
編集長
私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!
こんな人におすすめ
- 親の葬儀を終えたばかりで、心身ともに疲弊し、自分で業者を探す気力が湧かない方
- 「家の片付け」も葬儀社にまとめて頼みたいが、費用が高くなるのか、作業の質は大丈夫か不安な方
- 実家が賃貸や老人ホームで、退去期限が迫っており、一刻も早く片付けなければならない方
- 遠方に住んでおり、滞在できる短い期間内で遺品整理の手配を完了させたい方
この記事でわかること
- 葬儀社を窓口にする「リアルなメリット(手間・安心)」と「デメリット(費用・構造)」
- 自分で業者を探す場合と比べた「費用相場」の違いと、その差額が生まれる「業界の裏側」
- 知らないと借金を背負うことになるかも? 「着手タイミング」と「相続の法的リスク(単純承認)」
- 後悔しないための「依頼先判断フローチャート」と、契約前に担当者に聞くべき「5つの質問リスト」
第1章:葬儀社への依頼と窓口の一元化

父の葬儀が終わった直後のことです。火葬場から戻り、精進落としの席で一息ついた瞬間、私の頭をよぎったのは「悲しみ」よりも先に「これから実家の片付けをどうしよう」という、鉛のように重い現実的な不安でした。
目の前にいる信頼できる葬儀社の担当者さんに、「このまま家の片付けも全部お願いできませんか?」とすがりつきたくなる。このキーワードで検索されているあなたも、きっと当時の私と同じように、心身ともに限界ギリギリの状態なのだと思います。
第1章では、私の実体験を交えながら、葬儀社を窓口にして遺品整理を依頼する「リアル」について、良い面も悪い面も包み隠さずお伝えします。
葬儀社に遺品整理は頼めるのか?(自社対応か提携店紹介か)
結論から言うと、ほとんどの葬儀社で遺品整理の依頼は可能です。しかし、ここで消費者が知っておくべき重要な「業界の構造」があります。
それは、葬儀社の9割以上は、自社で遺品整理を行っていないという事実です。
私が父の葬儀でお世話になった大手葬儀社もそうでしたが、彼らが提案してくるのは、あくまで「提携している専門業者の紹介」です。葬儀社の制服を着たスタッフが片付けに来るわけではなく、全く別の作業着を着た人たちが家に入ることになります。
ここで重要なのは、「誰が責任を持つか」です。窓口は葬儀社でも、実際の契約は紹介された業者と直接結ぶケースと、葬儀社が元請けとなってすべて管理するケースがあります。ここを確認せずに進めると、「話が違う」というトラブルに発展しかねません。
窓口一本化のメリット:手続きと連絡の手間を最小限にする
なぜ、割高になる可能性があると分かっていても、多くの人が葬儀社経由を選ぶのでしょうか。
葬儀の打ち合わせ、親族への連絡、役所手続き…これらに忙殺される中で、さらに自分でネット検索をして、知らない遺品整理業者を3社呼んで相見積もりを取る。これは、正直言って正気の沙汰ではありません。私は当時、電話帳を見る気力さえありませんでした。
「いつもの担当者さん」に電話一本で済む。鍵の受け渡しも、事情を知っている葬儀社を通して行える。この「圧倒的な楽さ」と「精神的な安全」こそが、葬儀社依頼の最大の価値です。
ここで、当サイトが独自に行った調査データをご覧ください。実際に葬儀社経由で依頼した人が、何をメリットに感じたかが浮き彫りになっています。
【お片づけの窓口独自アンケート】
葬儀社の紹介で遺品整理を行った男女350名に「葬儀社経由で依頼して最も良かったこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 新たな業者を探す手間が省けた(58%)
- 葬儀スタッフとの信頼関係があったので安心できた(25%)
- 支払いを葬儀費用とまとめられた(12%)
- その他(5%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

やはり6割近くの方が、金銭的なメリットよりも「手間の削減」を重視していることがわかります。時間は金なり、と言いますが、葬儀直後の遺族にとっては「時間は命」に近い重みがあるのです。
