
編集長
私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!
こんな人におすすめ
- 一人暮らしの親が亡くなり、賃貸の退去期限や家賃発生に焦っている方
- 実家が遠方で頻繁に通えず、業者に頼むべきか自分でやるか迷っている方
- 「遺品整理の費用」は誰が負担するのか、相場はいくらなのか知りたい方
- 大切な通帳や権利書を、ゴミと間違えて捨ててしまわないか不安な方
- 悪徳業者に騙されず、安く安全に片付けを終わらせたい方
この記事でわかること
- 【損をしない初動】 死亡連絡後、最短で家賃を止めるための「賃貸解約」の正しい手順
- 【お金の正解】 1K〜2DKのリアルな費用相場と、故人の口座から支払う「仮払い制度」
- 【業者選び】 遠方でも安心できる「立ち会い不要」業者の特徴と、悪徳業者の見分け方
- 【捜索ノウハウ】 一人暮らし特有の「隠し資産(へそくり)」の場所と、デジタル遺品の扱い
- 【法的リスク回避】 退去時の敷金トラブルを防ぎ、借金の「単純承認」を避けるための鉄則
【一人暮らしの遺品整理】まず最初に確認すること:賃貸と費用のタイムリミット

親が一人暮らしをしていた部屋。訃報の悲しみに暮れる間もなく、頭をよぎるのは「この部屋の家賃はいつまでかかるのか?」「荷物はどうすればいいのか?」という現実的な問題です。
実は、ここでの初動を間違えると、数十万円単位で損をしたり、背負わなくてもいい借金を背負ったりすることになりかねません。
この記事では、そんな失敗を誰もしなくて済むよう、「死亡連絡を受けたら、まず真っ先にやるべきこと」に絞って解説します。
死亡連絡を受けたらすぐに確認すべき「家賃発生」の仕組み
残酷なようですが、人が亡くなっても賃貸契約は自動的には終了しません。 そして、家賃の発生も止まりません。
多くの人が勘違いしていますが、「本人が亡くなった日=解約日」ではないのです。
私が父の部屋の片付けをした際、最も痛感したのは「賃貸契約の解約予告期間」の重みでした。多くの契約書には「退去の1ヶ月前(または2ヶ月前)までに申し出ること」と書かれています。
つまり、亡くなったと知ったその日に解約を申し出ても、最短でそこから1ヶ月分の家賃は発生し続けるのです。もし連絡が遅れれば、その分だけ無駄な「空家賃」を払い続けることになります。
ここで、当サイトが独自に行った調査結果をご覧ください。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を経験した男女350名に「整理のタイミングで最も金銭的に損をしたと感じたこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 解約予告が遅れて余分な家賃が発生した(62%)
- 急いで業者を手配したため割高な料金になった(21%)
- 解約した後に必要な書類が見つかり再発行手数料がかかった(10%)
- その他(7%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

なんと6割以上の人が、家賃の支払いで損をしたと感じています。「落ち着いてから」と後回しにした結果、数日連絡が遅れただけで、翌月分の家賃(数万円〜十数万円)が確定してしまうケースが後を絶たないのです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

大家さんや管理会社へ連絡する際は、電話だけで済ませず、必ず「解約通知書」などの書面を郵送するか、メールで履歴を残すようにしましょう。「言った言わない」のトラブルを防ぐためです。また、この時点では「電気・水道」はまだ止めないでください。遺品整理の作業や清掃で必ず必要になります。
大家・管理会社へ連絡する際の正しい手順と解約予告期間
では、具体的にどう動けばいいのか。まずは「賃貸借契約書」を探し出してください。
契約書が見当たらない場合は、通帳の引き落とし履歴や、郵便受けにある管理会社からの郵便物を確認して連絡先を特定します。
連絡をする際のポイントは以下の3点です。
- 契約者(故人)が死亡した事実を伝える
- 「相続人代表」として、解約の意思を伝える
- 明け渡し期限(いつまでに荷物を空にするか)の目安を聞く
ここで重要なのは、「明け渡し期限」です。遺品整理業者を入れるにしても、自分たちで片付けるにしても、このデッドラインが決まらないとスケジュールが組めません。
私の場合は、大家さんが「次の入居者が決まる時期ではないから、少しぐらい遅れても日割りでいいよ」と温情をかけてくれましたが、これは稀なケースです。基本的には契約書通り、あるいは月末締めでの退去を求められます。
なお、賃貸住宅の原状回復については、国土交通省のガイドラインが基準となります。不当な請求を避けるためにも、一度目を通しておくと安心です。
参考リンク:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
未払い家賃や撤去費用は「連帯保証人」か「相続人」か
次に気になるのが、これらのお金を「誰が払うのか」という問題です。
「私はその部屋に住んでいないし、契約書にサインもしていないから関係ない」と思いたいところですが、法的にはそうはいきません。
結論から言うと、未払い家賃や退去費用は「相続財産」の一部となり、相続人が支払い義務を負います。
もし連帯保証人が設定されている場合、まずは連帯保証人に請求がいきます。しかし、最終的には連帯保証人から相続人へ求償(代わりに払った分を返せと請求すること)される可能性があります。
特に注意が必要なのは、故人が家賃を滞納していた場合や、部屋が「ゴミ屋敷」状態で高額な撤去費用がかかる場合です。
「親が勝手にやったことだから」と無視していると、相続人であるあなたの財産(預貯金や給与)が差し押さえられるリスクすらあります。まずは、「故人の預金残高」がいくらあるか、そして「滞納や撤去費用」がいくらかかるかを、冷静に天秤にかける必要があります。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

