
編集長
私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!
こんな人におすすめ
- 遺品整理の専門業者に見積もりを取ったが、「高すぎる」と感じて躊躇している人
- 家丸ごとではなく、「重い家具数点だけ」や「一部屋だけ」を手伝ってほしい人
- 片付けと同時に、「庭の草むしり」や「簡単な修繕」もまとめて頼みたい人
- 便利屋に頼むと「不法投棄」や「雑な扱い」をされないか不安な人
- 「時間制(便利屋)」と「パック料金(専門業者)」のどちらが得か知りたい人
この記事でわかること
- 【料金】便利屋が「逆に高くつく」危険なパターンと、安く済ませる裏技
- 【範囲】遺品整理専門業者には頼めない、便利屋ならではの「ついで作業」一覧
- 【安全】警察沙汰を避けるための、悪質便利屋を見抜く「魔法の質問」
- 【決断】あなたの状況はどっち? 「便利屋 vs 専門業者」選びの最終結論
- 【実録】筆者が実際に体験した、便利屋活用の成功談と失敗談
第1章 料金・相場:専門業者と比べて「便利屋」は本当に安いのか?
「遺品整理は高い。だから何でもやってくれる便利屋さんのほうが安く済むはずだ」
祖父が亡くなったとき、私も真っ先にそう思いました。専門業者のホームページを見ると「2LDKで15万円〜」といった金額が並んでいて、当時貯金が心もとなかった私は、思わずブラウザを閉じてしまったことを覚えています。
しかし、結論から言います。「便利屋=安い」という思い込みは、遺品整理において最も危険な落とし穴です。
実際に私が便利屋と専門業者の両方に見積もりをとって分かったのは、仕組みを理解していないと、便利屋のほうが最終的に高くつくケースが多々あるという現実でした。
この章では、誰でも書けるような平均相場の表を並べるのではなく、私が現場で痛感した「料金体系のカラクリ」と、あなたが損をしないための判断基準を包み隠さずお伝えします。
「パック料金」対「時間制」:便利屋が不利になる分岐点
まず知っておくべきは、両者の料金の決まり方が根本的に違うことです。
- 遺品整理専門業者: 物量ベース(トラック1台に詰め放題で〇〇円、というパック料金が主流)
- 便利屋: 時間ベース(スタッフ1名1時間3,000円+出張費、という時給計算が主流)
私が実家の片付けで見積もりを取った際、便利屋さんの提示額は「スタッフ2名で1時間6,000円」でした。パッと見は激安に見えますよね?
しかし、遺品整理は「仕分け」「梱包」「運び出し」「清掃」と、想像以上に時間がかかります。
例えば、専門業者なら3人のプロが半日で終わらせる作業を、便利屋さんが2人で2日かけて行ったとします。 専門業者が「トラックパック10万円(作業費込み)」なのに対し、便利屋さんは「時間が伸びたので延長料金込みで12万円、さらにゴミの処分費は別途実費請求」となるリスクがあるのです。
タクシー(時間と距離でメーターが上がる)で長距離移動するか、レンタカー(定額)で移動するかの違いをイメージすると分かりやすいかもしれません。遺品整理という「長距離移動(大仕事)」において、メーター制のタクシー(便利屋)を使うのは、必ずしも得策ではないのです。
【お片づけの窓口独自アンケート】
実際に便利屋に依頼してトラブルになったケースを調査しました。 遺品整理・不用品回収を便利屋に依頼した男女300名に「当初の想定より支払額が高くなった原因」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 作業時間が想定より延びて、高額な延長料金が発生した(58%)
- ゴミの処分費用(実費)が別請求だと作業後に知らされた(25%)
- 階段作業や養生などのオプション料金が加算された(12%)
- その他(5%)
※調査期間:2024年4月〜6月 対象:自社へご相談・お問い合わせいただいたお客様

このデータからも分かる通り、便利屋を利用して損をするパターンの6割近くが「時間の読みの甘さ」によるものです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

