老人ホームの遺品整理は何から始める?まずやるべき3つの手順と費用相場を解説

遺品整理
お片づけの窓口<br>編集長
お片づけの窓口
編集長

私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!

こんな人におすすめ

  • 親御様が老人ホームや介護施設で亡くなり、退去手続きに追われている方
  • 「いつまでに荷物を出せばいいの?」と、家賃発生や期限に焦っている方
  • 実家の一軒家とは違う、「施設特有の片付けルール」を知りたい方
  • 業者に頼むべきか、自分たち家族でやるべきか迷っている方
  • 変な業者に依頼して、施設に迷惑をかけたり高額請求されたくない方

この記事でわかること

  • 【初動】 業者を探す前に必ず確認すべき「3つの期限」と「家賃の罠」
  • 【判断】 ワンルームでも「自分たちでの搬出」が想像以上に過酷な理由
  • 【選び方】 施設スタッフに好かれる業者と、絶対NGな業者の見分け方
  • 【費用】 実際の請求額はいくら? 1R・1Kの「リアルな料金相場」
  • 【完了】 敷金をしっかり返してもらうための、退去当日のトラブル回避術

第1章 【最優先】まず最初にやるべき「3つの確認」と「1つの行動」

親御様が亡くなられた直後、悲しみの中にいるあなたに、このような現実的なお話をするのは心苦しいのですが、あえて最初に言わせてください。

「老人ホームの片付けは、時間との戦いです」

実は私の友人も数年前、父を施設で看取りました。葬儀の準備に追われる中で、施設長から「お部屋の件ですが…」と切り出されたとき、頭が真っ白になったと言っていました。だからこそ、あなたには同じ思いをしてほしくないのです。

業者の電話番号を調べる前に、まずは深呼吸をして、以下の「3つの確認」だけを済ませてください。これで無駄な出費とトラブルの9割は防げます。

1. 期限の確認:知らないと自動課金される「家賃の罠」

一般的な賃貸アパートと違い、老人ホームの契約には特殊なルールが存在します。最も怖いのが「退去予告期間」です。

多くの施設では「退去の申し出から30日間は家賃が発生する」といった契約になっています。つまり、亡くなった翌日に荷物を全部運び出したとしても、契約上の手続きが遅れれば、誰も住んでいない部屋の家賃を払い続けなければなりません。

まずは施設長、または事務担当者に、単刀直入に以下の3点を聞いてください。

  • 「家賃はいつまで発生しますか?(日割り計算ですか?月割りですか?)」
  • 「荷物を完全に撤去しなければならない期限(デッドライン)はいつですか?」
  • 「施設指定の業者はありますか? それとも自分で探しても構いませんか?」

特に3つ目は重要です。

施設によっては「提携業者以外は立ち入り禁止」という厳しいところもあります。自分で安い業者を探した後にそれを知ると、キャンセル料で損をしてしまいます。

【お片づけの窓口独自アンケート】

遺品整理を経験した男女350名に「施設退去の初期段階で失敗したと感じたこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 家賃の日割り・月割りの確認を忘れ、1ヶ月分余計に払った(58%)
  • 施設の提携業者が高額だったが、断れることを知らなかった(25%)
  • 退去期限を勘違いし、延滞金が発生した(12%)
  • その他(5%)

※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

このように、半数以上の方が「ルールの確認不足」でお金を失っています。まずは「聞くこと」が最大の節約です。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

契約書を探すのに時間がかかるなら、とにかく口頭で施設長に確認してしまいましょう。その際、言った言わないのトラブルを防ぐため、スマホのボイスメモをオンにしておくか、目の前でメモを取る姿を見せると、相手も誠実に対応してくれますよ。

2. モノの区別:「それは親の物? 施設の物?」

実家の片付けと決定的に違うのが、ここです。部屋にあるものが全て親の所有物とは限りません。

よくあるトラブルが「レンタル品の誤廃棄」です。 特に以下の3つは、リース契約(レンタル)である可能性が非常に高いです。

  • 介護ベッド(パラマウントベッドなど)
  • 車椅子
  • テレビや冷蔵庫(備え付けの場合あり)

