遺品整理と不動産売却どっちが先?手出し0円で実家を片付ける術とは

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私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!

こんな人におすすめ

  • 実家を相続したが、荷物が多すぎて売却の準備が全く進まない人
  • 「片付け」と「不動産査定」、どちらを先にすべきか(損をしない手順)で迷っている人
  • 今の生活費で手一杯で、遺品整理にかけるまとまった現金が手元にない人
  • 遠方に住んでいて、何度も実家に通わずに最短ルートで家じまいを完了させたい人
  • 親族から「もっと高く売れたはずだ」と文句を言われるトラブルを絶対に避けたい人

この記事でわかること

  • 【手順】 不動産査定で足元を見られないための「最低限やっておくべき片付け」のライン
  • 【資金】 持ち出し金0円で乗り切る!「整理費用を売却益で後払い」にする裏ワザ
  • 【実務】 エアコン・仏壇・庭石…家の引き渡しで揉めないための**「残置物」の鉄則
  • 【選択】 「不動産会社」と「遺品整理業者」、どちらを窓口にすれば安く・丁寧に終わるか
  • 【事例】 ゴミ屋敷や資金不足を乗り越え、高値売却に成功した3つのリアルな体験談
目次

第1章:不動産売却の成否は「片付け」で決まる

「実家を売りたいけれど、中の荷物がそのままで…」 「不動産屋に見せる前に片付けるべき? それとも査定が先?」

これは、私たち「お片づけの窓口」に寄せられる相談の中で、間違いなくトップ3に入る悩みです。

結論から申し上げます。「ある程度の片付け」が先です。

なぜなら、ゴミや不用品が散乱した状態での不動産査定は、足元を見られる(安く買い叩かれる)最大のリスク要因だからです。私自身、過去に「現状のままで買い取りますよ」という甘い言葉に乗って売却し、後から「実は、自分で片付けていればあと200万円高く売れた」という事実を知って愕然とした方を見てきました。

この章では、不動産売却を有利に進めるための「片付けの戦略」について、現場のリアルな数字を交えて解説します。

1. 査定額が変わる?「遺品整理済み」と「荷物そのまま」の違い

人間は視覚情報に弱いです。それは、不動産のプロである査定員や、購入検討者であっても変わりません。

荷物が溢れかえっている部屋に入った瞬間、人は無意識に「狭い」「汚い」「メンテナンスにお金がかかりそう」というネガティブな印象を持ちます。これを払拭するのは容易ではありません。

実際、私たちの独自調査でも衝撃的な数字が出ています。

【お片づけの窓口独自アンケート】

実家を売却した経験のある男女412名に「売却活動中に『片付けておけばよかった』と後悔した瞬間」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 内覧に来た人が、荷物の多さに引いてしまい成約に至らなかった(54%)
  • 不動産会社から「残置物撤去費用」として相場より高い金額を提示された(28%)
  • 散らかった部屋の写真がネットに掲載され、問い合わせが少なかった(12%)
  • その他(6%)

※調査期間:2023年9月〜12月 対象:弊社へご相談いただいた不動産売却経験者

半数以上の方が、荷物が原因で「売れるチャンス」を逃しています。

特に注意したいのが「生活感」「床面積」です。 家具で床が見えない部屋は、実際の平米数よりも狭く感じます。逆に、遺品整理を終えてガランとした部屋は、驚くほど広く、明るく見えます。これが「査定額」や「買い手の購買意欲」に直結するのです。

不動産会社の中には「そのままでいいですよ」と言う営業マンもいますが、その言葉の裏には**「その分、価格を下げて早く売り捌きたい(あるいは業者が安く仕入れたい)」**という意図が隠れている場合があることを疑ってください。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

不動産査定の前には、せめて「玄関」と「水回り(キッチン・トイレ)」の荷物だけでも撤去してください。第一印象が良くなるだけでなく、配管などの設備状況が見やすくなり、査定員が「建物の状態」を正当に評価しやすくなります。「管理が行き届いている家だ」と思わせることが、高値売却への第一歩です。

2. 解体前提でも「整理」が必要なこれだけの理由

「どうせ古い家だから、解体して更地渡しにする予定だ。だから中身は分別せずに家ごと壊せばいいのでは?」

そう考える方も多いですが、ここには大きな落とし穴があります。これをやると、違法行為に問われたり、追加費用を請求されたりするリスクがあります。

法律とコストの壁

家屋を解体して出るゴミ(木くずやコンクリート)と、家の中にあった家具や服(一般廃棄物)は、処理のルートも法律も全く異なります。これらを混ぜて壊すことは「ミンチ解体」と呼ばれ、現在はリサイクル法などで厳しく禁止されています。

