は、親のプライドを傷つけます。
「私(子供)が、あなたの助けを必要としている」という形で、親の「自尊心」をくすぐるのです。
2. 「未来(死)」ではなく「現在(安全・快適)」を口実にする
- 「地震」を口実にする(安全)
- 「この前、地震あったよね。この食器棚が倒れたら危ないから、一緒に固定する作業を手伝ってほしい」
※作業ついでに、不要な食器を減らす
- 「この前、地震あったよね。この食器棚が倒れたら危ないから、一緒に固定する作業を手伝ってほしい」
- 「孫」を口実にする(快適)
- 「今度、孫が泊まりに来る時、この部屋を使いたいから、少し荷物をどかしてもいい?」
3. 「捨てる」ではなく「次の場所」を提案する
「捨てる」という言葉は、親の「もったいない精神」を刺激します。
- 「リユース(売る)」を提案する
- 「この服、お母さんもう着ないでしょ? でも捨てるのはもったいないから、リサイクルショップ(買取業者)に一度見てもらわない? お小遣いになるかもよ」
※「0円(ゴミ)」ではなく「1円でもお金になるかも」という期待感が、背中を押します
- 「この服、お母さんもう着ないでしょ? でも捨てるのはもったいないから、リサイクルショップ(買取業者)に一度見てもらわない? お小遣いになるかもよ」
- 「寄付」を提案する
- 「このタオル、新品でたくさんあるね。捨てるのはもったいないから、NPO法人に寄付して、誰かの役に立ててもらおうよ」
4. 「思い出」を尊重し、デジタル化する
親の家で最も場所を取る「アルバム」や「子供の作品」。 これは絶対に「ゴミ」と言ってはいけません。
「アルバム、場所取るよね。でも捨てるのは寂しいから、スキャンしてデータ(デジタル化)にしない? そしたらスマホで、いつでもどこでも見られるよ」
※実物を手放す「罪悪感」を、データ化という「前向きな保存」で和らげます
5. 「自分の片付け」に巻き込む(体験談)
これが、私が実際に成功した方法です。
「お母さん、今度の日曜、私の昔の荷物(卒業アルバムとか漫画)を取りに帰るね。私の荷物、邪魔でしょ? それを片付けるついでに、押入れの奥をちょっとだけ一緒に見てもらえる?」
「親のモノ」を片付けようとすると拒否されますが、 「(親の家に置きっぱなしの)自分のモノ」を片付ける、という口実なら、親は絶対に拒否しません。
その「ついで」に、「あ、ここにもう使ってないコレあるね」と、少しずつ作業を広げていくのです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

親の生前整理は、「一度で終わらせよう」と絶対に思わないでください。親の人生の年季は、あなたが思っているより、ずっと深いのです。
「今日は、この引き出し一段だけ」
「今月は、あの押入れの上段だけ」
親の体力と心を尊重し、5年、10年かけるつもりで、ゆっくりと「人生の棚卸し」に付き合う。 それが、親子関係を壊さずに完走できる、唯一のコツです。
【参照リンク:高齢者との片付け・契約トラブルに関する公的機関】
親の片付けに「業者」を介入させる場合、悪質な業者による高額請求トラブルが多発しています。親を守るためにも、情報を確認してください。
- 高齢者の消費者トラブル(片付けサービス・訪問購入など)
- 参照: 独立行政法人 国民生活センター「高齢者の消費者トラブル」※「不用品を買い取る」と言われ、貴金属を安く買い叩かれたり、高額な片付け費用を請求されたりする事例が多数報告されています)
- 高齢者の心理・暮らし向きについて
- 参照: 内閣府「高齢社会白書(全体版)」(※高齢者の暮らしや意識に関する公的なデータです。親世代の価値観を理解する一助になります)
第4章のまとめ
- 親が捨てないのは「尊厳」「生きた証」「もったいない」という心理があるから。
- 「私たちが将来捨てる」は、親を最も傷つけるNGワード。
- 「親のため」ではなく「私(子供)のため」という主語で切り出す。
- 「捨てる」ではなく「売る」「寄付」「デジタル化」と前向きに言い換える。
- 一度でやろうとせず、5年がかりで「自分の片付けのついで」に付き合う。
さて、これで「自分」と「親」、両方の生前整理の進め方がわかりました。
しかし、第3章で出た「買取業者」や、第4章で出た「片付け業者」など、
「結局、どこの業者に頼めばいいのか?」
「生前整理の業者と、遺品整理の業者って、何が違うの?」
という、新たな疑問が出てきたはずです。
【最終章】「生前整理」と「遺品整理」業者の比較。あなたに最適なのはどっち?