これらを親の私物だと思い込み、勝手に業者に頼んで処分してしまうと、後から高額な弁償金を請求されます。

逆に、部屋にもともと付いている「エアコン」や「カーテン」「照明」を、親が持ち込んだものだと勘違いして取り外してしまうケースもあります。原状回復工事が必要になり、これも余計な出費になります。

必ず部屋の備品リスト(入居時のチェックリスト)を見せてもらうか、スタッフに指差し確認で「これは置いていっていいものですか?」と聞いてください。

3. 現状把握:スマホで「証拠写真」を撮る

業者に見積もりを依頼する際、わざわざ現地に来てもらわなくても、写真があれば概算が出せます。また、作業後に「壁に傷がついている」と施設側から言われた際、「もともとあった傷です」と証明するためにも写真は必須です。

撮るべきポイントは以下の通りです。

  • 部屋の四隅から全体が見渡せる写真
  • クローゼットやタンスの中身(扉を開けて)
  • トイレ、洗面所の備品状況
  • ベランダがある場合はベランダの荷物
【編集長からのワンポイントアドバイス】

タンスの裏やベッドの下も、無理のない範囲で覗いてみてください。私の経験ですが、認知症のあった親族が、畳の下やベッドマットの隙間に「へそくり」や「通帳」を隠していたことがありました。業者が入る前に、貴重品だけは家族の手で救出してあげてください。

4. 行動:葬儀と並行して「段取り」だけは組む

「四十九日が終わってからゆっくり片付けよう」

お気持ちは痛いほど分かりますが、老人ホームの場合はそれが許されないケースがほとんどです。多くの施設は、次に入居を待っている待機者がいるため、死亡退去から1〜2週間以内の明け渡しを求めてきます。

実際に手を動かすのは葬儀後でも構いませんが、「どこの業者に頼むか」「いつ作業するか」のスケジュールだけは、葬儀の打ち合わせの合間や、親戚が集まっている通夜の席で話し合っておくことを強くおすすめします。

みんなが集まっている時に形見分けの話をしておけば、後から「あの着物が欲しかったのに勝手に捨てた」と親族間で揉めることもありません。

参考リンク: 独立行政法人国民生活センター:老人ホームの契約トラブルについて


第1章は以上です。 まずは「施設への確認」と「レンタルの把握」。これさえ済めば、焦る必要はありません。 続く第2章では、この荷物を「自分たち家族で片付けるか、プロに任せるか」の判断基準について、具体的なコストと労力の面から解説します。

第2章 【判断】自分たちで片付けるか、業者に頼むか

~「ワンルームだから自分たちでできる」という誤解~

「実家の一軒家を片付けるわけじゃない。たった6畳一間の部屋だし、週末に家族みんなで集まれば半日で終わるだろう」

多くの方がそう考えます。かつて私もそうでした。「業者に頼むなんてお金がもったいない」と、レンタカーでバンを借りて施設へ向かいました。

しかし、結論から言います。老人ホームの片付けは、一般的な引越しよりも精神的・物理的なハードルが圧倒的に高いです。

私が実際に体験した「壁」と、プロに任せるべきボーダーラインについて、包み隠さずお伝えします。

1. 「静寂」の中で作業するプレッシャー

まず、老人ホームは「生活の場」であり、病院に近い静けさがあります。 私たちが週末にドタバタと片付けに行くと、何が起きるか。

  • エレベーターが自由に使えない
    • 多くの施設ではエレベーターは1基か2基しかありません。入居者様が食事や入浴で移動する際、手押し車や車椅子の方優先です。段ボールを抱えて何往復もしていると、「まだ終わらないの?」という無言の視線を感じ、作業が何度も中断します。
  • 駐車スペースの問題
    • 玄関横の便利な場所は、救急車やデイサービスの送迎車用であることが多いです。来客用駐車場から部屋まで距離があり、重い家具を運ぶのに想像以上の体力を使います。
  • 養生(保護)のルール
    • 「台車を使うなら、廊下の床と壁に養生シートを貼ってください」と施設側から言われることがあります。素人が完璧な養生をするのは難しく、傷をつければ退去時に修理費を請求されます。

【お片づけの窓口独自アンケート】

遺品整理を経験した男女350名に「自分たち(家族)で片付けをして最も大変だったこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 体力的な負担が想像以上で、作業後に体調を崩した(45%)
  • ゴミの分別(特に医療廃棄物やスプレー缶)に困った(32%)
  • 施設スタッフや他の入居者に気を使って精神的に疲れた(15%)
  • その他(8%)