見積もりをとる際は、必ず「総額」で比較してください。「1時間3,000円」という単価の安さに飛びつかず、「この部屋の量だと、最大で何時間かかりますか? 上限金額はいくらですか?」と食い下がって聞くことが大切です。上限を決められない業者への依頼は避けたほうが無難でしょう。
安さの裏側にある「処分費」の罠
なぜ、便利屋のチラシにはあんなに安い金額が書かれているのでしょうか。それは、多くの場合「不用品の処分代金」が含まれていないからです。
遺品整理専門業者の見積もりの多くは、「廃棄物処理代金」を含んでいます。彼らは一般廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者と提携(あるいは自社保有)しており、法令に則って適正に処分するルートを確保しています。
一方で、便利屋の仕事はあくまで「作業代行」です。「部屋から外に出すまで」が彼らの仕事であり、そこから先の「ゴミを捨てる費用」は、あなたが別途負担するか、あるいは最悪の場合、不法投棄のリスクを背負うことになります。
「全部込みで5万円でいいよ」 そう言ってくる業者がいたら、逆に警戒してください。現在の日本の廃棄物処理コストを考えると、人件費とトラック代を出してその金額でやるには、どこかで不法な処理をしていないと計算が合わないことがほとんどです。
もし依頼した業者が不法投棄をした場合、依頼主であるあなたも警察の捜査対象になる可能性があります。これは決して脅しではありません。
参照リンク:環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」
それでも「便利屋」が最強の選択肢になるケース
ここまで厳しめに書きましたが、私も便利屋を否定しているわけではありません。実は、特定の条件下では専門業者よりも圧倒的に安く、便利に使えるのです。
私が実際に便利屋を利用して「これは正解だった!」と感じたのは、以下のシーンです。
- すでに自分たちで大半を片付けていて、大きな家具(タンスや冷蔵庫)数点だけを運び出してほしいとき
- ゴミとして捨てるのではなく、リサイクルショップへ運搬する「足」として使いたいとき
- 整理作業というより、庭の草むしりや電球交換など、雑務がメインであるとき
つまり、「物量が少なく、作業時間が明確に読める場合」において、便利屋は最強のコストパフォーマンスを発揮します。
遺品整理といっても、家一軒丸ごとなのか、老人ホームの居室ひとつなのかによって、正解は変わります。
「とりあえず安いから便利屋」ではなく、「自分の状況は時間制(便利屋)向きか、パック制(専門業者)向きか」を見極めること。これこそが、遺品整理の費用で損をしないための最初の一歩です。
第2章 作業範囲:遺品整理「ついで」に頼める便利屋ならではのサービス

「えっ、庭の木は切ってもらえないんですか?」
これは私が実家の片付けをしていた時、遺品整理専門の業者さんに言われて呆然とした言葉です。 家の中の荷物は綺麗になくなりました。しかし、窓の外には伸び放題の雑草と、隣の家の敷地にまで枝を伸ばした柿の木が残されたまま。
「私たちは屋内整理の専門なので、造園業者はまた別で手配してください」
正論ですが、当時の私には絶望的な宣告でした。 遠方に住んでいて何度も実家に帰れない私にとって、業者をもう一つ探し、見積もりに立ち会い、作業日を決める……その手間は想像を絶するストレスだったからです。
もしあなたが、「家の中の片付けだけでなく、家の周りやちょっとした修繕も気になっている」のなら、ここで便利屋という選択肢が輝き始めます。
この章では、専門業者では対応しきれない、便利屋だからこそ実現できる「ワンストップ解決」の威力について解説します。
遺品整理専門業者には頼めない「便利屋だけの守備範囲」
遺品整理専門業者は、その名の通り「遺品(モノ)」を扱うプロです。しかし、空き家になった実家を管理・売却するには、モノを退かすだけでは不十分なケースが多々あります。
私が取材した中で、便利屋を選んでよかったと語る人が口を揃えるのが「かゆいところに手が届く」という点です。
具体的に、便利屋ならセットで頼めることが多い作業を挙げてみます。
- 庭の手入れ: 草むしり、除草剤散布、庭木の剪定・伐採
- 設備の撤去: エアコンの取り外し、風呂釜の撤去、アンテナ撤去
- 簡易リフォーム: 障子・襖の張り替え、雨樋の修理、壁の穴埋め
- 害虫駆除: ゴキブリ、ハチの巣の駆除
- ハウスクリーニング: トイレ、お風呂、キッチンの徹底洗浄
専門業者に頼むと、これらはすべて「提携業者の紹介(仲介料発生)」か「対応不可」になります。しかし便利屋なら、遺品整理のトラックに草刈り機や工具を積んでくるだけで、同日にすべて解決してくれるのです。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理だけでは終わらなかった「見落としがちな作業」を調査しました。 遺品整理経験者400名に「遺品の整理・処分以外で、同時に発生して困った作業」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 庭の草刈りや植木の剪定など、外回りの手入れ(45%)
- 長年の汚れが染み付いた水回りの強力な清掃(28%)
- エアコンや照明器具の取り外し作業(15%)
- その他(物置の解体、害虫駆除など)(12%)
※調査期間:2024年2月〜5月 対象:自社へご相談いただいた、一戸建ての遺品整理を行ったお客様