「生前整理も遺品整理も、片付け業者なら同じでしょ?」
かつての私も、そう思っていました。
しかし、この2つのサービスは、サッカーと野球くらい「目的」と「ルール」が違います。
間違った業者に頼むと、お金を失うだけでなく、あなたや親御さんの「心」まで深く傷つくことになります。
決定的な違いは「本人の意思確認」があるかどうか
「生前整理」と「遺品整理」、両方の業者サービスの違いを、シンプルに比較します。
| 比較項目 | 生前整理 サービス | 遺品整理 サービス |
| 作業の目的 | 本人の「人生の棚卸し」の手伝い。 | 遺族の「物理的な負担」の解決。 |
| 作業の進め方 | 本人の意思を一つひとつ確認。 (コンサルティング型) | 遺族の指示に基づき、迅速に搬出。 (作業実行型) |
| かかる時間 | 長い(数日~数ヶ月かかることも) | 短い(1〜2日で終わる) |
| スタッフの役割 | 相談相手、アドバイザー、傾聴者 | 作業員、スペシャリスト |
「生前整理」は、「捨てる・残す」の判断を「ご本人」と一緒に行うため、非常に時間がかかります。「この服、思い出があるんです…」というお話を聞くこと自体が、重要な「作業(心のケア)」なのです。
一方、「遺品整理」は、故人(本人)はもういません。
遺族が「貴重品と形見以外は、すべて処分してください」と指示を出せば、業者は「いかに早く、効率的に部屋を空にするか」という「作業」に集中します。
「生前整理」はなぜ費用が高くなりがちなのか
「どっちが安いの?」と聞かれれば、間違いなく「遺品整理」の方が安くなります。
なぜなら、遺品整理は「物量(トラック何台分)」と「作業人数」で費用が決まるからです。
しかし、「生前整理」は違います。
費用は「本人の意思確認にかかった時間(人件費)」で決まります。
このアンケートが示す通り、生前整理の費用が上がる最大の理由は「迷い(=時間の延長)」です。
本人の「心のケア」に時間をかけるサービスである以上、これは当然の結果なのです。
「1時間1万円」といった時間制の業者の場合、思い出話に3時間付き合ってもらえば、それだけで3万円の追加費用が発生するのです。
業者選びで後悔しないための「2つの資格」と「心の視点」
では、何を基準に業者を選べばいいのか。
「安さ」だけで選ぶと、必ず後悔します。
「遺品整理」業者を選ぶ視点(“作業”重視)
- 「一般廃棄物収集運搬業」の許可
- 家庭のゴミ(廃棄物)を有料で運ぶために、必須の許可証です。「産業廃棄物」の許可だけでは違法です。これがない業者は、不法投棄のリスクがあります。
- 「遺品整理士」の資格
- 法律上の必須資格ではありませんが、遺品の法的な扱い(供養、処分)を学んだ証です。この資格者が在籍しているかは、信頼の目安になります。
「生前整理」業者を選ぶ視点(“心”重視)
- 「整理収納アドバイザー」などの資格
- 単なる「処分」ではなく、「どうすれば快適に暮らせるか」という視点でアドバイスをくれる専門家です。
- 傾聴力と人柄
- 最も重要です。あなたの、あるいは親御さんの**「思い出話」を、笑顔で、真摯に聞いてくれる人**でなければなりません。
- HPの「お客様の声」「スタッフ紹介」を熟読し、人柄を見極めてください。
【体験談】「作業員」にしか見えなかった祖父の遺品整理
祖父の遺品整理の最後、大型家具の運び出しを業者に頼みました。
来たのは、元気のいい「作業員」の男性2人。彼らはテキパキと、タンスや冷蔵庫を運び出していきました。
しかし、そのタンスが柱にぶつかり、傷がついた時、彼らは「あ、すいません」とだけ言いました。
それは「作業」としては正解です。
でも、もし生前整理で、親が大切にしていたタンスを同じように扱われたら…私は絶対に許せなかったでしょう。
「遺品整理」は“作業”を、「生前整理」は“心”を、頼むものなのだと痛感しました。
結論。あなたに最適な「業者との付き合い方」