※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数の方が、体力の限界を感じています。悲しみで心身ともに弱っている時期の肉体労働は、数字以上のダメージがあることを知ってください。

2. 「捨てられないゴミ」の罠

家庭ゴミとして簡単に出せないものが、老人ホームの部屋には大量にあります。

  • 残薬・注射器・点滴パック
    • これらは「医療廃棄物」の可能性があります。家庭ゴミに混ぜて出すことは法律で禁止されている地域が多く、収集車が持っていってくれません。
  • 大量の紙オムツ
    • 未使用なら寄付もできますが、使いかけのパックや汚れたものは処理に困ります。
  • ライター・スプレー缶
    • 高齢の方はライターを溜め込んでいることがよくあります。これらを一本一本ガス抜きする作業は、時間と危険を伴います。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

お薬に関しては、勝手に捨てずにまずは施設の看護師さんやスタッフに「残薬があるのですが」と渡してしまうのが正解です。施設側で提携している薬局を通じて処分してくれるケースが多いですよ。ただ、市販薬やサプリメントは自分で処分を求められることもあるので確認が必要です。

3. プロに任せるべき「3つの条件」

もしあなたが以下のどれか一つでも当てはまるなら、無理をせず業者に依頼することを強くおすすめします。

  1. 自宅と施設が離れている(車で片道1時間以上)
    • 「仕分け」「運び出し」「清掃」「立ち会い」で最低でも3回は通うことになります。交通費と移動時間を考えると、業者の方が安くつく場合があります。
  2. 退去期限まで2週間を切っている
    • 週末しか動けない場合、実質作業できるのはあと2日〜4日しかありません。雨天で作業が中止になれば、期限に間に合わず追加の家賃が発生します。
  3. 遺品を見るのが辛い
    • これが最も大きな理由です。親の服、書きかけのメモ、入れ歯…それらを見るたびに手が止まり、涙が出て進まない。これは「あるある」ではなく、誰にでも起こる正常な反応です。

4. 業者なら「供養」までがセット

私が最終的に業者にお願いして良かったと思ったのは、単に部屋が綺麗になったからではありません。 最後にスタッフの方が、空っぽになった部屋にお花を供え、手を合わせてくれたからです。

「家族だけでは運び出すだけで精一杯だっただろうな」と思いました。 自分たちの心を守るためにも、プロの手を借りることは決して「手抜き」でも「親不孝」でもありません。むしろ、空いた時間で思い出を語り合うことこそが、本当の供養になると私は考えます。

参考リンク: 環境省:廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく廃棄物の区分


第2章では、自分で行う際のリスクとプロに頼むべき基準についてお話ししました。 もし「業者に頼もう」と決めた場合、次に気になるのは「いったい、いくらかかるのか?」という費用の問題ではないでしょうか。 次回の第3章では、悪徳業者に騙されず、適正価格で依頼するための「業者選びの極意」と、具体的な「見積もりの見方」について解説します。

第3章 【業者選び】施設退去に慣れている業者の見つけ方

~「不用品回収」と「遺品整理」の決定的な違い~

「荷物を捨てるだけなんだから、ネットで一番安い不用品回収業者を呼べばいい」

もしそう思っているなら、少し立ち止まってください。実は私も最初、チラシに入っていた「軽トラ積み放題1万円」という格安業者に電話をしようとしました。

しかし、知人に止められました。「老人ホームは『他人の家』の集合体だから、普通の廃品回収の感覚で呼ぶと痛い目を見るよ」と。

その忠告に従い、しっかりとした遺品整理専門業者を選んで正解でした。なぜなら、当日の現場を見て「これは普通の業者には無理だ」と痛感したからです。

施設特有の「業者選びの落とし穴」について、私の経験とデータを交えて解説します。

1. 業者の態度は「遺族の評価」に直結する

老人ホームには、他の入居者様や、お世話になったスタッフの方々がいます。 そこに、茶髪でピアスの作業員が、汚れた作業着でドカドカと土足で上がり込み、廊下で大声で私語を話していたらどうでしょうか?