故人の口座が凍結されていても、葬儀費用や当座の支払いのためであれば、一定額まで引き出せる「仮払い制度」があります。ただし、これを利用するには戸籍謄本などの書類が必要です。慌てて自分の貯金から立て替える前に、まずは銀行に相談してみることをおすすめします。
部屋の荷物を勝手に動かすと「借金も相続」することになるリスク
これが第1章で最も伝えたい、最大のリスクです。
「早く部屋を空けなきゃ!」と焦って、部屋にある金目の物(貴金属や車、新しい家電など)を売ってお金に換えたり、逆に価値のあるものを捨ててしまったりしていませんか?
実は、相続財産に手を付ける(処分する)と、法律上「単純承認」とみなされます。
単純承認とは、「プラスの財産もマイナスの財産(借金)も、すべて無条件で引き継ぎます」という意思表示です。
もし、後から親に多額の借金(消費者金融や連帯保証債務など)が発覚した場合、すでに遺品を処分してしまっていると、「相続放棄」ができなくなる可能性が極めて高いのです。
私の友人のケースですが、父親の遺品整理中に見つけたロレックスの時計を「形見分け」として持ち帰り、売却して葬儀代の足しにしました。しかしその後、父親に300万円の借金が発覚。時計を売却した行為が「財産の処分」とみなされ、相続放棄が認められず、300万円の借金を背負うことになりました。
遺品整理は、単なる片付けではありません。「財産調査」です。
部屋の中にあるものが「ゴミ」なのか「資産」なのか、そして故人の経済状況がどうなっているのかがハッキリするまでは、安易に物を捨てたり売ったりしないこと。これが鉄則です。
明らかに価値のない一般ゴミ(生ゴミや古雑誌など)の処分は問題になりにくいですが、判断に迷うものは、相続放棄の可能性がゼロになるまで手を付けないのが安全です。
次章では、具体的な作業の進め方について解説します。
「体力的に自分たちでやるのは無理かも…」「でも業者に頼むとお金が…」 そんな悩みを解決する、自分で行うか業者に頼むかの判断基準と、賢い使い分け方をご紹介します。
第2章 誰が片付けるのか:自分で行うか、業者に頼むかの判断基準

賃貸の解約日や相続の方向性が決まったら、次はいよいよ「部屋の中身」をどうにかしなければなりません。
ここで多くの遺族が直面するのが、「自分たちで片付けるか、業者に頼むか」という悩みです。
「業者は高いから、自分たちで少しずつやろう」 そう考える気持ちは痛いほど分かります。私も父が亡くなった当初はそう思っていました。
しかし、結論から申し上げます。一人暮らしの家の片付けを、遠方の家族や高齢の親族だけで完遂するのは、想像を絶するほど過酷です。
私は週末ごとに片道2時間かけて父の家に通いましたが、3回目で心が折れました。可燃ゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミ…自治体ごとに違う分別ルール、運び出せない重い家具、そして思い出の品を見るたびに止まる手。結局、最後は業者に依頼することになりました。
この章では、無理をして体調を崩したり、結局高くついたりしないための「正しい判断基準」と「賢い使い分け」をお伝えします。
遠方の家族・高齢の親族だけで作業は可能か?
まず、敵(片付ける量)を知りましょう。 一人暮らしとはいえ、何十年も生活した部屋には、平均して2トン〜4トンの家財があると言われています。これは2トントラック1台〜2台分に相当します。
これを素人が、階段を使って搬出できますか? ここで、当サイトの独自データを見てみましょう。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を自分たち(親族のみ)で行った男女350名に「作業中に最も辛かったこと・後悔したこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- ゴミの分別が複雑すぎた・量が多すぎて体力を消耗した(48%)
- 週末しか作業できず、家賃が余分にかかってしまった(28%)
- 重い家具の搬出で腰を痛めた・怪我をした(15%)
- その他(9%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数の人が、「量と分別」の壁にぶつかり、後悔しています。 特に「遠方(片道1時間以上)」または「3階以上エレベーターなし」の条件が重なる場合は、迷わずプロの手を借りることを検討すべきです。交通費と宿泊費、そしてあなたの労力を時給換算すれば、業者に頼んだ方が安いケースがほとんどです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