なんと、半数近くの人が「庭や外回り」の問題に直面しています。特に夏場の遺品整理では、数週間放置しただけで雑草がジャングル化し、近隣クレームの元になることが非常に多いのです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

便利屋にセット依頼をする際は、「得意分野」を確認することを忘れないでください。便利屋と一口に言っても、「元・植木屋さん」が開業した店もあれば、「元・運送屋さん」の店もあります。庭木の手入れを重視するなら、造園経験のあるスタッフがいる便利屋を選ぶと、仕上がりが段違いですよ。
実家じまいで真価を発揮する「立ち会いコスト」の削減
私が便利屋を強くおすすめしたいのは、特に「実家が遠方にある人」です。
例えば、遺品整理(室内)、植木の剪定(庭)、エアコン取り外し(設備)を別々の専門業者に頼んだとしましょう。
- 遺品整理業者に見積もり依頼 → 現地立ち会い
- 造園業者に見積もり依頼 → 現地立ち会い
- 電気工事業者に見積もり依頼 → 現地立ち会い
これだけで3回も現地に行かなければなりません。交通費と時間はバカになりませんよね。さらに作業日もバラバラになれば、その都度鍵を開けに行く必要があります。
これが便利屋なら、「見積もり1回、作業日1回」で完結します。
私の友人の例ですが、彼女は東京に住みながら、大阪の実家を処分する必要がありました。彼女は「便利屋」を利用し、遺品整理と同時に「家の売却に向けた簡易清掃」と「郵便受けの封鎖」「庭の草刈り」までを2日間で一気に終わらせました。
「新幹線代が1往復分で済んだだけで、数万円浮いた計算になる」と彼女は笑っていました。 料金表の比較だけでは見えてこない、こうした「自分の手間と移動コスト」も含めて計算すると、便利屋のコストパフォーマンスは一気に跳ね上がります。
ただし「専門性」の限界は知っておくべき
ここまで便利屋のメリットを強調しましたが、注意点もあります。それは「広く浅く」になりがちだということです。
例えば、特殊清掃(孤独死などで床下が汚染されている場合)や、骨董品の正確な鑑定などは、一般的な便利屋では対応できないレベルの技術や知識が必要です。
「なんでもやります」は頼もしい言葉ですが、「なんでもプロ並みにできます」という意味ではありません。
- 高価な美術品があるなら、買取専門店へ
- 床の張り替えが必要なほどの汚損なら、特殊清掃業者へ
- それ以外の「一般的な片付けと雑務」なら、便利屋へ
このように使い分けるのが、賢い消費者の選択です。
空き家対策については、国も力を入れています。放置すればするほど固定資産税の優遇措置が外れるなどのリスクもありますので、便利屋をうまく活用して、スピーディーに「管理された状態」へ持っていくことが重要です。
参照リンク:国土交通省「空き家等の現状について」
便利屋は、あなたの「物理的な手」を増やす存在です。遺品整理を単なる「モノの処分」ではなく、「家の始末」として捉えたとき、便利屋という選択肢は最強のパートナーになり得るのです。
第3章 信頼性・許認可:不法投棄や権利書紛失のリスクはないか

