
編集長
私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!
こんな人におすすめ
- 「いつか片付けなきゃ」と思いつつ、実家を空き家のまま放置してしまっている人
- 遠方に住んでいて、何度も実家に通う時間も体力もない人
- 将来的に実家を売却・解体したいが、中の荷物をどうすべきか迷っている人
- 業者に見積もりを取るのが怖く、騙されたり高額請求されたりしたくない人
この記事でわかること
- 【リスク】モノを放置すると家がどう「腐る」のか、その物理的な末路
- 【不動産】「ゴミ付き」で売ると数百万円損する理由と、正しい処分の順番
- 【攻略法】電気・水道なし、車が入らない悪条件でも片付けるプロの裏技
- 【お金】4LDKでいくらかかる? 実際の見積もり額と20万円安くする節約術
- 【業者選び】「ただの掃除屋」に頼むと危険! 良い業者を見抜く魔法の質問
第1章 放置リスク:モノがあるせいで家が「腐る」現実

「誰も住んでいなくても、雨戸さえ閉めておけば家は守れる」
実家を相続した当初、私は本気でそう信じていました。しかし、その甘い考えは、半年ぶりに玄関の鍵を開けた瞬間に打ち砕かれました。そこに広がっていたのは、懐かしい実家の風景ではなく、湿気とカビ、そして得体の知れない生物の気配が漂う「廃墟」への入り口だったのです。
家をダメにするのは「時間」ではありません。「放置されたモノ」です。モノが空気の流れを止め、湿気を抱え込み、害虫を呼び寄せる。この物理的な現実を直視しない限り、あなたの実家は資産ではなく、近隣を脅かす「危険物」へと変わり果てていきます。
ここでは、私の失敗談を交えながら、なぜ空き家の遺品整理を「今」やらなければならないのか、その決定的な理由を解説します。
換気不足とカビ被害:タンスの裏で進行する「家の壊死」
私が最初に違和感を覚えたのは、玄関に入った瞬間に鼻を突いた「重たく湿った臭い」でした。
久しぶりに風を通そうと、和室のタンスを少し動かしたとき、私は思わず声を上げました。タンスの裏側の壁紙と、接していた畳が、びっしりと緑と黒のカビに覆われていたのです。まるでそこだけ時間が腐っているようでした。
人が住む家は、生活する動きによって空気が対流します。しかし、空き家は空気が死んでいます。特に以下のような場所は、湿気の逃げ場がなくなり、カビの温床となります。
- 布団が詰まったままの押し入れ
- 壁にぴったりとつけられた大型家具
- 床に平積みにされた古雑誌の束
これらは湿気をスポンジのように吸い込み、吐き出さないまま菌を繁殖させます。木造住宅にとって、この湿気を含んだ残置物は、柱や床を腐らせる「毒」そのものです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

ご実家に戻られたら、まずは勇気を出して「押し入れ」と「カーテンの裏」を確認してください。もしカビ臭さを感じたら、すでに目に見えない場所で腐食が始まっています。換気だけでは手遅れです。カビの発生源となっている布類や紙類を搬出しない限り、家の寿命は縮まり続けます。
独自のアンケート調査:空き家所有者が直面した「物理的崩壊」のリアル
「うちはまだ大丈夫」と思っていませんか? 実際に空き家を放置してしまった方々は、久しぶりに訪れた家で想像以上の惨状を目の当たりにしています。
お片づけの窓口の独自のアンケート
遺品整理および空き家管理を経験した男女350名に「久しぶりに空き家に入った際、建物の状態で最もショックを受けたこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- カビの発生や床・壁の腐食が進んでいた(45%)
- ネズミやゴキブリなど害虫・害獣の糞尿被害があった(32%)
- 異臭がひどく、マスクなしでは滞在できなかった(15%)
- その他(8%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数の方が、モノの裏側で進行する「腐食」に直面しています。放置すればするほど、修繕費という形で「ツケ」を払わされる未来です。
害虫・害獣の温床:残された食品と紙は彼らの「最高のご馳走」
「冷蔵庫の中身は捨てたから大丈夫」 私もそう思っていました。しかし、敵はもっと細かいところを見ています。