自治体のゴミ回収を利用すれば費用は安いですが、「一度に出せるゴミ袋の数」に制限があることが多いです(例:1回5袋まで)。家一軒分を捨てるには何ヶ月もかかってしまいます。地域の「臨時ゴミ回収(有料)」制度があるか、役所の環境課(清掃課)へ問い合わせてみましょう。
参考リンク:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく廃棄物処理」
「貴重品の捜索は自分」「搬出・処分は業者」の賢いハイブリッド方法
「業者に頼む」=「全て丸投げ」ではありません。 最もおすすめなのは、いいとこ取りのハイブリッド方式です。
- 自分たちでやること: 重要書類の捜索、現金・貴金属の回収、思い出の品(形見)の選定。
- 業者に任せること: 洋服、布団、家具、家電、生活雑貨の分別・搬出・処分。
この分担が最強です。 貴重品や思い出の品を自分たちで探すことで、「業者に何か盗まれるんじゃないか」という不安や、「大事なものを捨てられた」という後悔をゼロにできます。また、ある程度仕分けをしておくことで、業者側の手間が減り、見積もり金額が安くなることもあります。
業者は「重いものを運ぶプロ」であり、「分別のプロ」です。私たちが1時間悩むゴミの仕分けを、彼らは数秒で判断します。餅は餅屋に任せましょう。
自分でやる場合と業者に頼む場合の比較
判断に迷う方のために、コストと労力を比較しました。
- 自分たちで行う場合
- 費用: 数万円(ゴミ袋代、レンタカー代、リサイクル券代、交通費)
- 期間: 数ヶ月(週末作業の場合)
- 労力: 激重。肉体的・精神的疲労が大きい。
- 向いている人: 近所に住んでいる、体力がある、時間がたっぷりある、荷物が少ない。
- 業者に依頼する場合
- 費用: 数万円〜数十万円(間取りや物量による)
- 期間: 1日〜2日
- 労力: ほぼゼロ(指示出しのみ)。
- 向いている人: 遠方在住、多忙、高齢、一刻も早く部屋を返したい。

【特殊ケース】孤独死・発見遅れの場合
もし、故人が亡くなってから発見されるまでに時間が空いた場合(孤独死など)、絶対に自分たちだけで部屋に入ってはいけません。
体液や血液による汚染、強烈な腐敗臭、そして害虫が発生している可能性があります。これは単なる「汚れ」ではなく、感染症のリスクがある「危険区域」です。
この場合、通常の「遺品整理」の前に、「特殊清掃」が必要です。
特殊清掃とは、専用の薬剤と機材で汚染箇所を除去し、消臭・消毒を行う専門技術です。一般のハウスクリーニングや遺品整理業者では対応できません。
- 特殊清掃業者が入室(除菌・消臭・汚染物撤去)
- 安全が確保されてから遺族が入室(貴重品捜索)
- 遺品整理業者が家財撤去
この順番を間違えないでください。無理に入室すると、衣服や髪に臭いが染み付き、トラウマになることもあります。プロに頼むことは、自分自身の心と体を守ることでもあります。
次章では、一番気になる「お金」の話をします。 「結局、いくらかかるの?」「誰がそのお金を払うの?」 相場を知らずに損をしないための、費用のリアルと、故人の口座から費用を捻出する方法について解説します。
第3章 費用の相場と支払いルール:誰のお金で支払うべきか

遺品整理の見積書を見て、その金額に膝から崩れ落ちそうになったことはありますか?
私はあります。父の部屋(2DK)の見積もりが「35万円」と出たとき、「これを私の貯金から出すのか…?」と、悲しみとは別の種類の冷や汗が出ました。
多くの遺族にとって、遺品整理は「心の整理」であると同時に、シビアな**「資金繰りの問題」**でもあります。
「親の家の片付けに数十万円もかけられない」 「兄弟は『お前が長男だから任せる』と言うだけでお金を出してくれない」
そんな金銭トラブルで親族関係に亀裂が入るケースは、残念ながら非常に多いのです。この章では、相場を知らずに損をしないための知識と「誰のお金で支払うのが正解か」というデリケートな問題に切り込みます。
間取り別(1R/1K/2DK)の遺品整理・不用品回収のリアルな相場
まずは「敵(費用)」の大きさを把握しましょう。 ネットで検索すると「1.5万円〜」のような激安広告が出てきますが、あれを鵜呑みにしてはいけません。あれは「軽トラ1台に積めるだけ積んだ場合」の最低料金であることがほとんどです。
実際に「生活していたままの状態」から「空っぽ」にするための、現場感覚に近い相場は以下の通りです。
- 1R・1K(一人暮らしの標準): 3万円〜8万円
- 1DK・2K(荷物多め): 8万円〜15万円
- 2DK・2LDK(夫婦二人暮らし規模): 12万円〜25万円
- ゴミ屋敷・特殊清掃が必要な場合: 上記の2倍〜数倍
なぜこんなに幅があるのか。それは「部屋の広さ」ではなく「ゴミの量」で決まるからです。1Kでも、床が見えないほど雑誌や衣類が積み上がっていれば、20万円を超えることも珍しくありません。
ここで、当サイトの独自データをご紹介します。現実はシビアです。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を業者に依頼した経験のある男女350名に「最終的にかかった費用と、当初の想定とのギャップ」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 想定よりも高かった(追加料金やオプションで膨らんだ)(58%)
- 想定通りだった(30%)
- 想定よりも安かった(買取で相殺できた)(12%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