もし解体業者が「中身ごとやっておきますよ」と言っても、その処分費用は「産業廃棄物」として計上されるため、通常の遺品整理(一般廃棄物)として処理するよりも1.5倍〜2倍ほど割高になるケースがほとんどです。

地中トラブルの回避

また、私たちが現場でよく遭遇するのが、庭や床下に埋まっていた「予期せぬモノ」です。古い家では、昔の井戸や浄化槽、時には先代が埋めた廃棄物が出てくることがあります。 家の中の整理を丁寧に行う過程で、古い図面や覚書が見つかり、こうした「地中埋設物」の存在に気づくことがあります。これを知らずに更地渡しで契約し、後から発見されると、売主としての**「契約不適合責任」**を問われ、多額の賠償金を支払うことになりかねません。

参考リンク:環境省:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)

【編集長からのワンポイントアドバイス】

解体前提であっても、タンスの中身や押し入れの奥は必ずご自身(または遺品整理業者)の手で確認してください。解体業者の重機は、大切な権利書も、へそくりの現金も、思い出のアルバムも、区別なく粉砕してしまいます。「家は壊しても、記憶と資産は壊さない」という意識を持ちましょう。

3. 「とりあえず実家を空き家にする」リスクと管理の手間

遺品整理と不動産売却はエネルギーを使います。「四十九日が終わってから…」「一周忌が過ぎてから…」と先延ばしにし、とりあえず空き家のまま放置するのは危険です。

人が住まなくなった家は、驚くべきスピードで劣化します。 通風を行わないと湿気で畳はカビだらけになり、給排水管のトラップ(水封)が蒸発して下水の臭いが室内に充満します。こうなると、いざ売却しようとした時に「異臭がする物件」として敬遠されてしまいます。

さらに怖いのが「特定空家」への指定です。 倒壊の恐れや衛生上有害と自治体に判断されると、固定資産税の優遇措置(住宅用地特例)が外され、税金が最大6倍に跳ね上がります。

「まだ売る決心がつかない」という場合でも、まずは遺品整理を行い、家の中を空っぽにしておくこと。これが、家の寿命を延ばし、資産価値を維持するための最低条件です。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

誰も住んでいない実家の郵便受けがチラシで溢れていませんか?これは泥棒や放火魔に「ここは空き家です」と宣伝しているようなものです。遺品整理が終わるまでの間だけでも、郵便物の転送手続きを行うか、こまめに回収に行くようにしてください。防犯対策は資産を守る基本です。

【第1章のまとめ:あなたが今やるべきこと】

  1. 不動産会社を呼ぶ前に、最低限の片付け(特に床を見せること)を行う。
  2. 解体予定でも「中身ごと解体」は高コスト&リスク大。分別・整理は必須。
  3. 売却時期が決まっていなくても、家の劣化を防ぐために整理だけは進める。

次は、誰もが一番気になる「お金」の話です。手元に現金がなくても遺品整理と売却を進める裏ワザについて、第2章で詳しく解説します。

第2章:費用の悩み:「遺品整理代」をどう捻出するか

「実家は資産だと思っていたのに、いざ相続してみたら、片付け費用だけで100万円近い見積もりが出た…」

これは決して珍しい話ではありません。 実際に私が担当したお客様の中にも、ご自身の生活費とお子様の教育費で手一杯で、実家の整理に回せる現金が全くないという方がいらっしゃいました。その方は「借金をして片付けるべきか、相続放棄すべきか」と本気で思い詰めていました。

しかし、諦める必要はありません。不動産という「資産」がある以上、手出しの現金を最小限に、あるいはゼロにして乗り切る方法は存在します。

この章では、業界の裏側を知る立場から、賢い資金計画とコストダウンの秘訣をお伝えします。

1. 現金がなくても大丈夫?「売却代金での後払い」システム

通常、遺品整理業者への支払いは「作業完了時」または「前払い」が一般的です。しかし、不動産売却を前提としている場合、このルールを覆すことができます。

それは、「遺品整理費用の立替え(または精算)サービス」です。

これは、遺品整理にかかった費用を、不動産が売れた際に入ってくる「売却代金」から差し引いて支払うという仕組みです。 不動産会社と提携している遺品整理業者や、資金力のある整理業者であれば、このような相談に乗ってくれるケースが増えています。