賃貸・施設退去に伴う「葬儀直後の緊急整理」への対応力
私が特に葬儀社への相談をおすすめしたいケースがあります。それは、故人が賃貸アパートや老人ホームに住んでいて、「退去期限」が迫っている場合です。
私の知人の事例ですが、親が亡くなった翌日に管理会社から「月末までに部屋を空けてください。あと3日しかありません」と無慈悲な連絡が来たそうです。一般的な遺品整理業者は予約制が多く、「明日の午後から」といった急な依頼には対応できないことがあります。
しかし、葬儀社と提携している業者は、こうした「緊急対応」に慣れています。葬儀社側も「通夜・告別式の間に見積もりを取り、出棺後にすぐ作業に入る」といった、通常の業者では不可能な神がかったスケジュール調整をしてくれることがあります。
「故人の部屋の家賃をこれ以上払いたくない」「違約金を取られたくない」。こうした切迫した経済的な不安(安全の欲求)がある場合こそ、葬儀社のネットワーク力を使うべきです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

葬儀社に紹介を依頼する際は、必ず「万が一、作業中に床や壁が傷ついた場合、葬儀社さんが補償の窓口になってくれますか?」と聞いてみてください。ここで「契約は業者となので我々は関知しません」と突き放すような葬儀社であれば、紹介を受けるのは危険信号です。責任の所在を曖昧にしないことが、後のトラブルを防ぐ唯一の策ですよ。
参考リンク
万が一、葬儀社や紹介された業者との間で契約トラブルが発生した場合は、早めに消費生活センターへ相談しましょう。 独立行政法人 国民生活センター:葬儀サービスに関する相談
第2章:費用相場と中間マージンの実態

葬儀の打ち合わせで、棺のランクや返礼品の数を決めているとき、私は金銭感覚が麻痺していくのを感じました。「数十万円」という単位が飛び交う中で、数万円の差が誤差のように思えてくるのです。
しかし、冷静になって遺品整理の見積書を見たとき、我に返りました。「あれ? 片付けだけでこんなにかかるの?」
第2章では、多くの人が不透明さを感じる「お金」の話に切り込みます。葬儀社経由で頼むと高くなるというのは本当なのか、その「差額」は何の対価なのか。私が実際に複数の業者から話を聞いて分かった、業界の裏側とも言えるコストの仕組みを解説します。
自分で探す場合 vs 葬儀社紹介の場合の費用比較
ズバリ言いますが、葬儀社から紹介される遺品整理業者の料金は、自分でネットで探した専門業者に直接依頼するよりも、平均して2割から3割ほど割高になるケースがほとんどです。
例えば、2DKの遺品整理の相場が「15万円」だとしましょう。これを葬儀社経由で頼むと、「18万円〜20万円」程度の見積もりが出てくるイメージです。
「やっぱり損じゃないか」と思われるかもしれません。しかし、この上乗せ分は単なる搾取とは限りません。これは、言わば「安心料」と「マネジメント料」です。
自分で安い業者を探して依頼した場合、もしその業者が不法投棄をしたり、作業中に音信不通になったりしたら、そのリスクは全てあなたが負います。一方、葬儀社の紹介であれば、彼らが看板にかけて選定した業者であり、トラブル時には葬儀社が盾になってくれます。この「安全の欲求」を満たすための保険料として、差額を許容できるかが判断の分かれ目となります。
「紹介料(仲介手数料)」の仕組みと相場への影響
なぜ高くなるのか。その内訳の多くは、業者が葬儀社へ支払う「紹介手数料(バックマージン)」です。
構造はこうです。 あなたが葬儀社に20万円払うと、葬儀社はそこから手数料(例えば20%の4万円)を抜き、残りの16万円で業者に仕事を依頼します。業者は利益を確保するために、最初から手数料分を上乗せした見積もりを作成せざるを得ません。
これが悪いことだとは思いません。ホテルでマッサージを頼むと街中より高いのと同じ理屈です。ただ、問題なのは「その事実を知らされずに契約すること」です。