半数以上の人が「思ったより高い」と感じています。特に「エレベーターがない階層」「エアコンの取り外し」「消臭作業」などはオプション料金になりやすいため、見積もりの際は「追加料金が一切かからないコミコミ価格か?」をしつこいほど確認してください。
故人の預貯金から整理費用を支払うための「仮払い制度」
「相場は分かった。でも、そんな大金を今すぐ用意できない」そう思う方もいるでしょう。
ここで知っておくべき最強の制度が、2019年の民法改正で使いやすくなった「預貯金の仮払い制度」です。
以前は、遺産分割協議が終わるまで(=親族全員がハンコを押すまで)、故人の口座は凍結され、1円も引き出せませんでした。そのため、葬儀代や遺品整理費用を誰かが立て替えるしかなかったのです。
しかし現在は、遺産分割協議の前でも、一定額(上限150万円程度)までなら、相続人が単独で故人の口座から引き出せるようになりました。
これを使えば、あなたの財布を痛めることなく、「故人の遺したお金で、故人の部屋を片付ける」ことが可能です。
ただし、銀行の窓口で「遺品整理に使います」と言うだけではダメです。戸籍謄本や印鑑証明書など、自分が相続人であることを証明する書類が必要です。まずは銀行に電話をして、「相続預金の仮払い制度を使いたい」と伝えてください。
参考リンク:全国銀行協会「故人の預金の払戻し制度」
相続人が複数いる場合の費用分担とトラブル回避
お金の出どころが故人の口座なら平和ですが、もし口座にお金がなかったら? あるいは、仮払い手続きが間に合わなかったら?
ここで勃発するのが「誰が払うんだ論争」です。
「長男のお前が全部やるべきだ」
「私は遠くに住んでるし、何も相続しないから払わない」
こんな言葉を兄弟から投げつけられ、泣く泣く全額自腹を切った相談者を何人も見てきました。
法的に言えば、遺品整理費用は「相続費用」とみなされ、相続人の共有財産から支払う(=全員で負担する)のが一般的とされています。しかし、法律は現場の喧嘩を止めてはくれません。
トラブルを避けるための鉄則は以下の2点です。
- 見積もり段階で情報を共有する:勝手に業者を決めて事後報告で「20万円かかったから半分払って」と言っても、相手は納得しません。「A社は25万、B社は20万だった。B社に頼もうと思うがどう思う?」と、決定プロセスに巻き込むことが重要です。
- 「持ち出し」ではなく「遺産からの精算」にする:「とりあえず私が立て替えるけど、後で遺産を分ける時にその分を引いてね」と、文書(LINEでも可)で合意をとっておくことです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

領収書の宛名は、必ず「故人の名前」ではなく「支払いをした人(あなた)の名前」でもらってください。後々、相続税の申告をする際や、親族間で精算をする際に、誰が負担したかを証明する唯一の証拠になります。また、但し書きには「◯◯様邸 遺品整理費用として」と具体的に書いてもらいましょう。
買取サービスを利用して作業費用を相殺するテクニック
最後に、少しでも費用を安くするテクニックをお伝えします。 それは、「買取」に強い遺品整理業者を選ぶことです。
遺品の中には、ゴミに見えても価値があるものが混ざっています。
- 製造5年以内の家電(冷蔵庫、洗濯機、テレビ)
- 骨董品、茶道具、掛け軸
- 未開封のウイスキーやブランデー
- 貴金属、時計
- 釣り具、楽器、オーディオ機器
これらを「処分(有料)」するのではなく「買取(値引き)」してくれる業者を選べば、請求額から数万円、時には十数万円が引かれることもあります。
私が父の遺品整理をした際は、ボロボロのオーディオセットと大量のレコードに意外な値がつき、作業費用が3万円ほど安くなりました。
見積もりを依頼する際は、「買取できるものはありますか?」とこちらから積極的に聞いてみてください。その反応で、その業者の目利き力や誠実さが分かります。
次章では、業者選びの核心部分に迫ります。
「立ち会う時間がない」「遠方で鍵を預けるのが不安」 そんな状況でも安心して任せられる、失敗しない業者の選び方と、悪徳業者を見抜くポイントを解説します。
第4章 失敗しない業者の選び方:遠方・多忙でも安心して任せるために