「あそこの息子さんは、最後にこんな変な業者をよこして…」

そう思われるのは、亡くなった親御さんであり、あなた自身です。 業者は、退去作業において「遺族の代理人」として振る舞う必要があります。

私が頼んだ業者は、施設に入る前に全員が新しい靴下に履き替え、すれ違う入居者様に「こんにちは、作業に入らせていただきます」と笑顔で挨拶をしていました。 作業後、施設長から「丁寧な業者さんを手配してくれて助かりました」と言われたとき、肩の荷が下りたのを覚えています。

【お片づけの窓口独自アンケート】

遺品整理を経験した男女350名に「業者選びで失敗した、後悔したと感じたポイント」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 作業員の態度が悪く、施設スタッフに迷惑をかけた(42%)
  • 養生(保護)費用や駐車場代などで追加請求された(28%)
  • 作業が雑で、共有部の壁や床を傷つけてしまった(15%)
  • その他(15%)

※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

4割以上の方が、金額ではなく「マナーや態度」で後悔しています。安さだけで選ぶと、最後にあなたの顔に泥を塗ることになりかねません。

2. 「養生」を徹底してくれるか

専門的な話になりますが、施設退去で最も揉めるのが「養生」です。 養生とは、荷物を運び出す際に、壁や床、エレベーター内をプラスチックの板や毛布で保護することです。

一般の賃貸アパートなら簡易的なもので済む場合もありますが、老人ホームは壁紙一つ傷つけただけで、業者ではなく契約者(遺族)に修繕費が請求されます。

「養生は別料金です」「そこまでやりません」という格安業者は避けてください。

「施設のルールに合わせて、エントランスからエレベーターまでしっかり養生します」と最初から見積もりに含んでくれる業者が本物です。

3. 見積もり時に確認すべき「魔法の質問」

では、どうやって良い業者を見分ければいいのでしょうか。 電話や訪問見積もりの際に、以下の質問を投げかけてみてください。

「この近くの老人ホームでの作業実績はありますか?」

この質問に対し、即座に「○○苑さんや、××ホームさんでやったことがあります。あそこは駐車場所が裏手ですよね」などと具体的な答えが返ってくる業者は信頼できます。 逆に「どこでも一緒ですよ」と軽く答える業者は要注意です。

また、必ず「見積もりは確定ですか? 当日に追加料金が発生する可能性はありますか?」と念押しし、書面(またはメール)で残してもらいましょう。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

業者が下見に来た際、彼らが乗ってきた「車」をチラッと見てください。車内がゴミで散乱していたり、社名が入っていない白ナンバーのボロボロのトラックだったりする場合は危険信号です。道具や車両を大切に扱えない業者は、お客様の遺品も大切に扱えません。

参考リンク: 環境省:遺品整理などのサービスを利用される方へ


第3章では、業者選びの基準をお伝えしました。 「安かろう悪かろう」が最も当てはまるのがこの業界です。とはいえ、必要以上に高いお金を払う必要もありません。

次回の第4章では、誰もが一番気になる「お金」の話。 ワンルームの遺品整理にかかる「リアルな費用相場」と、見積もりの内訳について、包み隠さず公開します。

第4章 【費用】施設の一室を片付けるお金の目安

~「3万円」と「10万円」の差はどこで生まれるのか~

「遺品整理の見積もりをとったら、A社は3万円、B社は10万円でした。この差は何ですか?」

これは、私が相談を受ける中で最も多い質問の一つです。 そして私自身も、父の部屋の片付けで3社の見積もりをとったとき、金額のバラつきに驚愕した一人です。

安すぎる業者に頼んで不法投棄されても困るし、かといって足元を見られて高く払うのも嫌だ。 その不安を解消するために、老人ホーム(ワンルーム・1K)に特化した適正価格と、見積もりの裏側を公開します。

1. 施設退去(ワンルーム)のリアルな相場

結論から言います。 老人ホームの一室(1R〜1K)を、遺品整理業者に依頼した場合の相場は、3万円〜8万円です。

「結構、幅があるな」と思われたかもしれません。 実は、部屋の広さが同じでも、以下の条件によって金額は大きく変動します。

  • 荷物の量(トラックの大きさ)
    • 軽トラック1台で収まるなら3〜4万円、2トントラックが必要なら6〜8万円が目安です。
    • 搬出の難易度 エレベーターがあるか、階段作業か。トラックを建物の目の前に停められるか、それとも離れた場所に停めて台車で運ぶか(横持ち作業)。