ここで、実際に消費者がこの価格差をどう受け止めているのか、当サイト独自の調査結果を見てみましょう。
【お片づけの窓口独自アンケート】
葬儀社紹介で遺品整理を行った男女350名に「費用対効果(コストパフォーマンス)への満足度」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 割高だったが、安心感を買ったと思えば納得できた(42%)
- 高すぎると感じ、後から直接頼めばよかったと後悔した(35%)
- 予想より安く済み、満足している(15%)
- その他(8%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約4割の方が「納得」している一方で、3割以上の方が「後悔」しています。この差は、契約前に「なぜこの金額なのか」という説明を十分に受けていたかどうかに起因していると考えられます。
支払い方法の柔軟性:葬儀費用との合算・分割・ローン利用
葬儀社経由の大きなメリットの一つが、支払い窓口の一本化です。
通常、遺品整理業者は「作業完了時に現金一括払い」か「後日振込」が基本です。しかし、葬儀後の物入りな時期に、まとまった現金を用意するのは大変です。
葬儀社を通すことで、以下のような柔軟な対応が可能になる場合があります。
- 葬儀費用と合算請求: 葬儀ローンに組み込んで分割払いにする。
- 相続財産からの支払い: 故人の口座凍結が解除された後に支払う猶予をもらう(葬儀社との信頼関係による)。
- クレジットカード払い: 個人商店のような整理業者では使えないカード決済が、大手葬儀社経由なら使える。
「今、手元に現金がない」という切実な悩みがある場合、多少割高でもキャッシュフローを優先するのは、賢い経営判断と言えます。
遺品買取の活用:骨董品や貴金属の売却益を葬儀代に充当できるか
ここが一番の盲点です。遺品の中には、古い掛け軸、着物、貴金属など、意外な値段がつくものがあります。
多くの遺品整理業者は「買取サービス」を行っており、「作業費」から「買取額」を差し引いて請求してくれます。
ただし、注意が必要です。葬儀社が紹介する業者が、必ずしも「目利き」であるとは限りません。本当は10万円の価値がある着物を、「古着なのでまとめて100円ですね」と査定されてしまうリスクがあります。
もし、明らかに価値がありそうなコレクション(骨董品、ブランド時計など)がある場合は、面倒でもそこだけは「買取専門店」に見てもらうのが正解です。全てを葬儀社任せにすると、便利さの代償として、本来得られたはずの利益を失う可能性があります。
【編集長からのワンポイントアドバイス】 見積もりを出されたら、必ず「この金額には買取分は反映されていますか?」と聞いてください。そして可能であれば、「相見積もり(あいみつもり)を取ってもいいですか?」と葬儀担当者に伝えてみましょう。嫌な顔をせず「どうぞ、比較して納得してから決めてください」と言ってくれる葬儀社こそ、本当に顧客ファーストの優良企業ですよ。
参考リンク
遺品整理サービスの料金トラブルや見積もりの見方については、国民生活センターの注意喚起も参考にしてください。 独立行政法人 国民生活センター:遺品整理サービスのトラブル
第3章:実施タイミングと法的な落とし穴

「おじいちゃんの部屋、カビ臭いから通夜の前になんとかしたいね」
親族の誰かが何気なく言ったこの一言が、あわや大惨事を招くところでした。これは私の実体験です。葬儀の日取りが決まり、親戚が集まる前に家を綺麗にしておきたいという「見栄」や「マナー」の気持ちは痛いほど分かります。
しかし、その善意の片付けが、法律という冷徹なルールの前では「取り返しのつかないミス」になることがあるのです。
第3章では、多くの人が見落としがちな「タイミング」と、それを誤った場合に襲いかかる「法的リスク」について解説します。ただの片付けの話ではありません。あなたの資産と家族の絆を守るための、極めて重要な話です。
遺品整理はいつやるべきか(葬儀前・葬儀直後・四十九日後)