仕組みはこうです

  1. 見積もり・契約: 支払いは「不動産売却時」とする特約を結ぶ。
  2. 作業実施: 先に部屋を空っぽにして、ピカピカの状態にする。
  3. 売却活動: 綺麗な状態で売りに出すため、早期売却・高値売却が狙える。
  4. 決済・引き渡し: 買主から代金が入金されたその場で、整理費用を支払う。

これにより、あなたは今の生活費を削ることなく、実家の整理を進めることができます。「卵が先か鶏が先か」で悩んでいた時間が、一気に動き出します。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

「後払い」を利用する際は、必ず契約書を確認してください。業者によっては、支払いまでの期間に「金利」や「事務手数料」を上乗せする場合や、「売却活動を当社(または指定の不動産会社)に任せること」を条件とする縛りがあることがあります。トータルコストで損をしないよう、条件面はシビアに見極めましょう。

2. 高額買取で整理費用を安くするテクニック

「うちはゴミ屋敷だから、売れるものなんて何もない」 そう決めつけるのはまだ早いです。あなたが「ゴミ」だと思っているものが、海外やコレクター市場では「お宝」かもしれません。

私は過去に、ご遺族が「全部捨ててください」と言ったホコリまみれのダンボール箱から、昭和初期のブリキのおもちゃを発見し、それが数万円で買い取られた瞬間を目撃しています。もし私たちが中を見ずに処分していたら、お客様は数万円をドブに捨て、さらに処分費まで払っていたことになります。

実際に、どのくらいの人が「買取」で恩恵を受けているのでしょうか。

【お片づけの窓口独自アンケート】

遺品整理と同時に「買取サービス」を利用した男女380名に、「最も意外な高値がついた(処分しなくてよかった)アイテム」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 昔のオーディオ機器・カメラ・レンズ(38%)
  • 昭和レトロな玩具・ゲーム機(25%)
  • 箱に入ったままの食器・タオル等の贈答品(20%)
  • その他(17%)

※調査期間:2023年5月〜8月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

注目すべきは、貴金属や骨董品だけでなく、「昔のオーディオ」や「ゲーム機」が上位に来ていることです。壊れていても部品取りとして需要があるため、絶対に自己判断で捨ててはいけません。

整理費用の総額から、これらの買取金額を差し引く(相殺する)ことで、請求額を数万円〜数十万円単位で圧縮できる可能性があります。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

不動産会社の営業マンは「家のプロ」ですが、「中古品のプロ」ではありません。彼らに残置物撤去を任せると、価値あるオーディオも全て「産業廃棄物」として有料処分されてしまう恐れがあります。必ず、解体や撤去の前に「遺品整理(古物商許可を持つ業者)」を入れて、価値あるモノを救出してください。

3. 見積もり比較:遺品整理業者経由 vs 不動産会社経由

最後に、誰に依頼するのが一番お得かという問題です。 「不動産会社に全部お任せ」は楽ですが、コスト面では注意が必要です。

不動産会社経由の「紹介」の罠

不動産会社が手配する片付け業者は、あくまで「下請け」です。 構造上、不動産会社が紹介料(マージン)を10%〜20%ほど乗せて、あなたに見積もりを提示するケースがあります。また、彼らの目的は「早く更地にすること」なので、細かな分別によるリサイクル(処分費の削減)よりも、重機で一気に壊す方法を選びがちで、結果として費用が高止まりすることがあります。

自分で遺品整理業者を探す場合

一方、あなたが直接、遺品整理業者と契約すれば、中間マージンは発生しません。 さらに、徹底した分別を行う業者であれば、廃棄物の量を減らし、資源リサイクルに回すことで処分費を安く抑えてくれます。

ただし、安さだけで業者を選ぶのは危険です。「無料回収」を謳うトラックや、相場より極端に安い業者は、回収した荷物を山林に捨てる「不法投棄」のリスクがあります。もし依頼主(あなた)の特定につながるものが捨てられていた場合、排出責任者として警察から連絡が来るのはあなたです。

必ず「一般廃棄物収集運搬業許可」を持っているか、または許可業者と提携しているかを確認してください。

参考リンク:環境省:廃棄物の適正処理案内

【編集長からのワンポイントアドバイス】

相見積もりを取るなら、「不動産会社紹介の業者」と「自分で探した遺品整理業者」の2社で比較するのがベストです。その際、単に合計金額を見るのではなく、「買取値引きがいくら入っているか」と「リサイクル家電の処理方法が明記されているか」をチェックしてください。明細の細かさは、業者の誠実さと比例します。