「まさか、うちの親の遺品が山林に捨てられていたなんて……」
これはニュースの中だけの話ではありません。 実は、私が遺品整理の業者選びで最も神経を尖らせたのが、この「法的リスク」と「信頼性」の部分です。
安さや便利さだけで業者を選び、後に警察から連絡が来る——そんな悪夢のような事態は、知識さえあれば100%防げます。しかし、残念ながら多くの人が「便利屋なら何でも捨ててくれる」と誤解し、無自覚のうちに法律違反の片棒を担がされているのが現実です。
この章では、表向きのホームページには決して書かれない、便利屋業界のグレーな実態と、あなたの身を守るための必須知識を解説します。
「なんでも回収」の甘い罠と、絶対に必要な「許可」
まず、これだけは覚えて帰ってください。 他人の家庭から出るゴミ(遺品含む)を有料で引き取り、運搬・処分するには、市区町村の「一般廃棄物収集運搬業許可」という非常に取得難易度の高い許可が必要です。
しかし、多くの便利屋はこれを持っていません。 彼らが持っているのは、せいぜい「古物商許可(リサイクル品を買い取る許可)」です。
私が電話で見積もりをした際、ある便利屋さんはこう言いました。
「ゴミも全部まとめて、トラック1台5万円で引き取りますよ。全部リサイクルしますから大丈夫です」
これが最も危険なサインです。
壊れたプラスチックケースや汚れた布団まで「リサイクルする」というのは無理があります。許可のない業者がゴミを持ち帰るということは、そのゴミは「不法投棄」されるか、「不適正なルート(無許可のヤード)」に流される可能性が極めて高いのです。
もし不法投棄された遺品の中から、親の名前が入った郵便物や書類が見つかったらどうなると思いますか? 依頼主であるあなたも、排出者責任を問われ、警察の事情聴取を受ける可能性があります。
参照リンク:環境省「廃棄物の適正処理案内」
権利書、ヘソクリ……「見る目」がないと財産が消える
法的なリスクと同じくらい怖いのが、「貴重品の誤廃棄」です。
遺品整理専門業者のスタッフは、「高齢者がどこにお金を隠すか」を熟知しています。タンスの裏、本のページの間、古い着物の袖の中、ティッシュ箱の底……。彼らは一種の探偵のように、ひとつひとつ中身を確認しながら仕分けます。
一方で、アルバイト主体の便利屋や、遺品整理の経験が浅いスタッフはどうでしょうか? 彼らにとってのミッションは「時間内に部屋を空っぽにすること」です。
私自身、実家の整理中に危ない経験をしました。 「この古雑誌の束、紐で縛っておきましたよ!」と手伝ってくれた知人が元気よく言ってくれたのですが、私が念のためにパラパラとめくると、なんと雑誌の間に数万円が入った封筒が挟まっていたのです。
もし、これをそのまま「回収」されていたら……。考えるだけでゾッとします。
【お片づけの窓口独自アンケート】
業者選びで後悔しないために、トラブルの実態を調査しました。 遺品整理を業者(便利屋・専門業者問わず)に依頼した男女350名に「作業品質や信頼性について、最も不安・不満に感じたこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- ポケットの中身や引き出しの奥を確認せず、そのまま袋詰めされた(48%)
- 回収された荷物が、最終的にどこでどう処分されるのか説明がなかった(25%)
- 作業スタッフの言葉遣いや態度が悪く、家に入れるのが怖かった(15%)
- その他(12%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数の人が、仕分け作業の「雑さ」に不安を感じています。「貴重品はあらかじめ自分たちで探しておいてください」と突き放す業者もいますが、膨大な遺品の中から全てを見つけ出すのは素人には不可能です。だからこそ、一緒に探してくれる「目」の確かさが重要なのです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

依頼しようとしている便利屋が適正かどうかを見抜く、魔法の質問をお教えします。「回収した不用品は、どこの処分場に運びますか?」と聞いてみてください。 「自社の倉庫に持ち帰ります」と答えたらアウト(違法の可能性大)です。「提携している〇〇環境(許可業者)が回収に来ます」や「地域のクリーンセンターへ運びます」と具体的に即答できる業者を選びましょう。
信頼できる便利屋を見分ける「3つのチェックポイント」
では、便利屋には絶対に頼んではいけないのでしょうか? いいえ、中には「遺品整理士」の資格を持ち、法令遵守を徹底している優良な便利屋もたくさん存在します。
私が実際に業者を選定した際に設けた、合格ラインは以下の3点です。
- 「遺品整理士」の資格保有者が在籍しているか
- 単なる力仕事ではなく、遺品を扱う心構えと法知識があるかの証明になります。
- 廃棄物の処理フローが明確か
- 「提携している一般廃棄物収集運搬業者の名前」を書面や口頭で明示できるか確認しましょう。
- 見積もり書に「一式」という言葉が多すぎないか
- 「作業一式」ではなく、「分別作業費」「運搬費」「処分費(提携業者へ支払い)」のように内訳がクリアな業者は信頼できます。
遺品整理は、故人の人生を締めくくる大切な儀式です。そして、残された家族にとっては、新しい生活へ進むための第一歩でもあります。
その第一歩が、不法投棄トラブルや貴重品紛失の後悔で躓くことがないよう、値段の安さという「数字」だけでなく、その業者が法令と心を大切にしているかという「質」を、どうか厳しい目でチェックしてください。
第4章 供養・配慮:事務的な「ゴミ回収」扱いにされないか