私の父の時は、荷物は少なかったのですが「トラックを止める場所から玄関まで50メートルある」という理由で、作業員の増員が必要になり、少し割高になりました。

【お片づけの窓口独自アンケート】

遺品整理を経験した男女350名に「当初の予算(想定)より見積もりが高くなった原因」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 家電リサイクル料金(テレビ・冷蔵庫・洗濯機)が含まれていなかった(48%)
  • 消臭・消毒作業などのオプション費用が追加された(25%)
  • 搬出経路が長く、作業員増員の追加料金がかかった(18%)
  • その他(9%)

※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数の方が「家電リサイクル料金」を見落としています。老人ホームには個別の冷蔵庫やテレビを持ち込んでいるケースが多く、これらを処分するには法律で定められたリサイクル料金が別途かかります。これが見積もりに含まれているかどうかが、安く見せる業者と、正直な業者の分かれ道です。

2. 「買取」で費用を安くするテクニック

ただお金を払って捨てるだけではもったいないです。 遺品整理業者の中には「古物商許可」を持っており、価値あるものをその場で買い取って、作業代金から差し引いてくれるところがあります。

  • 製造5年以内の家電(テレビ・冷蔵庫)
  • 骨董品や絵画
  • 未開封の贈答品(タオル・食器)
  • 貴金属・腕時計

これらは買取対象になる確率が高いです。 私の友人は、お母様が大切にしていたブランドバッグと、まだ新しい空気清浄機を買い取ってもらい、最終的な支払いが2万円も安くなったそうです。

見積もり依頼時には必ず「買取できるものはありますか?」と聞いてみてください。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

「なんでも買い取ります!」と電話で強く言ってくる業者には少し注意が必要です。「押し買い」といって、貴金属だけ安く買い叩いて、肝心の不用品処分は高額請求する手口が存在します。あくまで「整理のついでに値引きしてもらう」くらいのスタンスでいるのが安全ですよ。

3. 格安業者の「追加請求」に気をつけて

相場より明らかに安い(例えば「一律1万5千円!」など)業者は、当日に理由をつけて追加料金を請求してくるリスクがあります。

  • 「想定よりゴミが重かった」
  • 「分別がされていないから手間賃をもらう」
  • 「エレベーターが遅くて時間が超過した」

これらを防ぐために、見積書をもらうときは「総額」だけでなく、「追加料金が発生する条件」が書かれているか確認してください。 優良な業者は「当日にお荷物が増えない限り、追加料金は一切いただきません」と書面で約束してくれます。

4. 供養やお焚き上げは必要?

費用の一部として「供養費(お焚き上げ)」があります。 人形、写真、仏壇など、そのままゴミとして捨てるには忍びない物を、提携寺院で供養してもらうオプションです。

これは必須ではありません。しかし、私が依頼した時は、段ボール1箱分だけ「思い出ボックス」として供養をお願いしました。数千円の追加でしたが、「最後はちゃんとしてあげられた」という私の心の平穏を買う意味では、決して高い出費ではありませんでした。

参考リンク: 経済産業省:家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)


第4章では、お金に関する不安を解消するための目安をお伝えしました。 さて、業者も決まり、金額も納得できた。いよいよ次は「退去作業の当日」です。

「当日はただ見ていればいいの?」
「終わった後に施設となにを話せばいい?」

次回の最終章となる第5章では、トラブルなくスムーズに退去を完了させ、敷金をしっかり返してもらうための「当日の立ち回りとチェックポイント」について解説します。これが最後の一仕事です。

第5章 【完了】退去当日の流れとチェックポイント

~「立つ鳥跡を濁さず」で最後の手続きを終える~

いよいよ、最後の日です。 遺品整理業者が入り、家具も荷物もすべて運び出されたガランとした部屋。 父の部屋が空っぽになった瞬間を見たとき、私は寂しさとともに、「ああ、これで本当に肩の荷が下りた」という不思議な安堵感を覚えました。