仏教の慣習で言えば、遺品整理のベストタイミングは「四十九日(忌明け)の後」とされています。故人の魂がまだ家にいるとされる期間は、部屋をそのままにしておくのが供養だという考え方です。
しかし、現代の住宅事情がそれを許さないことが多々あります。 特に故人が「賃貸物件」や「公営住宅」に住んでいた場合、家賃の日割り計算や退去期限の関係で、葬儀が終わったその足で片付けを始めなければならないケースも珍しくありません。
ここで大切なのは、「心の整理」と「物理的な整理」を分けて考えることです。 もし時間が許す(持ち家である)なら、四十九日まで待つことを強くおすすめします。葬儀直後の興奮状態(アドレナリンが出ている状態)で片付けをすると、「見るのも辛い」と全ての物を捨ててしまい、数年後に「形見が何もない」と激しく後悔することがあるからです。
【注意】葬儀前の整理が「相続の単純承認」とみなされるリスク
ここが本記事で最も伝えたい「落とし穴」です。
もし故人に借金がある可能性が少しでもある場合、葬儀が終わるまで(相続放棄の手続きが終わるまで)、金銭的価値のある遺品には絶対に手を触れないでください。
民法には「単純承認」というルールがあります。相続人が故人の財産(遺品)を処分したり消費したりすると、「私は故人の借金も含めてすべて相続します」と認めたとみなされるのです。
- やってはいけない例:
- 故人の車や時計を売って現金化した
- 故人の預金を引き出して、自分の遊興費に使った
- まだ使える家具家電をリサイクルショップに売った
「部屋を片付けただけ」のつもりでも、売却益を得てしまうとアウトになる可能性があります。葬儀社や業者が「全部まとめて処分しますよ」と言ってきても、相続の方針が決まるまでは「待った」をかける勇気が必要です。
ここで、タイミングを誤ってトラブルになった人たちのリアルな声を見てみましょう。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を経験した男女350名に「整理の着手が早すぎて困ったこと・トラブルになったこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
親族と「捨てる・捨てない」で揉めた(45%)
重要な書類(保険証券や遺言書)を誤って破棄してしまった(30%)
相続手続き上の問題(単純承認の疑いなど)が発生した(15%)
その他(10%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

「親族との揉め事」が半数近くを占めています。自分一人の判断で先走って片付けることは、法的なリスクだけでなく、人間関係のリスクも大きいのです。
お焚き上げと副葬品:棺に入れられる物・入れられない物の選別
葬儀社に相談できることの大きなメリットの一つに、「副葬品(ふくそうひん)のアドバイス」があります。
故人が愛用していたメガネ、分厚い本、釣り竿…。これらを「棺に入れて一緒に燃やしてあげたい」と思うのが遺族の心情です。しかし、火葬場のルールや環境問題により、入れられないものが意外と多いのをご存知でしょうか。
- NGなことが多いもの:
- メガネ、腕時計(ガラスや金属が骨に付着したり、炉を傷める)
- 分厚い辞書や本(燃え残って大量の灰が出る)
- プラスチック製品、ビニール(有毒ガスが出る)
- ペースメーカー(爆発の危険があるため、必ず事前に申告が必要)
自分たちだけで整理していると、これらをうっかり棺に入れてしまい、火葬場で止められるという悲しい事態になりかねません。葬儀社スタッフと連携しながら、「これは棺へ」「これはお焚き上げ供養へ」「これは形見分けへ」と、仕分けをしながら整理を進めるのがスマートです。
葬儀社との契約期間と遺品整理サービスの有効期限
「葬儀プランに遺品整理の割引がついています」と言われた場合、その有効期限を必ず確認してください。
多くの葬儀社会員制度(互助会など)では、「葬儀後〇ヶ月以内の申し込みに限る」といった条件がついていることがあります。 「四十九日が過ぎて落ち着いてから頼もう」と思っていたら、期限が切れて割引が適用されなかった…というのでは目も当てられません。