【第2章のまとめ:あなたが今やるべきこと】

  1. 手元に資金がないなら、恥ずかしがらずに「売却代金での精算」が可能か業者に相談する。
  2. 「ゴミ」と決める前に、オーディオやゲーム機などが残っていないか再確認する。
  3. 不動産会社に丸投げせず、分離発注(直接依頼)した場合の見積もりも取ってみる。

お金の不安が少し解消されたところで、次は「実作業」に入ります。 いざ片付けを始めると迷うのが、「エアコンは外す?」「仏壇はどうする?」といった具体的なモノの扱いです。第3章では、不動産取引特有の「残すべきモノ・捨てるべきモノ」のルールを徹底解説します。

第3章:実務編:家の引き渡しまでに「捨てるモノ・残すモノ」

「実家のエアコン、まだ新しいからもったいない。取り外して新居に持って行こう」 「庭の石灯籠なんて重いし、風情があるからそのままでいいよね?」

遺品整理の現場でよく聞く言葉ですが、これ、不動産売買契約においては「危険信号」です。

あなたが「ゴミ」だと思っているものが買主にとっては「欲しかった設備」かもしれませんし、逆に「価値ある庭木」だと思っているものが「撤去費用のかかる迷惑な残置物」かもしれません。 この認識のズレが、決済(引き渡し)当日のトラブルNo.1原因です。

ここでは、プロでも慎重になる「境界線上のアイテム」の扱い方を徹底解説します。

1. 不動産売買における「付帯設備」と「残置物」の線引き

家の売買契約を結ぶ際、必ず「付帯設備表」という書類を作成します。これは、「エアコン、給湯器、照明、カーテンなどを置いていくのか、撤去するのか」をマルバツで示した約束手形のようなものです。

最も多いトラブルは、売主(あなた)が「書面に記載したのに、うっかり捨ててしまった(持って行ってしまった)」ケース、あるいは「置いていくと書いたのに、壊れていた」ケースです。

実際、どれくらいの頻度で揉め事が起きているのでしょうか。

【お片づけの窓口独自アンケート】

実家を売却した後に「買主からクレームを受けた」経験がある男女210名に、「何が原因でトラブルになったか」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 「置いてあるはずのエアコンや照明が無かった(または壊れていた)」(45%)
  • 庭や物置の中に、撤去されていない不用品が残っていた(30%)
  • 鍵や住宅設備の取扱説明書が見当たらなかった(15%)
  • その他(10%)

※調査期間:2023年10月〜12月 対象:弊社へご相談いただいた不動産売却経験者

半数近くが、設備に関することでもめています。特に注意が必要なのが「照明器具」「エアコン」です。 あなたは「父が買った高価なシャンデリアだから形見として持ち帰りたい」と思うかもしれません。しかし、内覧時にそれが付いていて、付帯設備表にも「有」となっていれば、買主は「あのシャンデリア込みの価格」だと思って購入を決めています。

これを勝手に外すと、最悪の場合、同等品の弁償や、契約解除を求められる可能性があります。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

持ち出したい特定の設備(シャンデリアや高機能エアコン)がある場合は、媒介契約を結ぶ前の段階で不動産会社に伝え、販売図面に「※リビングの照明は撤去します」と明記してもらってください。「後で言えばいいや」は通用しません。契約書が全てです。

2. 処分に困る「家」特有の遺品の扱い方

家の中のゴミは袋詰めできますが、簡単には動かせない「重いモノ」や、宗教的な意味を持つ「神聖なモノ」はどうすべきでしょうか。

庭の植木・庭石・物置

これらは、原則として「更地渡し」なら全撤去、「現況渡し」ならそのままでOKですが、曖昧になりがちな部分です。 特に注意したいのが「庭石」と「大きな庭木」です。これらを撤去する場合、重機が必要になり、数十万円単位の追加費用がかかることがあります。

私が担当した案件で、売買契約後に「庭の大きな石は要らないから撤去して」と買主から言われ、売主様が泣く泣く30万円を支払って撤去した事例があります。契約前に「庭石・庭木は現況のまま引き渡す」という一文を特約に入れておくべきでした。

仏壇・神棚の魂抜き(閉眼供養)

家を解体する場合や、仏壇を処分する場合、物理的な処分の前に「魂抜き(閉眼供養)」という宗教儀式を行うのが一般的です。 これをせずにゴミとして出すと、収集業者に引き取りを拒否されることがあります(業者の心理的負担や、近隣住民からの通報リスクのため)。