「じゃあ、このゴミは袋に詰めていきますねー」
実家の片付けを手伝いに来てくれた若いスタッフの一言に、私は心臓を掴まれたような衝撃を受けました。 彼が指差したのは、亡き母が長年愛用していた手編みのセーターと、ボロボロになった料理ノートでした。
他人から見れば、それは確かに古くて価値のない「燃えるゴミ」かもしれません。でも、遺族である私にとっては、母の人生そのものが詰まった「遺品」なのです。
便利屋に依頼する際、多くの人が最も懸念するのが、この**「心ない対応」**ではないでしょうか。 料金が安くても、スピードが速くても、土足でドカドカと踏み込まれ、思い出の品をゴミ扱いされては、片付けが終わった後に残るのは部屋の広さではなく、深い後悔だけです。
この章では、便利屋という「効率重視」になりがちな業態で、いかにして故人への尊厳と遺族の心を守るかについてお話しします。
「お焚き上げ」は専門業者だけの特権ではない
「仏壇や神棚、日本人形……。そのままゴミ収集車に入れるのは絶対に無理」
そう考えるのは当然です。魂が宿るとされるものを粗末に扱うことへの罪悪感は、現代人にも深く根付いています。 ここで「便利屋には供養なんて無理だろう」と諦めないでください。
実は、質の高い便利屋ほど、地域の寺院や神社と提携ルートを持っています。
私が最終的に依頼した便利屋さんは、事前に相談するとこう言ってくれました。 「分かりました。仏壇とお人形は、私たちが提携しているお寺の『合同供養』にお出ししますね。後日、供養証明書も郵送でお送りできますよ」
彼らは「自分たちでお経を読む」わけではありません(それはそれで怪しいですよね)。 そうではなく、「供養の現場まで責任を持って運ぶ物流ルート」を持っているかどうかが重要なのです。
逆に、「あー、その辺は適当に処分しときますよ」と濁す業者は要注意です。彼らは山林や空き地に、祭祀用具をそのまま捨てている可能性があります。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理における「心のケア」の実態を調査しました。 遺品整理業者(便利屋・専門業者含む)を利用した男女350名に「作業スタッフの対応で、最も心に残り(良くも悪くも)影響を与えたこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 作業開始前や終了後に、仏壇や部屋に向かって手を合わせる・黙祷する姿があった(42%)
- 遺品を「ゴミ」ではなく「お荷物」「お品物」と呼んでくれた(30%)
- 近所の人に見られないよう、段ボールの中身が見えない配慮をしてくれた(18%)
- その他(作業着が汚かった、大声で私語をしていた等)(10%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

アンケート結果からも分かる通り、遺族が求めているのは特別な儀式ではなく、「故人への敬意を感じるちょっとした所作」なのです。 作業開始前に一言、「それでは、作業を始めさせていただきます」と仏前で頭を下げる。たったそれだけで、私たちの罪悪感は驚くほど軽くなります。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

見積もりの段階で、スタッフの服装をよく観察してください。清潔な制服やポロシャツを着ているか、それとも汚れの目立つ作業着か。身だしなみは「仕事への姿勢」そのものです。汚れた服で家に入ってくる業者が、遺品を丁寧に扱ってくれる可能性は低いと考えて間違いありません。
近隣への配慮:プライバシーを守る「演技」も仕事のうち
遺品整理は、近所の目も気になります。
「あそこのお宅、すごいゴミの量ね……」
「何があったのかしら」と噂されるのは避けたいもの。
ここでこそ、便利屋の「カメレオンのような柔軟性」を活用すべきです。
遺品整理専門業者のトラックには、大きく「〇〇遺品整理サービス」と書かれていることがあります。これは宣伝にはなりますが、依頼主にとっては「今まさに遺品整理をしています!」と近所に宣伝されているようなもので、気恥ずかしさを感じることもあります。
一方、便利屋や不用品回収のトラックは、無地のトラックや、単に「〇〇商店」といった目立たない表記のことが多いです。
私が依頼した際は、さらに一歩踏み込んでお願いをしました。 「近所の人に聞かれたら、『引越しの荷物整理を手伝いに来ている』と言ってください」
気の利く便利屋さんは、これを完璧に遂行してくれます。 遺品を運び出す際も、透明なゴミ袋ではなく、中身の見えない段ボールや色のついた袋を使用し、外からは「単なる引越し作業」にしか見えないようカモフラージュしてくれました。
こうした「世間体への配慮」も、遺族にとっては重要な心の平穏につながります。
「効率」と「感情」のバランスを取るために
もちろん、便利屋はボランティアではありません。時間制で契約している場合、スタッフが一つ一つの遺品に涙して作業が止まってしまっては、料金が跳ね上がってしまいます。
だからこそ、私たち依頼者側も準備が必要です。
- 絶対に捨てたくないもの(アルバム、位牌、貴重品)は、業者が来る前に別の部屋に移しておく。
- 「ここからここまでは全部処分、この棚は残す」と、明確な指示出しをする。
感情的な判断が必要なもの(手紙や写真など)を、作業当日にスタッフと一緒に見ながら仕分けるのはお勧めしません。それでは時間がいくらあっても足りないからです。
「判断」は家族で行い、「作業(搬出・運搬)」を便利屋に任せる。そして、その「作業」の中に、最低限の「敬意」と「マナー」がある業者を選ぶ。
この役割分担ができれば、便利屋を利用しても、決して事務的な「ゴミ回収」にはなりません。 むしろ、家族だけで抱え込んで心身ともに疲弊してしまうよりも、プロの手を借りてスピーディーに片付けることで、「早く供養してあげられた」という前向きな気持ちになれるはずです。
もし業者とのトラブルで、不当に高額な請求を受けたり、脅迫的な態度を取られたりした場合は、迷わず消費者ホットラインへ相談してください。心の弱みにつけ込む悪質業者は、毅然とした態度で排除しましょう。
参照リンク:国民生活センター「遺品整理サービスでの契約トラブルに注意」
次は、いよいよ便利屋ならではの強みである「小規模依頼」について解説します。
「タンス一つだけ」「明日来てほしい」といったワガママは本当に通るのか、検証していきましょう。
第5章 柔軟性・規模:タンス1つ、力仕事だけの「部分依頼」は可能か