特に、故人が亡くなってから葬儀までの期間は、頭が真っ白になっているため、契約書の細かい文字まで目に入りません。担当者に口頭で「いつまでなら安くなりますか?」とはっきり聞いて、スマホのメモに残しておきましょう。
【編集長からのワンポイントアドバイス】 遺品整理を始める前には、必ず「部屋全体の写真」を撮っておくことをおすすめします。これは思い出のためだけではありません。万が一、親族から「あそこにあった壺がない、お前が盗んだんじゃないか」と疑われた際や、相続放棄の手続きで家庭裁判所から説明を求められた際に、整理前の状態を証明する強力な証拠になります。自分の身を守るためにも、スマホでパシャリと一枚、忘れずに。
参考リンク
相続の単純承認や放棄に関する法的なルールについては、法務省や裁判所の公式情報も必ず確認してください。 裁判所:相続の放棄の申述
第4章:作業品質とトラブル回避(安心・安全)

「葬儀屋さんの紹介なら、変な業者は来ないですよね?」
これは私が相談を受けた際、最も多く聞かれる質問の一つです。 結論から申し上げます。「葬儀社の紹介=100%安心」とは言い切れません。
なぜなら、葬儀社と遺品整理業者の提携基準は会社によって千差万別だからです。厳格な審査を行っているところもあれば、「昔からの付き合いだから」という理由だけで提携している場合もあります。
第4章では、あなたの大切な実家や故人の部屋に「誰が入ってくるのか」、そして「もしものトラブル」にどう備えるべきかについて、業界の裏事情も含めて解説します。これは、大切な思い出を土足で踏みにじられないための防衛策です。
来るのは誰か? 紹介される業者の質と選定基準
葬儀社経由で依頼した際、当日に来るのは「葬儀社の社員」ではありません。多くの場合、提携している「遺品整理専門業者」や「不用品回収業者」のスタッフです。
ここで注意すべきは、その業者が「遺品整理のプロ」なのか、単なる「ゴミ処理屋」なのかという点です。 優良な葬儀社は、提携先を選ぶ際に「遺品整理士」の資格有無や、過去のクレーム履歴を厳しくチェックしています。彼らは自社のブランドイメージを何より大切にするため、質の悪い業者を紹介して評判を落とすことを極端に恐れるからです。
逆に言えば、葬儀社紹介の最大のメリットは、この**「葬儀社の目による一次スクリーニング(選別)」**が済んでいる点にあります。自分でネット検索して、玉石混交の中から優良業者を引き当てるギャンブルをするよりは、はるかに安全な選択肢と言えるでしょう。
貴重品の捜索と管理:通帳・権利書・現金の扱いにおける信頼性
遺品整理の現場では、家族さえ知らなかった「へそくり」や「隠し金庫」が出てくることが日常茶飯事です。 私が立ち会った現場でも、古い洋服のポケットから数万円が出てきたり、本の間に挟まった現金封筒が見つかったりしたことが何度もあります。
この時、質の低い業者だとどうなるか。悲しい現実ですが、「魔が差してポケットに入れてしまう」というリスクがゼロではありません。
信頼できる業者は、作業中に現金や貴重品(通帳、印鑑、貴金属)が見つかった場合、その場ですぐに作業を中断し、依頼主に「こちらが出てきました」と報告するルールを徹底しています。これを徹底できているかどうかが、プロとアマチュアの決定的な差です。
ここで、実際に消費者が抱えている「不信感」のリアルなデータを見てみましょう。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理業者を利用した男女350名に「作業中のスタッフの行動で、最も不安・不満に感じたこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
遺品を投げるように扱うなど、扱いが雑だった(48%)
私語が多く、遺族への配慮が欠けていると感じた(28%)
貴重品が見つかった時の報告が不明瞭だった(15%)