「実家の鍵を、会ったこともない業者に預けて本当に大丈夫だろうか?」
一人暮らしの親の遺品整理において、多くの遺族がこの葛藤に苦しみます。 部屋の中には、親のプライバシーの全てと、まだ見つかっていないかもしれない現金や通帳が眠っています。それを他人に委ねるのですから、不安になるのは当然です。
しかし、世の中には残念ながら「遺品整理」の名を借りた「泥棒まがい」の業者や、「不法投棄」を行う悪徳業者が存在します。
私自身、業界の裏側を知る立場で言わせていただくと、HPが綺麗だからといって信用できるとは限りません。 以前、知人がネットで一番安かった業者に依頼したところ、作業後に「想定よりゴミが多かった」と当初の倍近い金額を請求され、しかも庭に一部のゴミを放置して帰られるというトラブルに遭いました。
この章では、そんな被害に遭わないための「防衛術」と、遠方からでもコントロールできる「正しい業者の見極め方」を伝授します。
「遺品整理士」の有無や「許可証」の確認方法
まず、最低限のフィルターにかけましょう。 誰でも「今日から遺品整理屋です」と名乗れる今の日本では、資格と許可証が唯一の身分証明です。
- 「遺品整理士」の資格があるか
- これは民間資格ですが、「遺族への配慮」や「法規制の遵守」を学んでいる証です。単なる不用品回収業者は「ゴミを捨てること」がゴールですが、遺品整理士は「遺品を仕分けて遺族に届けること」をゴールとしています。 在籍しているスタッフがいるかどうか、HPで確認してください。
- 「一般廃棄物収集運搬業許可」の連携
- ここが一番の落とし穴です。家庭から出るゴミ(一般廃棄物)を運べるのは、自治体の許可を持った業者だけです。 多くの遺品整理業者はこの許可を持っていません(新規取得が非常に難しいため)。 そのため、「提携している許可業者を手配します」と明記しているか、あるいは「ご自身(業者)が許可を持っていますか?」と聞いて明確に答えられる業者を選んでください。 「うちは全部自社で処分場に持っていきます(許可なし)」という業者は、不法投棄のリスクが高いので即刻候補から外しましょう。
参考リンク:環境省「廃棄物の適正処理案内」
立ち会い不要・鍵預かりで対応してくれる信頼できる業者の特徴
遠方に住んでいる場合、「見積もりの日」「作業の日」「確認の日」と何度も現地に行くのは不可能です。 そこで利用したいのが「立ち会い不要サービス」です。
鍵を郵送、あるいはキーボックスで受け渡し、作業を完結させてくれるサービスですが、ここでのチェックポイントは「報告の細かさ」です。
信頼できる業者は、以下のフローを徹底しています。
- 作業前: ビデオ通話や写真で、部屋の状況と「残してほしいもの」を共有する。
- 作業中: 貴重品(現金や印鑑)が出てくるたびに、LINE等で写真を送って報告してくれる。
- 作業後: 空になった部屋の全方向写真と、清掃完了の報告がある。
私が取材した優良業者は、作業員全員がボディカメラを装着し、作業風景を録画して遺族に提供するサービスまで行っていました。「見られていなくても、見られているつもりでやる」。この姿勢がある業者を探してください。
ここで、実際にトラブルになったケースを見てみましょう。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理業者とのトラブルを経験した男女350名に「具体的にどのような被害や不満があったか」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 見積もりにはなかった追加料金を作業後に請求された(45%)
- 残してほしいと伝えたアルバムや書類を捨てられた(32%)
- スタッフの態度が悪かった・近隣からクレームが来た(15%)
- その他(8%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

「勝手に捨てられた」という悲劇は、事前のコミュニケーション不足と、業者の質の低さが原因です。
高額請求・不法投棄を行う悪徳業者の見分け方
悪徳業者には共通する「匂い」があります。
見積もりの段階で以下のサインが出たら、契約してはいけません。
- 「一式」という言葉を多用する
- 見積書に「作業一式 20万円」としか書かれていない場合、危険信号です。「人件費」「車両費」「処分費」「リサイクル家電代」などの内訳を出さない業者は、後で言い逃れをします。
- 「今決めてくれたら半額にします」と急かす
- 遺族の冷静な判断力を奪おうとする典型的な手口です。まともな業者は、相見積もり(他社との比較)を嫌がりません。
- 会社概要に住所がない、または携帯電話番号のみ
- トラブルが起きた時に雲隠れされる可能性があります。Googleマップで住所を検索し、実店舗や事務所が存在するか確認してください。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