私の実家でネズミの巣窟になっていたのは、台所の床下収納ではなく、2階の天袋でした。そこにあったのは、母が「いつか使うかも」と溜め込んでいた、大量のタオルと贈答品の石鹸、そして古い段ボール箱です。
空き家に残されたモノは、害虫・害獣にとって以下のような役割を果たします。
- 乾麺・調味料:ゴキブリやネズミの保存食
- 段ボール・新聞紙・衣類:断熱性が高く、繁殖に最適な巣の材料
- 畳・古い木材:シロアリの主食
特に段ボールは要注意です。保温性が高く、波状の隙間はゴキブリが卵を産み付けるのに最適な環境です。引っ越しの荷物を段ボールに入れたまま放置するのは、彼らに高級マンションを提供しているようなものです。
参照リンク:厚生労働省「建築物衛生のページ(害虫・ねずみ防除について)」
異臭と近隣トラブル:あなたの家が「地域の汚点」になる前に
これが最も恐ろしく、精神的に追い詰められるリスクです。 自分の家の臭いは気づきにくいものですが、閉め切った空き家から漏れ出る独特の「生活腐敗臭」は、近隣住民にとって暴力的なストレスになります。
- 排水管の封水切れによる下水の逆流臭
- 放置された漬物や調味料の発酵臭
- カビと古紙が混ざった淀んだ空気
これらが混ざり合い、換気扇の隙間から外へ漏れ出します。
「隣の空き家が臭い」という噂は、驚くほどの速さで町内会に広まります。私が遺品整理を決意した決定的なきっかけも、隣家の方からの「最近、変な臭いがするから一度見てほしい」という一本の電話でした。あの時の申し訳なさと恥ずかしさは、二度と味わいたくありません。
火災リスクの除去:放火犯は「汚い家」を狙う
空き家は、放火犯の格好のターゲットになりやすいという統計があります。特に狙われるのが、家の外や玄関付近にモノが溢れている「管理不全」に見える家です。
- 枯れ草が混じった庭
- 勝手口に積まれた古雑誌の束
- 軒下に放置されたサンダルや傘
これらは着火剤です。家の中に可燃物(モノ)が多いと、一度火がついた時の燃え広がり方は爆発的です。遺品整理で家を空っぽにすることは、単なる片付けではなく、実家と近隣住民の命を守る「防災活動」そのものなのです。
参照リンク:総務省消防庁「放火火災防止対策戦略プラン」
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「いつかやろう」と思っている間にも、家の中では確実に劣化が進行しています。毎週空気の入れ替えに通う交通費や労力を計算してみてください。業者に依頼して一度「スケルトン(空っぽ)」にする方が、結果的に家の資産価値を守り、将来的な修繕コストを抑える賢い選択になりますよ。まずは「燃えるゴミ」だけでも出し切ることから始めましょう。
第2章 不動産価値:売る・貸すために「どこまで」片付けるべきか

「どうせ家は解体して土地として売るんだから、中のゴミなんてそのままでいいじゃないか」
これは、私が実家の売却を考え始めた当初、不動産屋さんに強気で言い放った言葉です。当時の私は、遺品整理に数十万円もの大金をかけるのが惜しくてたまりませんでした。これから壊す家に、なぜお金をかけて掃除をしなければならないのか。そう本気で思っていたのです。
しかし、この安易な考えこそが、数百万円単位の「大損」への入り口でした。
残置物(生活用品や家具)がある状態の家は、不動産市場において明確に「不良債権」扱いされます。私が実際に直面した査定額の暴落と、買い手の冷ややかな視線。
本章では、不動産を1円でも高く、そして早く手放すために「どこまで片付けるのが正解なのか」という金銭的な損得勘定について、包み隠さずお話しします。
「現況渡し」の罠:ゴミの処分代は高く見積もられる
「このままでも売れますよ(現況渡し)」という言葉を鵜呑みにしてはいけません。
確かに、ゴミが残ったままでも売買契約自体は可能です。しかし、買い手(個人や建売業者)は、そのゴミを撤去する費用を差し引いて購入金額を提示してきます。
ここで最大の問題なのが、「実際の処分費用の1.5倍〜2倍近くを値引かれる」という現実です。
買い手の心理として、「見えないゴミ(地中埋設物や危険物)があるかもしれない」「業者手配の手間賃を乗せたい」というリスクヘッジが働くため、見積もりは非常にシビアになります。 私は当初、ゴミ処理代として査定額から100万円の減額を提示されました。しかし、納得がいかず自分で専門の遺品整理業者を手配したところ、なんと55万円ですべて綺麗になったのです。