「遺品整理業者を呼ぶほどではないけれど、自分一人ではどうにもならない……」
実家の整理を進めていくと、必ずこの「魔のゾーン」に突入します。 細かい服や本はゴミ袋に詰め終わりました。食器も片付けました。 しかし、部屋の隅に鎮座する巨大な洋服タンス、昭和の重厚なサイドボード、そして二階にあるマッサージチェア。
これらを動かそうとして、私は腰に激痛が走り、その場にうずくまりました。 「トラック1台パック(数万円)」を頼むほどの量ではない。でも、市の粗大ゴミ回収場所(家の外)まで運び出す力がない。
そんな「帯に短し襷に長し」な状況でこそ、便利屋は最強の切り札になります。
この章では、遺品整理という大掛かりなパッケージではなく、「あなたの手足」として便利屋をピンポイントで使い倒す方法を解説します。
「部屋丸ごと」は不要! 賢い人は「筋肉」だけを借りる
専門の遺品整理業者の多くは、「2トントラック1台で〇〇円」といったパック料金が主力商品です。そのため、タンス1竿だけを頼もうとすると、「最低基本料金」がかかり、割高になるケースがあります。
一方、便利屋の売りは「時間制」です。
「スタッフ1名、1時間作業」という契約なら、数千円〜1万円程度で屈強な男性スタッフが来てくれます。
私は実際に、この方法で「タンスと冷蔵庫の運び出し」だけを依頼しました。 指示はシンプルです。 「このタンスを、指定されたゴミ集積所まで運んでください」 たったこれだけ。作業は30分もかからず終了し、費用は専門業者の見積もりの3分の1以下で済みました。
ここで重要なのは、「思考(仕分け)」は自分でやり、「物理(運搬)」だけを外注するという割り切りです。これこそが、費用を最小限に抑える究極のテクニックです。
【お片づけの窓口独自アンケート】
「部分的な依頼」の需要を調査しました。 便利屋を利用して遺品整理(一部のみを含む)を行った男女350名に「丸投げ(全撤去)ではなく、部分依頼を選んだ最大の理由」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 自分では運び出せない大型家具・家電の搬出だけをしてほしかった(58%)
- 予算がなく、自分でできる範囲は全て自分でやりたかった(22%)
- 他人に見られたくない部屋があり、特定の部屋だけを頼みたかった(12%)
- その他(8%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた、部分依頼を選択されたお客様