追加料金トラブルを防ぐ最強の言葉があります。契約する前に、「当日、いかなる場合でも追加料金が発生しない旨を、見積書の備考欄に書いてください」と頼んでみてください。優良業者は「もちろんです」と書きますが、悪徳業者は「いや、当日になってみないと…」と濁します。これで一発で見抜けます。
「重要書類・貴金属の捜索」を確実にやってもらうための指示の出し方
最後に、業者を最大限活用するための「指示の出し方」です。 ただ漫然と「貴重品があったら取っておいて」と言うだけでは不十分です。
プロの業者は捜索能力が高いですが、それでも人間です。見落としを防ぐために、具体的な「捜索リスト」を渡しましょう。
- 探してほしいものリスト(例)
- 現金(タンス貯金、本の間)
- 通帳・印鑑・カード類
- 保険証券・権利書(不動産)
- 年金手帳
- 写真アルバム(特に黒い表紙のもの)
- 〇〇と書かれた箱
「もしこれらが見つからなくても、作業中に『ここにはありませんでした』と報告してください」と伝えておけば、業者の意識は格段に上がります。
私の父の時は、「背広の内ポケットと、靴箱の中の靴の中を見てください」と伝えました。結果、古い靴の中から数万円のへそくりが見つかりました。
こちらが「あるかもしれない」という前提で指示を出すことで、業者の目つきが変わるのです。
次章では、一人暮らし特有の「隠れ資産」と「解約手続き」について解説します。 部屋は綺麗になったけれど、契約ごとは残ったまま…。 そんなことにならないよう、見落としがちな「デジタル遺品」や「サブスク解約」の完全リストをお届けします。
第5章 一人暮らし特有の「捜索」と「解約」:見えない資産と契約の処理

部屋は空っぽになり、鍵も返した。「これでやっと終わった」と肩の荷を下ろすのは、まだ早いです。
一人暮らしの故人が残したものは、目に見える家財道具だけではありません。「銀行口座」「保険」「サブスク」「借金」…そして「デジタル遺品」。
これらは形がないため、片付けの最中にうっかり見過ごしてしまいがちです。しかし、放置すれば毎月クレジットカードから会費が引き落とされ続けたり、数百万円単位の資産(ネット銀行の預金など)が永遠に闇に葬られたりすることになります。
私自身、父の死後に一番冷や汗をかいたのは、遺品整理から半年後に届いた「クレジットカードの督促状」を見たときでした。解約し忘れていた有料動画サイトの会費が、延滞金付きで請求されていたのです。
この章では、そんな「見えない遺品」をどうやって見つけ出し、どのような順序で息の根を止める(解約する)か、探偵のような視点で解説します。
一人暮らしの高齢者が現金や通帳を隠しがちな「意外な場所」リスト
まず、まだ部屋の整理中、あるいは業者に指示を出す段階の方へ。 一人暮らしの高齢者は、防犯意識の高さから、「泥棒も思いつかないような場所」に現金や重要書類を隠す傾向があります。
「まさかこんなところに」という場所から大金が出てくることは、遺品整理の現場では日常茶飯事です。
私の経験と、プロの遺品整理士への取材をもとにした「捜索重点ポイント」をリスト化しました。これらは業者に必ずチェックさせましょう。
- 冷蔵庫の中: 食品の箱や、冷凍庫の奥底に現金を冷やしている方が意外と多いです。
- 本や雑誌の間: ページの間にお札を挟んでいるだけでなく、本の背表紙の裏にへそくりを隠していることも。
- 仏壇の引き出しの裏・天井: 引き出しの中ではなく、「引き出しを抜いた奥の空間」や「天井部分」に貼り付けられていることがあります。
- 薬箱・救急箱: 薬の袋の中に、薬と一緒にお金を入れているケース。
- 古い着物の帯や袂: 昔の習慣で、着物にお金を入れたまま保管していることがあります。
これらは「ゴミ」として捨てられやすい場所ワースト5でもあります。中身を一枚一枚確認せずに捨ててしまうと、現金をドブに捨てるのと同じです。
郵便物・スマホ・PCから「ネット銀行」「サブスク」「借金」を特定する方法
最近増えているのが、「通帳がない」「明細が来ない」タイプの契約です。 ネット銀行や証券口座、サブスクリプションサービスは、紙の郵便物が届かないため、発見が極めて困難です。
ここで、当サイトの独自調査の結果をご覧ください。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理経験者350名に「故人の契約や資産を探す際に、最も苦労したもの」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- スマホ・PCのパスワードが分からず中身が見られなかった(45%)
- ネット銀行・証券など、通帳のない資産の特定(30%)
- 解約方法がWEB限定で、電話がつながらなかった(15%)
- その他(10%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