その他(9%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数の人が「物の扱い」に不満を持っています。故人の愛用品を「ゴミ」のように扱われることは、遺族にとって二度目の別れのような辛さを伴います。だからこそ、業者の「質」にはこだわる必要があるのです。
万が一の破損・紛失トラブル時の責任所在
「搬出中にタンスをぶつけて、廊下の壁に穴が開いた」 「あるはずの指輪が見当たらない」
こうしたトラブルが起きた時、葬儀社経由の依頼だと責任の所在が曖昧になりがちです。 葬儀社に文句を言っても「それは業者と話し合ってください」と逃げられ、業者に言うと「もともと傷ついていました」としらばっくれられる…。これが最悪のパターンです。
これを防ぐためには、契約前に必ず以下の2点を確認してください。
- 損害賠償保険への加入: その業者は、対物・対人の賠償保険に入っているか。
- 葬儀社の立ち位置: トラブル時に葬儀社は「仲裁」に入ってくれるのか。
優良な葬儀社であれば、「私たちが間に入って解決します」と明言してくれます。この一言があるかないかで、安心感は天と地ほど違います。
「ゴミ」ではなく「遺品」として扱う供養の心構えとプライバシー保護
遺品整理は、単なる不用品処分ではありません。故人の生きた証(あかし)を整理する儀式です。
私が以前取材した優良業者のスタッフは、靴下片方であっても、ゴミ袋に入れる前に一度手を合わせ、心の中で「お疲れ様でした」と声をかけていました。また、近隣住民から「何事か」とジロジロ見られないよう、遺品を段ボールに入れる際は中身が見えないように配慮し、トラックも社名が入っていない目立たない車両を使うなどの気遣いをしていました。
特に地方や古い団地では、「あそこの家、トラック一杯のゴミが出たわよ」と噂になることを嫌う遺族も多いです。プライバシーへの配慮(個人情報が書かれた書類の溶解処理など)が徹底されているかも、業者選びの重要なポイントです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】 どれだけ信頼できる業者だとしても、作業当日は**「最初と最後」だけでも必ず立ち会うこと**を強くおすすめします。「任せきり」にするのではなく、依頼主が現場に顔を出すことで、作業スタッフに良い意味での緊張感が生まれます。「ちゃんと見ていますよ」という無言のメッセージが、盗難や雑な作業を防ぐ最強の抑止力になるのです。また、スタッフに缶コーヒーの一本でも差し入れるだけで、彼らのモチベーションは劇的に変わり、より丁寧に作業してくれますよ。人間だもの。
参考リンク
遺品整理士認定協会では、優良な遺品整理業者の基準や認定を行っています。 一般社団法人 遺品整理士認定協会
第5章:最終判断フローチャート

ここまで、葬儀社経由で遺品整理を依頼するメリット、費用の仕組み、法的なリスク、そして業者の質について、裏表なくお伝えしてきました。
「情報はわかった。で、結局、私はどうすればいいの?」
この章では、そんなあなたの迷いを断ち切るための「最終判断基準」を提示します。これは、私が父を見送り、その後の片付けに奔走した経験から導き出した、後悔しないための決断ルートです。
あなたは「葬儀社に頼むべき」か「専門業者を探すべき」か
どちらが正解ということはありません。あなたの現在の状況(体力、時間、予算、心の余裕)によって、ベストな選択肢は変わります。以下の基準で、ご自身の状況を照らし合わせてみてください。
【A:葬儀社に依頼すべき人】
- 時間がとにかくない: 遠方に住んでいて、葬儀のために帰省している数日の間に決着をつけたい。
- 精神的に限界: 悲しみや疲れで、新しい業者を探したり、電話をしたりする気力が湧かない。
- 予算より安心: 数万円の差額よりも、トラブルに巻き込まれない「安心感」と「手間の削減」を優先したい。
- 葬儀担当者が優秀: 担当者との信頼関係がすでに構築できており、「この人の紹介なら間違いない」と思える。
【B:自分で専門業者を探すべき人】
- コストを抑えたい: 時間はあるので、3社ほど相見積もりをとって、少しでも安く済ませたい。