約6割の人が、「重さ」の問題を解決するために便利屋を利用しています。 自治体の粗大ゴミ回収は安価ですが、「玄関前(または集積所)まで自分で出す」のが原則です。高齢の親族や女性だけで片付けをしている場合、ここが最大の壁になります。その壁を越えるための「梯子」として、便利屋を利用するのです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「1時間いくら」の便利屋を使う場合、作業をスムーズにするための事前準備がカギです。タンスの中身を空にしておくのはもちろん、搬出ルートにある障害物(廊下の荷物など)をどけておくだけで、作業時間は10分短縮できます。その10分で、ついでに高いところの電球交換も頼めるかもしれませんよ。
専門業者にはない「時間」と「融通」の自由
もう一つ、便利屋ならではの強みがあります。それは「圧倒的なフットワークの軽さ」です。
遺品整理専門業者は、数週間前から予約を入れ、朝から夕方までかけて作業をするのが一般的です。 しかし、私たち現役世代には時間がありません。
- 今週末、急に休みが取れたから片付けたい」
- 仕事終わりの19時から、1時間だけ手伝ってほしい
- 今日中に、この布団だけでも捨てたい
こうしたワガママに応えてくれるのは、地域密着型の便利屋だけです。
彼らは近場を回っていることが多く、「今、近くの現場が終わったので30分後に行けますよ」という奇跡的なマッチングが起こることも珍しくありません。
私が急遽実家に帰省した際、どうしても動かせない洗濯機があり、ダメ元で近所の便利屋に電話したところ、「夕飯前なら空いてるよ!」と即日で駆けつけてくれたことがあります。あの時の安堵感は忘れられません。
ただし「運ぶ先」には要注意
部分依頼をする際、一つだけ絶対に注意しなければならない点があります。
それは、第3章でも触れた「処分の適法性」です。
便利屋に「運び出し」を頼む場合、ゴールはどこになるのでしょうか?
- 自治体の粗大ゴミ収集場所まで運んでもらう(◎ 正解)
- あなたが自治体に粗大ゴミ処理券を申し込み、便利屋は「家から収集場所への移動」だけを行う。これは純粋な「作業代行」なので法的にもクリーンで、費用も最も安く済みます。
- 便利屋のトラックに積んで持っていってもらう(△ 要確認)
- この場合、便利屋が「一般廃棄物収集運搬業許可」を持っているか、許可業者と提携していなければ違法になります。
「タンス1つだけだし、まあいいか」と安易にトラックに積ませてしまうと、後で不法投棄のリスクを負うことになります。
「運び出し(便利屋)」+「回収・処分(自治体)」の組み合わせこそが、最も安く、かつ最も安全な「部分依頼」の黄金パターンであることを覚えておいてください。
参照リンク:環境省「廃棄物の適正処理について(Q&A)」 ※「無許可業者への引き渡し」がいかにリスクであるかが解説されています。
便利屋は、使いようによっては「ドラえもん」のような頼もしい存在になります。
大きなパッケージ商品に縛られず、「ここだけ助けて!」と声を上げることで、遺品整理のハードルはぐっと下がります。
さて、ここまで料金、作業範囲、信頼性、心情、規模感と、あらゆる角度から便利屋と遺品整理の関係を深掘りしてきました。 いよいよ最終章では、これまでの情報を総括し、「結局、あなたの場合はどちらを選ぶべきか?」という最終決定を下すためのガイドラインをお示しします。
第6章 業者選びの決定打:便利屋と専門業者、あなたのケースはどちらが正解?

「結局、私の場合はどっちに電話すればいいの?」
ここまで料金の仕組みやリスク、裏話まで散々語ってきましたが、最後に行き着くのはこの疑問だと思います。 私自身、実家の片付けで最も時間を使い、最も悩んだのがこの「最終決断」でした。
便利屋の「安さと融通」は魅力的です。 専門業者の「安心と品質」も捨てがたい。
しかし、両方を経験し、多くの失敗談を取材してきた私には、明確な「境界線」が見えています。 この最終章では、あなたの状況をフローチャートのように整理し、どちらを選ぶべきかをズバリ断言します。
これが、あなたが遺品整理という大仕事を終わらせるための、最後の道しるべです。
ケース1:あなたが「便利屋」を選ぶべきなのはこんな時
もしあなたが以下の条件に2つ以上当てはまるなら、迷わず便利屋(ただし優良な)に連絡してください。専門業者に頼むと、オーバースペックで損をする可能性が高いです。
- 「複合的な困りごと」がある
- 部屋の片付けだけでなく、草むしり、電球交換、家具の移動、雨樋の掃除など、ジャンルがバラバラな雑務をまとめて頼みたい。
- ゴミの処分(運搬)は自分でできる、または行政回収を利用する
- 「家から外に出す」という一番キツイ作業だけを手伝ってほしい(処分費を節約したい)。
- 特定の「家具数点」または「一部屋だけ」
- 家丸ごとではなく、物量が2トントラック1台分(約5〜8万円相当)にも満たない少量である。
- 今日、明日中に来てほしい
- 急な帰省や、賃貸の解約日が迫っていて、一刻の猶予もない。