半数近くが「デジタルロック」の壁に阻まれています。 これらを解除できなくても、外側から特定する方法はあります。
- 郵便物の「検閲」を徹底する
- 死亡届を出した後でも、数ヶ月間は故人宛ての郵便物を転送設定し、全てチェックしてください。「〇〇証券」「〇〇カード」という封筒はもちろん、「重要なお知らせ」と書かれたハガキ(更新通知など)が命綱です。
- メールとアプリのアイコンを確認する
- もしスマホが開ける状態なら、メールアプリで「銀行」「完了」「登録」「支払い」などのキーワードで検索をかけます。また、ホーム画面にある「銀行アプリ」「証券アプリ」のアイコンを見るだけで、どこの銀行を使っていたかの特定になります。
- 通帳の入出金履歴を遡る
- メインバンクの通帳が見つかったら、過去1年分の履歴を見てください。「クレジットカードの引き落とし名義」「毎月定額の引き落とし」から、紐づいている契約を洗い出せます。
手続き一覧:電気・ガス・水道・携帯電話・NHK・クレカ等の解約連絡先と優先順位
解約には「正しい順番」があります。 手当たり次第に電話をすると、「あれ?この支払いはどのカードだっけ?」と混乱したり、ライフラインを止めすぎて掃除ができなくなったりします。
以下の優先順位リストを参考に、淡々と処理していきましょう。
【最優先:すぐに止めるもの】
- 携帯電話・スマートフォン: 基本料金が高い上、有料サイト決済の元締めになっていることが多いです。ショップへ行き、死亡診断書と本人確認書類を提示して即解約しましょう。
- クレジットカード: 年会費や不正利用のリスクを防ぐため、カード会社へ連絡します。※ただし、公共料金の支払いに使っている場合は、変更手続きが済んでから最後に解約します。
- インターネット・プロバイダ: 解約手続きが複雑で時間がかかるため、早めに着手します。モデムの返却が必要な場合もあります。
【タイミングを見て止めるもの】
- 電気・水道: 遺品整理の作業中(掃除など)に使います。「退去日(立会い日)」に合わせて停止するよう予約します。
- ガス: お湯を使わないなら早めに止めてもOKですが、立ち会いが必要な場合があります。
【忘れがちなもの】
- NHK受信料: 世帯消滅の手続きをしないと、口座から引き落とされ続けます。
- 運転免許証・パスポート: 警察署や旅券事務所で返納します。身分証明書の悪用防止になります。
参考リンク:国民生活センター「家族が亡くなった後の手続き」
【編集長からのワンポイントアドバイス】

各種解約の電話をする際、オペレーターに「契約者が亡くなりました」と伝えると、通常の解約フロー(違約金の説明など)を飛ばして、おくやみ窓口などの専門部署に繋いでくれることが多いです。これにより、違約金が免除されるケースもありますので、必ず最初に「死亡による解約」であることを伝えましょう。
デジタル遺品:パスワードが分からないPCやスマホの扱いと、SNSアカウントの追悼・削除
最後に、現代特有の悩み「デジタル遺品」です。 故人のスマホやパソコンには、思い出の写真だけでなく、見られたくないプライベートや、FXなどの金融資産が入っている可能性があります。
もしパスワードが分からずロックが開かない場合、無理に解除しようとしてはいけません。
iPhoneなどは、パスコードを数回間違えると「完全にロック」がかかり、初期化(データ消去)しかできなくなります。
- 資産調査が必要な場合: 「デジタル遺品解析サービス」を行っている専門業者に依頼することを検討してください。数万円〜数十万円かかりますが、ロック解除やデータ抽出を試みてくれます。
- 資産の可能性が低い場合: 中身を見ずに「物理破壊」して廃棄するのが、故人の尊厳を守る(秘密を墓場まで持っていく)ための優しさかもしれません。
また、LINEやFacebookなどのSNSアカウントは、「追悼アカウント」として残すか、「削除」するかを選べます。放置すると乗っ取り被害に遭うリスクもあるため、主要なSNSについては各社のヘルプセンターから死亡報告を行うことをお勧めします。
次章、いよいよ最終章です。
遺品整理が終わった後に待っている「敷金返還」の攻防と、次のステップである「相続」への橋渡し。 作業完了後のクロージング:敷金返還と相続手続きへについて解説します。
第6章 作業完了後のクロージング:敷金返還と相続手続きへ

業者のトラックが去り、空っぽになった親の部屋。 カーテンのない窓から差し込む光を見たとき、私は初めて「ああ、本当に終わったんだ」という安堵と、強烈な寂しさに襲われました。
しかし、感傷に浸っている時間はありません。 この後には、大家さん(または管理会社)との「退去立ち会い」という、最後のそして最大の「金銭交渉」が待っています。
ここで気を抜くと、本来返ってくるはずの敷金(数十万円)がゼロになるどころか、追加で高額なリフォーム費用を請求されることさえあります。
この最終章では、最後のお金を守るための「退去時の防衛術」と、持ち帰った思い出の品をどうするか、そしてこれから始まる相続手続きへの流れをお伝えし、本連載を締めくくりたいと思います。
空になった部屋の退去立ち会い:原状回復費用を不当に取られないための防衛策
「お父様、ヘビースモーカーでしたか? 壁紙が黄色いので、これ全部張り替えですね」
「畳も日焼けしているので、全室表替えが必要です」
これは、私が父の部屋の立ち会いをした際に、管理会社の担当者から言われた言葉です。 父はタバコを吸いません。ただの日焼け(経年劣化)を、あたかも「使い方が悪かったせい」にされ、借主負担として請求されそうになったのです。
賃貸の退去時には、「原状回復」のルールがあります。 基本的には、「普通に暮らしていて汚れたり古くなったりした分(経年劣化)」は、大家さんが負担すべきものです。借主(遺族)が負担するのは、「わざと壊したもの」や「掃除をサボってできたひどい汚れ(カビなど)」に限られます。
しかし、遺族が知識を持っていないと足元を見られます。ここで、当サイトの独自データをご覧ください。
【お片づけの窓口独自アンケート】
賃貸物件の遺品整理後、退去立ち会いを行った男女350名に「敷金返還や原状回復費用でトラブルになったこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 経年劣化(日焼け・画鋲の穴)まで請求されそうになった(55%)
- ハウスクリーニング代が相場より著しく高額だった(25%)
- 「孤独死だから」という理由でフルリフォーム代を請求された(15%)
- その他(5%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