つまり、面倒くさがって「現況渡し」にしていたら、45万円も損をするところでした。
中古車を売る時を想像してください。車内がゴミだらけの車と、清掃された車。どちらが高く売れるかは明白です。不動産も全く同じなのです。
お片づけの窓口の独自のアンケート
遺品整理後に実家を売却した経験のある男女350名に「売却活動において最も金銭的に後悔したこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 「残置物あり」で査定に出し、足元を見られて大幅な値下げ要求をされた(58%)
- 解体業者にゴミの処分も頼んだら、専門業者の倍以上の見積もりが来た(25%)
- 荷物が散乱した状態で内見を行い、半年以上買い手がつかなかった(12%)
- その他(5%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

6割近い方が、ゴミを残したまま交渉のテーブルに着いたことで、不利な条件を飲まされています。「売るならまず空にする」。これが資産を守るための鉄則です。
解体前提でも「空」にすべき理由:混合廃棄物の高騰
「家を壊すときに、重機で家具ごとバリバリ壊せば安上がりでは?」 そう考える方も多いですが、これは今の法律では通用しません。
建設リサイクル法という法律により、建材(木材やコンクリート)と、残置物(タンスや布団)は厳格に分別して処理することが義務付けられています。
もし、家の中に荷物を残したまま解体業者に依頼すると、それらは「混合廃棄物」として扱われます。分別されていないゴミの処分費は、驚くほど高額です。
- 解体業者が手作業でゴミを分別する:高額な人件費が上乗せされる
- 重機で混ぜてしまう:処分場での受け入れ単価が跳ね上がる
結局、解体工事の前に「遺品整理業者」を入れて家を空っぽにするのが、トータルコストでは最も安くなるケースがほとんどです。
参照リンク:環境省「建設リサイクル法の概要」
【編集長からのワンポイントアドバイス】 解体見積もりに「残置物撤去費用一式」と書かれていたら要注意です。その金額は、遺品整理業者の相場より高いケースが大半です。面倒でも「解体は解体屋」「片付けは片付け屋」と分けることで、中間マージンをカットし、数十万円の節約に繋がりますよ。
内見時の印象:生活感は「ノイズ」でしかない
「立派な桐タンスや、まだ新しいソファは残した方が、次の人も使えるのでは?」
この親切心も、残念ながら裏目に出ることが多いです。
内見に来る人は、そこで始まる「自分たちの新しい生活」を夢見てやってきます。
そこに、前の住人の生々しい生活感(使い古された家具、壁にかかったカレンダー、仏壇の跡)が残っていると、それは「他人の家」という強烈なノイズになり、購入意欲を一気に冷まします。
私が実家を内見案内した際、母が大切にしていた嫁入り道具の鏡台を見たお客さんが、少し気まずそうな顔をしたのを覚えています。彼らにとってそれは「思い出の品」ではなく、「処分にお金がかかる古家具」でしかなかったのです。
たとえ古家付き土地として売る場合でも、部屋が空っぽであれば「広く見える」「リフォームのイメージが湧きやすい」というメリットが生まれます。
参照リンク:国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」 ※既存住宅流通の活性化において、物件の質(インスペクションや清掃状況)が重要視されています)
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「もしかしたら次の人が使うかも」という期待はきっぱり捨ててください。不動産売買において、残置物は基本的にすべて「障害物」です。ただし、製造から5年以内のエアコンや給湯器だけは「付帯設備」として喜ばれる場合があります。これらを残すかどうかは、必ず不動産会社の担当者と相談してから決めてくださいね。
第3章 物理的難所:ライフライン停止・悪条件下での作業可否

「よし、片付けよう」と決意して実家に向かった私が、現地で最初に突き当たった壁。それはモノの量ではなく、「作業するための環境が何ひとつ整っていない」という現実でした。