- 特殊な事情がある: ゴミ屋敷状態、孤独死による特殊清掃が必要、ペットの臭いがひどいなど、高度な専門技術が必要。
- こだわりが強い: 遺品の供養方法や、リサイクルへの回し方など、自分の納得いく方法で丁寧に仕分けてほしい。
- 骨董品が多い: 価値のあるコレクションがあり、専門家の適正な査定を受けたい。
私が父の時に選んだのは、実は【B】でした。母が「父さんの書斎だけは、私が納得するまでゆっくり片付けたい」と希望したからです。しかし、私の従兄弟が亡くなった時は、親族全員が遠方だったため、迷わず【A】を選びました。
「何を優先するか」を家族で話し合うこと。これが最初のステップです。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理業者を選定した際の「最終的な決め手」について男女350名に聞いたところ、以下の結果となりました。
担当者の対応が誠実で信頼できた(40%)
見積もり金額が最も安かった(35%)
希望する日程ですぐに対応してくれた(15%)
その他(10%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:自社へご相談いただいた遺品整理経験者

意外かもしれませんが、「金額」よりも「人(信頼)」で選んでいる人が多いのです。遺品整理は、他人が自分の聖域(家)に入り込む作業です。最後は「この人になら任せられる」という直感が、何よりの羅針盤になります。
葬儀担当者に確認すべきチェックリスト5選
もし、あなたが「葬儀社に紹介してもらおう」と決めたなら、契約書にハンコを押す前に、必ず担当者に以下の5つ質問を投げかけてください。これで相手の誠実さが分かります。
- 「見積もり後の追加請求は一切ありませんか?」 悪質な業者は、安い見積もりで作業を始め、終わってから「想定よりゴミが多かった」と追加料金を請求してきます。これを防ぐための言質(げんち)を取ってください。
- 「もし作業中に物が壊れたり無くなったりしたら、葬儀社さんが窓口になってくれますか?」 「契約は業者となので…」と逃げる担当者なら要注意。「私たちが責任を持って仲裁します」と言ってくれるかが分かれ目です。
- 「骨董品や貴金属の買取は、専門の査定員が見てくれますか?」 作業員がスマホで適当に調べるのではなく、古物商の許可を持ったプロが査定するかを確認しましょう。
- 「作業完了報告書(写真付き)はもらえますか?」 特に遠方に住んでいる場合、作業後の部屋がどうなったか、写真で報告をもらえる仕組みがあるか確認してください。
- 「キャンセル料はいつから発生しますか?」 とりあえず仮押さえをしたけれど、後で親族が「自分たちでやる」と言い出すこともあります。いつまでなら無料でキャンセルできるか、明確にしておきましょう。
【編集長からのワンポイントアドバイス】 たとえ葬儀社への依頼を決めていたとしても、担当者には「一応、親戚の知人の業者とも比較検討しています」と伝えておくのが賢いテクニックです。比較対象がいると匂わせるだけで、葬儀社側も業者側も、見積もり金額や対応に手抜きができなくなります。これは相手を疑うわけではなく、適度な緊張感を持たせて、より良いサービスを引き出すための交渉術ですよ。
参考リンク
契約の最終段階で迷ったら、消費者庁が公開している「消費者契約法」の基礎知識にも目を通しておくと安心です。 消費者庁:消費者契約法
最後に
ここまで全5章にわたりお読みいただき、本当にありがとうございました。
葬儀と遺品整理。それは人生でそう何度も経験することではない、非日常の連続です。だからこそ、分からなくて当たり前、不安で当たり前なのです。
どうか、一人で抱え込まないでください。葬儀社、専門業者、行政、そして私たちのような情報メディア。使えるものはすべて使って、あなた自身の心と体を守ってください。
部屋が綺麗になったとき、きっと故人との思い出が、悲しみから「感謝」へと変わる瞬間が訪れます。あなたの遺品整理が、後悔のない、温かい締めくくりとなることを、心より祈っております。