お寺との付き合いがない(菩提寺がない)場合は、遺品整理業者が提携している僧侶を手配し、合同供養やお焚き上げを行ってくれるサービスを利用するのがスムーズです。

参考リンク:全日本仏教会:仏事に関するQ&A

【編集長からのワンポイントアドバイス】

神棚の中にある「お札」は、その神社にお返しするのがマナーですが、遠方でどこの神社か分からないことも多いでしょう。その場合、近くの神社の「古札納所」に納めても問題ありません。ただし、お寺のお札と神社のお札は混ぜないように注意してくださいね。

3. 発見率が高い「タンス預金」と「貴重品」の捜索

最後に、絶対に捨ててはいけないモノの話です。 遺品整理業者が入る前に、ご自身で探していただきたい場所があります。なぜなら、私たちプロでも発見が難しかったり、あるいは悪質な業者だとこっそりポケットに入れられてしまうリスクがあるからです。

【プロが見る「隠し場所」トップ3】

  1. 本の間・雑誌のページの間
    • へそくりやお札が挟まっている確率は異常に高いです。パラパラと漫画を読むように全てのページを確認してください。
  2. タンスの引き出しの「底の裏」や「背面の隙間」
    • 引き出しを抜いて、本体の奥を懐中電灯で照らしてください。封筒が落ちていることがよくあります。
  3. キッチンにある「使い古しの容器」
    • 茶筒、インスタントコーヒーの空き瓶、タッパーの中に、現金や貴金属が無造作に入っていることがあります。「汚いから」と中を見ずに捨てないでください。

また、不動産売却に必要な「権利書(登記済証)」「実測図」「建築確認済証」は、金庫ではなく、意外と本棚や仏壇の引き出し、あるいは冷蔵庫の上に置かれた箱の中に紛れていることがあります。これらを紛失すると、再発行はできず、司法書士による「本人確認情報」の作成に数万円〜十数万円の余計な費用がかかります。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

「もう全部見たから大丈夫」と思った後で、もう一度だけ、洋服のポケットの中を確認してください。特に、礼服や着物のたもとからは、数珠と一緒に数万円の現金が出てくることが本当によくあります。故人が最後に着たコートのポケットも要チェックです。

【第3章のまとめ:あなたが今やるべきこと】

  1. 「付帯設備表」と照らし合わせながら、エアコンや照明を勝手に撤去・処分しない。
  2. 庭石や物置の扱いは、契約前に不動産会社を通じて買主と明確に合意しておく。
  3. 業者を入れる前に、本の間とタンスの裏、洋服のポケットだけは自力で「捜索」する。

モノの仕分けが終われば、あとは誰に作業を任せるかです。

第4章では、数ある業者の中から「あなたの実家の状況に最適なパートナー」を選ぶための判断基準をお伝えします。窓口を一本化するメリットとデメリット、その真実に迫ります。

第4章:業者選びの最適解:誰に相談するのがスムーズか

「不動産屋さんが『片付けも全部うちでやりますよ』と言ってくれたから、そのままお願いした」

これは非常に多いパターンですが、実は一番「割高」になりやすいパターンでもあります。逆に、遺品整理業者に「家も買い取ります」と言われて安易に契約し、相場より数百万円も安く手放してしまった事例も見てきました。

大切なのは、「餅は餅屋」という原則を忘れず、しかし「連携」はスムーズに行うことです。あなたの状況に合わせて、どの窓口を叩くべきかを見極めましょう。

1. 「不動産会社」に丸投げするメリット・デメリット

不動産会社に遺品整理を依頼する最大のメリットは、圧倒的な「手間の少なさ」です。 鍵を一本渡せば、残置物の撤去から解体、測量、そして売却まで、全ての工程をワンストップで管理してくれます。忙しい現役世代にとっては、この「時間の節約」は大きな魅力でしょう。

しかし、デメリットは「コスト」「作業の雑さ」です。

多くの不動産会社にとって、片付けは「売るための準備作業(下準備)」に過ぎません。そのため、提携している解体業者や廃品回収業者に丸投げすることが多く、その際に見積もり額の10%〜20%程度を「紹介料(管理費)」として上乗せするのが業界の慣習です。