半数以上が、本来払う必要のない費用を請求されそうになっています。 特に「孤独死」や「発見遅れ」の場合、「臭いが染み付いている」という理由で、壁紙だけでなく床材の下地まで請求されるトラブルが多発しています。
これに対抗するための武器はただ一つ、「ガイドライン」という知識です。 国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、何が借主負担で、何が貸主負担かが明確に書かれています。
立ち会いの際は、スマホでこのガイドラインを表示させながら、「これは経年劣化ですよね? ガイドラインでは貸主負担のはずですが」と強気に交渉してください。
参考リンク:東京都住宅政策本部「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」 (※東京ルールと呼ばれますが、全国的に参考になる基準です)
【編集長からのワンポイントアドバイス】

立ち会いの日、管理会社が来る前に、空になった部屋の床・壁・天井の写真を「全室・全方向」撮影しておいてください。 もし後から「ここに傷があった」と不当な請求をされた時、その写真が「最初からあった傷ではない(あるいは経年劣化である)」ことを証明する唯一の証拠になります。
形見分け:残した思い出の品をどう配るか
戦い(退去交渉)が終われば、あとは心の整理です。 遺品整理で持ち帰った「アルバム」「時計」「着物」などの形見の品。これらをどうするかで、親族間の温度差が出ることがあります。
「親父の時計だから、長男のお前が持つべきだ」
「お母さんの着物、あなたが着ないなら私がもらうわ」
ここで重要なのは、「押し付けない」ことです。
あなたにとっては「父の思い出」でも、他の親族にとっては「場所を取る不用品」かもしれません。無理に配ると、相手も断れず、結果的に迷惑をかけてしまいます。
私が実践して好評だったのは、「形見のリスト化とデジタル共有」です。 持ち帰った品物の写真を撮り、親族のグループLINEにアルバムとしてアップしました。「欲しいものがあれば言ってね。残りは私が処分(または供養)します」と伝えたのです。
これにより、遠方の親族も欲しいものを選べましたし、残ったものを処分する際も「みんな要らないって言ったから」と、罪悪感なく手放すことができました。
また、大量の写真アルバムは、全て保管するのは物理的に不可能です。
「スキャン代行サービス」を利用してデジタルデータ化し、データとして親族に配るのが、現代の最もスマートな形見分けと言えるでしょう。
次にやること:遺品整理が終わった後に始まる「相続手続き」
遺品整理は、終わりではありません。「相続」という新たなプロジェクトの始まりです。
部屋が片付き、通帳や印鑑、重要書類が手元に揃ったことで、ようやく正確な手続きが可能になります。
- 相続税の申告(10ヶ月以内): 遺産の総額が「基礎控除額(3000万円+600万円×相続人の数)」を超える場合、税務署への申告が必要です。遺品整理で見つかった「タンス預金」や「骨董品」も評価額に含まれるので注意してください。
- 不動産・車の名義変更: 持ち家だった場合や、車を相続する場合は、法務局や陸運局での手続きが必要です。
- 準確定申告(4ヶ月以内): 故人に事業収入や不動産収入があった場合、亡くなった年の所得税を申告する必要があります。
遺品整理という大仕事を成し遂げたあなたなら、これらの事務手続きもきっと乗り越えられるはずです。
【最後に:遺品整理とは、過去を片付け、未来を生きるための儀式】

全6章にわたり、一人暮らしの遺品整理について解説してきました。
最初は「面倒だ」「お金がかかる」「どうすればいいか分からない」という不安しかなかったと思います。しかし、一つずつ手順を踏んで片付けていく過程は、単なる「ゴミ捨て」ではありません。
それは、親が一人で生きてきた証(あかし)と向き合い、その人生を肯定し、綺麗に幕を引いてあげる「最期の親孝行」です。
そして何より、残されたあなたが、後ろ髪を引かれることなく、これからの自分の人生を前を向いて生きていくための「心の区切り」をつける儀式でもあります。
この連載が、あなたの背中を押し、無事に遺品整理という大仕事を完遂する一助となれば、これ以上の喜びはありません。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。 あなたの、そして故人の安らかな未来を、心よりお祈り申し上げます。