「自分(親)は、どのタイミングで、何を頼むべきか」
その答えは、体力と判断力が残っているかどうか、ただそれだけです。
A:まだ「体力」も「判断力」もある方(生前整理)
- 頼むモノ
- 業者(整理収納アドバイザー)
- 頼む内容
- 「処分・搬出」ではありません。
- あなたの「相談相手(コンサルタント)」として契約してください。
- 「どの順番で片付けるか」「どう収納すれば快適か」のアドバイスだけをもらい、実際の作業(処分)は自分や家族で行う。これが最も賢く、安上がりな方法です。
- 「処分・搬出」ではありません。
B:判断力はあるが、「体力」が落ちてきた方(生前整理)
- 頼むモノ
- 生前整理業者(心のケア重視)
- 頼む内容
- 「仕分け作業の“伴走”」を依頼します。
- 「この棚を、一緒に片付けましょう」と、隣にいてもらうのです。
- 重いモノを持ってもらい、思い出話を聞いてもらい、一緒に判断してもらう。費用はかかりますが、孤独な作業から解放されます。
- 「仕分け作業の“伴走”」を依頼します。
C:体力も判断力も、もう自信がない方(またはご遺族)
- 頼むモノ
- 遺品整理業者(作業重視・許可証必須)
- 頼む内容
- 「物理的な搬出・処分」だけを依頼します。
- 最も重要な「貴重品」「エンディングノート」「形見」だけは、あなた(ご家族)の手で、必ず事前に抜き取ってください。
- それ以外の「モノ」は、「すべて処分してください」と依頼する。
- これが、遺品整理で費用と心のバランスを取る、唯一の方法です。
- 「物理的な搬出・処分」だけを依頼します。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

最近は「生前整理」と「遺品整理」の両方の看板を掲げている業者が増えました。見極めるポイントは、その業者が「生前見積もり」をやっているかどうかです。「元気なうちに、もしもの時(遺品整理)の見積もりを出し、契約しておける」サービスです。これは、遺族が「相見積もりを取る時間がない」という弱みにつけ込む悪徳業者を排除できる、非常に有効な手段です。
【参照リンク:業者選び・トラブルに関する公的機関】
業者選びは、あなたの大切な財産と家族を守るための最終防衛ラインです。
公的機関の注意喚起を必ず確認してください。
- 遺品整理・片付けサービスのトラブル事例
- 参照: 独立行政法人 国民生活センター「遺品整理サービス」
(※「高額な費用を請求された」「貴重品を勝手に処分された」などのトラブルが報告されています)
- 参照: 独立行政法人 国民生活センター「遺品整理サービス」
- 悪質な「訪問購入(買取)」への注意
- 参照: 消費者庁「『不用品を買い取ります』という電話や訪問にご注意!」
(※「生前整理の手伝い」と称して訪問し、貴金属などを安値で強引に買い取るトラブルが増えています)
- 参照: 消費者庁「『不用品を買い取ります』という電話や訪問にご注意!」
最終章のまとめ、そしてあなたへ
- 「生前整理」は心(コンサル型)を、「遺品整理」は作業(実行型)を頼むサービス。
- 生前整理は「時間=費用」がかかるため、高額になりがち。
- 遺品整理は「一般廃棄物の許可証」を、生前整理は「人柄・傾聴力」を重視して選ぶ。
- 最強の選択は、「貴重品・形見」だけ自分で抜き出し、残りの「搬出」だけを業者に頼むこと。
全5章、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
「生前整理」と「遺品整理」。
この2つの言葉を検索したあなたの不安が、少しでも晴れていれば幸いです。
あなたが「自分のため、家族のため」に、今日から始めるその一歩は、あなたが思っている以上に、未来のご家族にとって、かけがえのない「救い」となります。
この記事が、あなたの重い腰を上げる、小さなきっかけになることを心から願っています。