電気は止まっている、水道も出ない、家の前の道は狭すぎてトラックが入らない。 まるで「要塞」のように人を拒絶する空き家を前に、私は途方に暮れました。「これ、物理的に無理なんじゃないか?」と。
しかし、プロの現場では、こうした悪条件こそが日常です。本章では、ライフラインが断絶し、足場も悪い「難所」における遺品整理の攻略法をお伝えします。
電気・水道・ガス停止:暗闇と猛暑の中での戦い
相続から時間が経っていると、当然ながらライフラインは解約済みです。 私は当初、「昼間に行けば電気なんていらないし、掃除用の水はペットボトルで持っていけばいい」と軽く考えていました。これが地獄の始まりでした。
- 真夏の蒸し風呂:エアコンが動かない閉め切った屋内は、数分で40度を超えます。熱中症のリスクがあり、とても作業どころではありません。
- トイレが使えない:水道が止まっているため、トイレも流せません。長時間の作業には致命的です。
- 暗所が見えない:押し入れの奥や、雨戸が錆びついて開かない部屋は、昼間でも真っ暗です。
結局、自分たちでの作業は1時間でギブアップしました。
しかし、専門業者は違います。彼らは「発電機」と「洗浄用の水タンク」を持参します。電気契約を復活させなくても、投光器で照らし、高圧洗浄機で汚れを吹き飛ばしてくれます。 「解約してしまったから、また契約し直さないとダメか…」と悩む必要はありません。無駄な基本料金を払うくらいなら、その分を業者への依頼費に回すべきです。
参照リンク:環境省「熱中症予防情報サイト」 ※空き家整理中の熱中症事故は多発しています。無理は禁物です)
車両進入困難:トラックが入らない「旗竿地」の悪夢
私の実家は、いわゆる「旗竿地」で、道路から細い路地を20メートルほど入った場所にありました。軽自動車すらギリギリです。
「トラック、家の前まで入れないんですけど…」 見積もりに来た業者さんが困った顔をするかと思いきや、淡々とこう言いました。「ああ、よくあることですよ。**小運搬(こうんぱん)**ですね」
トラックが入らない場合、以下の2つの方法で搬出します。
- 手運びリレー:作業員を増員し、バケツリレーのように荷物を運び出す。
- 台車ピストン:トラックを駐められる大通りまで、台車で何往復もする。
当然、作業時間は倍かかり、その分の人件費(小運搬費)が上乗せされます。しかし、これを自分たちでやろうとすれば、腰を痛めるどころか、近隣の家の壁にタンスをぶつけて賠償問題になりかねません。物理的に無理な搬出は、プロの筋肉とノウハウに頼るのが正解です。
お片づけの窓口の独自のアンケート
遺品整理を業者に依頼した際、想定外の追加費用やトラブルが発生した経験のある男女350名に「物理的な作業環境で困ったこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- トラックが横付けできず「横持ち(小運搬)」料金が発生した(48%)
- エレベーターのない団地の上階で、階段作業費がかかった(25%)
- エアコンがなく、夏場の作業で作業員が増員された(15%)
- その他(12%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数の方が、家の前の「道」の問題で追加コストを経験しています。見積もりの際は、必ず「家の前の道幅」を正確に伝え、トラックが入れるかどうかを確認してください。
腐朽・倒壊危険がある家屋:床が抜ける恐怖
長期間放置された空き家では、雨漏りで床が腐っていることがよくあります。 私の実家も、台所の床がベコベコしており、「ここに乗ったら抜ける」という恐怖感がありました。
素人がこのような場所に入り込むのは危険です。床が抜けて怪我をするだけでなく、錆びた釘を踏んで破傷風になるリスクもあります。
熟練した業者は、入室してすぐに「踏んではいけない場所」を見極めます。そして、コンパネ(合板)を敷いて安全な動線を確保してから作業を始めます。 彼らは単なる掃除屋ではなく、「廃墟探索のプロ」でもあります。「こんなボロボロの家に人を呼ぶのは申し訳ない」と遠慮する必要はありません。むしろ、ボロボロだからこそ、プロに頼むのです。
参照リンク:厚生労働省「破傷風について」
遠方・立ち会い不可:鍵を預けて「完全お任せ」は可能か