便利屋は、あなたの「手足」です。 「どう片付けるか」の司令塔はあなた自身ですが、その代わり、圧倒的な安さとスピードを提供してくれます。
【お片づけの窓口独自アンケート】
最終的に「便利屋」を選んだ人の決め手は何だったのかを調査しました。 遺品整理・片付けで便利屋に依頼した男女350名に「専門業者ではなく便利屋を選んだ最大の理由」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 他の作業(草刈りや清掃)とセットで依頼できたから(45%)
- 専門業者の「トラックパック料金」よりも安く済む物量だったから(32%)
- 即日対応や、夜間の時間指定に対応してくれたから(15%)
- その他(8%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた、便利屋利用者のお客様

やはり「セット依頼」と「小規模・スピード」が便利屋の独壇場です。 「遺品整理」という言葉に囚われず、自分の悩みは「雑用」に近いのではないか? と考えてみてください。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

便利屋を選ぶ際、ホームページの「スタッフ紹介」を見てください。顔写真付きでスタッフが紹介されているか、代表者の想いが語られているか。「どんな人が来るか分からない」のが便利屋の最大のリスクです。顔が見える業者は、それだけで責任感が違います。
ケース2:あなたが「専門業者」を選ぶべきなのはこんな時
一方で、以下の状況なら、便利屋に頼むのは危険です。多少費用がかかっても、プロの遺品整理業者(遺品整理士在籍店)に依頼すべきです。
- 家一軒まるごとの片付け(3LDK以上など)
- 物量が多すぎて、時間制の便利屋では逆に高くつく、あるいは終わらないリスクがある。
- 権利書、通帳、現金が見つかっていない
- 「必ずどこかにあるはず」という貴重品を、ゴミの中から捜索してほしい。
- 孤独死やゴミ屋敷など「特殊な環境」
- 消臭・消毒作業が必要、あるいは害虫が大量発生している。
- 仏壇や神棚、人形の「供養」を重視したい
- しっかりとした証明書付きで、心の整理もつけたい。
- 不法投棄リスクをゼロにしたい
- マニフェスト(産業廃棄物管理票)の発行や、提携処分場の明示など、コンプライアンスを徹底したい。
専門業者は、あなたの「代理人」です。あなたが現場にいなくても、あるいは指示を出せなくても、法律とマナーに則って全てを完遂してくれます。
悪質な便利屋を弾くための「最終防衛ライン」
「便利屋に頼みたいけれど、変な業者が来たらどうしよう」 その不安を払拭するために、契約前に必ず投げかけるべき質問を用意しました。この質問に詰まる業者には、依頼してはいけません。
- 質問1:「追加料金が発生する可能性はありますか? あるとしたら具体的にどんな場合ですか?」
- 良い回答:「当日にお客様の指示で荷物が増えない限り、見積もり以上の金額はいただきません」
- 悪い回答:「やってみないと分かりませんが、まあ大丈夫ですよ」
- 質問2:「回収した不用品は、具体的にどう処理されますか?」
- 良い回答:「資源ごみはリサイクルへ、それ以外は提携している〇〇(許可業者名)が回収します」
- 悪い回答:「自社の倉庫で分別して、適当に処分します」「全部リサイクルなんで大丈夫です」
契約は口約束ではなく、必ず「書面(またはメール)」で残すこと。これが自分を守る唯一の盾になります。
参照リンク:消費者庁「遺品整理サービス等の契約トラブルにご注意!」
最後に:遺品整理は「捨てる」ことではない
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
第1章から第6章まで、お金の話、法律の話、効率の話をしてきましたが、最後に私があなたに伝えたいことは一つだけです。
遺品整理とは、過去のモノを捨てる作業ではなく、あなたが未来へ進むための準備です。
便利屋を選ぼうが、専門業者を選ぼうが、正解はありません。 大切なのは、あなたが「納得して」その業者を選び、無理のない範囲で、後悔のない別れを済ませることです。
私の場合、最終的には「運び出しは便利屋」「細かい仕分けは自分」というハイブリッド方式を選びました。 汗だくになってタンスを運び出してくれた便利屋のお兄さんが、去り際に「お母様、大切にされていたんですね」と、綺麗になった部屋を見て言ってくれた言葉に、私は救われました。
どうか、一人で抱え込まないでください。 プロの力、他人の力を借りることは、決して薄情なことではありません。 あなたが笑顔で新しい日常に戻ることこそが、故人への一番の供養になるのですから。
さあ、まずは電話一本、問い合わせメール一通から始めてみましょう。 その小さな一歩が、止まっていた時間を動かすはずです。