しかし、感傷に浸る時間はもう少しだけ待ってください。 荷物がなくなった直後こそ、最後のトラブルが起きやすいタイミングでもあります。

「敷金がほとんど返ってこなかった」
「後から備品がないと連絡が来た」

そんな後味の悪い結末にならないよう、当日の立ち回りと、施設への引き渡しの儀式について解説します。

1. 作業終了後の「最終チェック」は家族の目で

業者の作業が終わったら、必ず「完了確認」を求められます。 遠方で立ち会えない場合は写真報告になりますが、可能な限り最後は自分の足で確認することをおすすめします。

見るべきポイントは「清掃」ではありません。「忘れ物」と「間違い」です。

特に多いのが、「施設の備品を誤ってトラックに積んでいないか」の確認です。

一度持ち帰ってしまうと、郵送で送り返す手間と送料がかかります。車椅子や歩行器、テレビのリモコンなどが、誤って段ボールに紛れていないか、業者の方と一緒にチェックしてください。

【お片づけの窓口独自アンケート】

遺品整理を経験した男女350名に「退去当日・引き渡し時に起きたトラブル」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 清掃状態や臭いについて施設側から指摘を受けた(45%)
  • 施設の備品(リモコン・鍵など)を誤って持ち帰ってしまった(25%)
  • 搬出時に壁や床に傷がついているのが見つかった(15%)
  • その他(15%)

※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数の方が、部屋の状態(汚れや臭い)について指摘を受けています。荷物がなくなると、隠れていた汚れや染みが目立つようになるからです。

2. 施設長との「退去立ち会い」と原状回復

業者が帰った後、または同日に、施設長や担当者と一緒にお部屋の確認(退去立ち会い)を行います。ここで「原状回復費用」が決まります。

一般的な賃貸マンションと同様に、「経年劣化(普通に使っていて汚れた部分)」は弁償する必要がありません。しかし、老人ホーム特有の事情として、以下の点はチェックが厳しくなります。

  • 車椅子による壁の傷・クロスの剥がれ
  • 排泄物などによる床の強烈な染み・臭い

もし「ここの傷は修繕が必要ですね」と言われた際、第1章で撮っておいた「入居時や片付け前の写真」が役に立ちます。「これは最初からあった傷です」と証明できれば、無駄な請求を回避できます。

ただし、明らかに親御さんがつけてしまった汚れであれば、素直に認めて修繕費(敷金からの相殺)に合意するのが、円満な終わらせ方です。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

立ち会いの際、雑巾と「激落ちくん(メラミンスポンジ)」を一つ持っていくことを強くおすすめします。壁についたちょっとした黒ずみや、手すりの汚れをその場でサッと拭き取るだけで、施設側の心証が劇的に良くなり、「これならクリーニングだけで大丈夫ですね」とクロスの張り替えを免除されることもありますよ。

3. 鍵の返却と最後の挨拶

部屋の確認が終わり、問題がなければ、部屋の鍵を返却します。 これで、物理的な「契約終了」となります。

最後に、これまでお世話になったスタッフの方々に一言挨拶をしましょう。 菓子折りなどは必須ではありませんが、私は感謝の気持ちとして、スタッフの皆さんが休憩室でつまめる個包装のお菓子を渡しました。

「○○さん、最後まで綺麗に使っていただいてありがとうございました」

そう言ってもらえた時、親の人生の最期をこの施設に託して間違いではなかったと、心から思えました。

4. 敷金の返還時期を確認する

最後に事務的な手続きとして、以下の点を確認して終了です。

  • 敷金の精算書はいつ届くか
    • 通常、退去から1ヶ月〜2ヶ月後に計算書が届き、残金があれば指定口座に振り込まれます。
  • 郵便物の転送
    • 施設に届いていた親宛の郵便物が、今後は自宅(喪主様宅)に転送されるよう、郵便局で転送届を出しておくのを忘れないでください。

参考リンク: 国土交通省:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン


全5章のまとめ

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

  1. まずは期限とルールを確認
  2. 貴重品だけは自分たちで守る
  3. 無理をせずプロの力を借りる
  4. 適正価格で整理を実施
  5. 最後は感謝とともに退去

親御さんが遺したモノを整理することは、親御さんの人生を「閉じる」作業ではなく、あなたの心の中に「刻む」作業です。

あなたが罪悪感なく、そして後悔なく、この大仕事を終えられることを、心より応援しています。 お疲れ様でした。

タイトルとURLをコピーしました