「実家が遠すぎて、作業のたびに帰省できない」 これも大きな悩みです。私も新幹線で3時間の距離があり、作業当日の立ち会いがどうしても難しい日がありました。
結論から言うと、立ち会いなしでの作業は可能です。
多くの優良業者は、「鍵預かりサービス」に対応しています。
- 事前に鍵を郵送(書留)で送る。
- 作業前・作業後の写真をLINEやメールで送ってもらう。
- 作業完了後にビデオ通話で最終確認をする。
このフローを使えば、一度も現地に行かずに空っぽにすることも可能です。ただし、信頼関係が全てです。貴重品の捜索漏れや、作業の質を担保するためにも、必ず「作業報告書」を写真付きで提出してくれる業者を選んでください。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「トラックが入らない場所」や「エレベーターなしの階層」の場合、見積書に「横持ち料金」や「階段作業費」という項目が入ります。悪質な業者はここをあいまいにし、当日になって「思ったより大変だから」と追加請求してくることがあります。見積もり段階で「車両の駐車位置」と「搬出経路」を明確にし、追加料金の可能性をゼロにしてから契約書にサインしてくださいね。
第4章 コストと相場:空き家一軒まるごと片付けの費用感

「4LDKの実家なら、引っ越しと同じで20万円くらいで片付くだろう」
これは私が最初に抱いていた甘い見通しでした。しかし、最初に見積もりをお願いした業者から提示された金額は、なんと80万円。 目玉が飛び出るかと思いました。「ぼったくりだ!」と叫びそうになりましたが、内訳を聞いて言葉を失いました。
私たちが普段行う「引っ越し」は、生活に必要なモノだけを運びます。しかし「遺品整理」は、家の中にある数トン分のモノを全て廃棄・リサイクル処理する作業です。その物量は引っ越しの比ではありません。
本章では、騙されないための相場観と、私が実践して費用を20万円以上安くした「買取相殺」のテクニックを公開します。
間取り別・物量別の相場表:広さよりも「深さ」が値段を決める
まず、ネットでよく見る「1部屋3万円〜」という広告は忘れてください。あれは荷物が少ない部屋の最低料金です。 空き家の整理費用を決めるのは、部屋の広さではなく、「立方メートル(㎥)」単位のゴミの量です。
私の実家は4LDKでしたが、問題は「モノの密度」でした。 本棚には本がぎっしり、床には贈答品の箱が積み上がり、物置には何十年分ものガラクタ。業者はこれらを「トラック何台分か」で計算します。
一般的な空き家整理の目安(廃棄処分費込み)
- 3DK(荷物少なめ): 15万〜30万円
- 4LDK(生活感あり): 35万〜60万円
- 一軒家まるごと(屋根裏・庭・物置含む): 50万〜100万円以上
私が最初に80万円と言われたのも、庭の植木鉢や物置の解体費用が含まれていたからでした。空き家整理は、単なる「ゴミ出し」ではなく、一種の「解体工事」に近い規模になることを覚悟しなければなりません。
独自のアンケート調査:請求額を跳ね上げた「真犯人」は何か
「思ったより高かった」と感じる原因はどこにあるのでしょうか? 実際に見積もりを取った方々に、費用の内訳について聞いてみました。
お片づけの窓口の独自のアンケート
空き家の遺品整理業者に見積もりを取った経験のある男女350名に「基本料金以外で、想定外に費用が高くなった要因」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 庭木・庭石・物置などの「外回り」の撤去費用(42%)
- 消火器・金庫・スプレー缶などの「処理困難物」の処分費(30%)
- リサイクル家電(冷蔵庫・洗濯機など)の法定リサイクル料(18%)
- その他(10%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

4割以上の方が、家の中よりも「庭」や「外」の片付けで予算オーバーしています。見積もりの際は、家の中だけでなく「庭のブロック一つまで」範囲を明確に指定することが重要です。
「買取」によるコスト相殺:ゴミを現金に変える魔法
80万円の見積もりに絶望した私が、最終的に支払った金額は55万円でした。
25万円も安くなった理由は、別の業者による「買取査定」です。
最初の業者は「全てゴミ」として見積もりましたが、2社目の業者は「古物商許可」を持っており、家の中のモノをその場で査定してくれました。
- 桐タンス、着物:海外需要があるため買取
- 贈答品の食器(箱入り):未使用なら買取
- 昭和のレトロなおもちゃ・オーディオ:マニア向けに高価買取
- 金属類(鍋・やかん):鉄くずとして資源買取
自分にとっては「古臭いゴミ」でも、市場では「ヴィンテージ」として価値がつくものがあります。 「作業費(マイナス)」+「買取額(プラス)」=「最終請求額」 この式が成り立つ業者を選ぶだけで、数十万円単位の節約が可能です。私は、母が大切にしていた茶道具や未開封のタオルセットが、作業費を大きく押し下げてくれました。
参照リンク:独立行政法人国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル」
追加料金が発生するケース:「捨てられないモノ」のリスト
見積もり後に「これの処分は別料金です」と言われないために、以下の「処理困難物」が家にあるか事前にチェックしてください。これらは一般のゴミとして捨てられません。
- 金庫:鉄とコンクリートの塊であり、最も処分費が高い(1個1〜3万円かかることも)。
- ピアノ:専門の運送・解体が必要。
- 仏壇:供養(魂抜き)が必要な場合、お布施代やお焚き上げ料がかかる。
- 医療廃棄物:在宅介護で使用した注射針などは、感染性廃棄物として特別なルートが必要。
これらを隠して見積もりを取ると、当日にトラブルになります。正直に申告し、これらも含めた「コミコミ価格」を出してもらうのが賢明です。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「相見積もり」は最低でも3社取ってください。ただし、金額の安さだけで決めるのは危険です。A社は「50万円(追加料金なし)」、B社は「30万円(ただし処分費は実費請求)」というケースがあるからです。必ず「この金額以外に、1円でも追加料金は発生しますか?」と担当者の目を見て確認し、その文言を見積書に記載してもらうことを強くお勧めします。
第4章では、お金のリアルと節約術についてお伝えしました。 しかし、どんなに安くても、業者選びを間違えれば「不法投棄」や「貴重品の紛失」といった取り返しのつかないトラブルに巻き込まれます。
最終章となる第5章では、信頼できる業者を見極めるための「絶対的な選定基準」について、私の経験から導き出したチェックリストを公開します。
次で最後です。一緒に完走しましょう。
第5章 業者選び:ただの「掃除屋」ではダメな理由

「不用品回収? ああ、軽トラックで回ってるような安い業者でいいんじゃない?」
もしあなたが今、そう考えているなら、少しだけ立ち止まってください。その判断が、あなたの実家を「傷物(きずもの)」にし、最悪の場合、あなた自身が法律違反の当事者として警察から連絡を受けることになるかもしれません。
遺品整理は、単なるゴミ捨てではありません。「親の人生の記録」と「不動産という資産」を同時に扱う、極めてデリケートな作業です。 私が数社の見積もりと実際の作業を通じて痛感したのは、「掃除屋」と「遺品整理のプロ」は、全く別の職業であるという事実でした。
最終章では、あなたと実家を守るために、絶対に見落としてはいけない「業者選びの核心」をお伝えします。
家屋への配慮:その業者は「家」を守ってくれるか
ある格安業者に見積もりを頼んだ時のことです。作業員の方は、土足のままズカズカと上がり込み、壁にかけたカレンダーを乱暴に剥がしました。その瞬間、私は「帰ってください」と言いました。
空き家の整理において最も恐れるべきは、搬出作業中に家を傷つけられることです。 タンスを運び出す際に壁紙を破く、重い家電を落として床を凹ませる。これらは、後の不動産売却において査定額を下げる直接的な原因になります。
本物のプロは、作業を始める前に徹底的な「養生」を行います。 エレベーター、玄関、廊下の壁、階段の手すり。すべてを専用の保護シートで覆い、家を「無傷」の状態に保ちながら中身だけを取り出します。 見積もりの際、「養生はしてくれますか?」と聞いてみてください。「ああ、うちは安いんでそういうのはやってないんですよ」と答える業者は、資産価値を毀損するリスクの塊です。
独自のアンケート調査:ゴミだと思って捨てかけた「宝物」
「全部捨ててください」と指示しても、プロは決して全てを捨てません。彼らは「捨てるべきゴミ」と「残すべき資産」を、私たち家族以上の精度で見極めます。
お片づけの窓口の独自のアンケート
遺品整理業者を利用した男女350名に「自分では気づかずに処分しようとしたが、業者が見つけ出してくれた貴重品」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 本や雑誌の間に挟まっていた「現金(ヘソクリ)」(45%)
- 古い着物のポケットやタンスの奥にあった「貴金属・宝石」(28%)
- 重要書類(権利書・実印・保険証券)」(18%)
- 故人の想いが詰まった手紙や未現像のフィルム(9%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数の方が、本や雑誌と一緒に現金を捨てかけています。
ただの掃除屋は、本棚の本をまとめて紐で縛るだけです。しかし遺品整理士は、一冊ずつパラパラとめくり、封筒の中身を透かして確認します。この「捜索能力」の差こそが、プロに依頼する最大の価値なのです。
ワンストップ対応力:庭も解体も「窓口ひとつ」で
遺品整理が終わった後も、空き家の管理は続きます。 「部屋は片付いたけど、庭の草がボウボウだ」「結局、家を解体することになった」 このたびに、造園業者や解体業者を一から探すのは骨が折れます。
私が最終的に選んだ業者は、この「ワンストップ対応」が決め手でした。彼らは遺品整理だけでなく、以下の作業も提携ネットワークで一括対応してくれました。
- 特殊清掃(孤独死などで汚れた床の消臭・消毒)
- 庭木の伐採・草刈り
- 家屋の解体工事
- 不動産売却の仲介
「家の中も外も、この鍵ひとつ預ければ全部終わらせます」。この言葉ほど頼もしいものはありませんでした。 複数の業者とやり取りするストレスをゼロにするために、「整理の後」まで面倒を見てくれる業者を選んでください。
絶対に避けるべき「不法投棄」のリスク
最後に、最も重要な法律の話をします。 あまりに安すぎる業者は、回収した荷物を山林に不法投棄することで処分費を浮かしている可能性があります。
もし、実家の荷物が不法投棄され、中からあなたの名前が入った書類(郵便物など)が見つかったらどうなると思いますか?
警察は、依頼主である「あなた」に連絡をしてきます。「業者に頼んだ」と言っても、無許可業者に委託した場合は、依頼主も排出責任を問われる可能性があります。
契約前に必ず確認すべきは、「一般廃棄物収集運搬業許可」(または提携)を持っているかどうかです。 「産業廃棄物」の許可だけでは、家庭のゴミは運べません。この区別を曖昧にする業者は危険です。
参照リンク:環境省「廃棄物の適正処理案内」
【編集長からのワンポイントアドバイス】

良い業者を見抜く魔法の質問を教えます。見積もりの際に「もし作業中に、現金や貴重品が出てきたらどうしますか?」と聞いてみてください。 信頼できる業者は即座に「作業を中断し、必ずお客様に報告してから、専用の貴重品ボックスに保管します」と答えます。言葉に詰まったり、「あー、まあ適当によけておきますよ」と曖昧に答える業者は、ネコババする可能性も否定できません。人の目を見て、誠実さを確認してくださいね。
終わりに:実家の整理は「心の整理」
全5章にわたり、空き家の遺品整理について、私の実体験とデータを元にお話ししてきました。
最初は「面倒くさい」「お金がかかる」と後ろ向きだった私ですが、家の中が空っぽになり、風が通り抜けたあの瞬間、不思議と肩の荷が下りたのを感じました。 それは単に部屋が綺麗になっただけでなく、**「親の人生をきちんと仕舞い(しまい)、自分の未来へ進む準備ができた」**という心の変化でした。
空き家の整理は、過去との決別ではなく、未来への投資です。 家が腐る前に、資産価値がなくなる前に、そして何より、あなたの心が押しつぶされる前に。 信頼できるプロの力を借りて、その一歩を踏み出してください。
この記事が、あなたの背中を押すきっかけになれば、これ以上の喜びはありません。 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。