また、彼らのゴールは「空っぽにすること」なので、タンスの中の思い出の品や、貴重品の捜索といった「心のケア」はおざなりになりがちです。

ここで、実際に業者選びで後悔した人たちの声を見てみましょう。

【お片づけの窓口独自アンケート】

遺品整理を業者に依頼した男女330名に「業者選びで最も後悔している点」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 見積もりの安さで選んだが、追加料金を請求された(42%)
  • 不動産会社の紹介だったが、作業が雑で家財を壊された(31%)
  • 担当者の態度が悪く、近隣から苦情が来た(15%)
  • その他(12%)

※調査期間:2024年4月〜6月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

「紹介だから安心」とは限らないのが現実です。不動産会社経由で依頼する場合は、「どんな業者が来るのか(遺品整理の専門家か、ただの産廃業者か)」を必ず確認してください。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

不動産会社の営業マンに「御社には『遺品整理士』の資格を持っているスタッフはいますか?」と聞いてみてください。もし在籍していれば、その会社は遺品の扱いに対するリテラシーが高く、単なるゴミ処理ではない丁寧な対応が期待できます。資格の有無は、企業の姿勢を測る良いバロメーターです。

2. 「遺品整理業者」に不動産を紹介してもらうメリット・デメリット

最近増えているのが、遺品整理業者が窓口となり、提携している不動産会社や司法書士を紹介するパターンです。

このメリットは、「家の中身(遺品)」を最大限に尊重してくれる点です。 丁寧に分別を行い、リサイクルや買取を徹底することで、廃棄物処分費を削減し、トータルコストを抑える提案をしてくれます。また、権利証などの重要書類を見つけ出すスキルも彼らの方が上です。

デメリットは、紹介先の不動産会社の実力が「未知数」であることです。 遺品整理業者が連れてくる不動産会社が、あなたの実家エリアの相場に詳しいとは限りません。「仲が良いから」という理由だけで紹介された場合、販売力が弱く、なかなか売れないという事態に陥るリスクがあります。

これを防ぐためには、遺品整理業者自体の「質」を見極めることが重要です。特に違法業者には注意が必要です。

参考リンク:環境省:遺品整理等のサービスを利用される方へ(無許可業者への注意喚起)

【編集長からのワンポイントアドバイス】

遺品整理業者から不動産会社を紹介されたら、その場で契約せず、「一度持ち帰って検討します」と伝えてください。そして、その不動産会社の名前をネットで検索し、実績や口コミを調べましょう。また、必ず地元の不動産会社1社からも査定を取り、比較することが鉄則です。

3. 遠方・多忙な人向けの「立ち会い不要」サービス

「実家が遠すぎて、見積もりや作業のたびに帰省できない」
「仕事が忙しく、平日には全く時間が取れない」

そんな方のために、現在は多くの業者が「立ち会い不要プラン」を用意しています。

これは、郵送で鍵のやり取りを行い、見積もりから作業完了確認まで、すべてオンライン(LINEやメール、Zoom)で完結させるサービスです。

「見ていないところで手抜きをされるのではないか?」と不安に思うかもしれませんが、優良な業者はむしろ、立ち会いがない時こそ詳細な記録を残します。

  • 作業前の部屋の状況(写真・動画)
  • 発見された貴重品や思い出の品(写真で報告し、処分か配送かを指示)
  • 作業後の清掃状況(掃き掃除、水拭きの完了写真)

これらを「作業完了報告書」として提出してくれる業者を選べば、現地に行くよりも細かく状況を把握できます。

私が担当したお客様で、海外在住の方がいらっしゃいましたが、一度も帰国することなく、ビデオ通話だけで遺品の仕分け指示を行い、そのまま不動産売却まで完了させました。「便利な時代になった」と涙ながらに感謝されたことを覚えています。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

立ち会い不要で依頼する場合、契約書に「作業中に家屋に傷をつけた場合の補償」が明記されているかを確認してください。また、作業当日は近隣への挨拶回りも代行してもらうよう依頼しましょう。トラックの駐車位置などで近隣トラブルになると、その後の不動産売却に悪影響が出るからです。

【第4章のまとめ:あなたが今やるべきこと】

  1. 手間をお金で買うなら「不動産会社」、コストと丁寧さを取るなら「遺品整理業者」を窓口にする。
  2. 「紹介だから安心」と過信せず、紹介先の業者の質や資格(遺品整理士など)をチェックする。
  3. 遠方なら無理に帰省せず、ITを活用した「立ち会い不要サービス」の実績がある業者を選ぶ。

ここまで準備ができれば、あとは実行あるのみです。 最終章である第5章では、実際にこれまでのノウハウを使って、困難な状況(ゴミ屋敷、資金不足、遠距離)を乗り越えた具体的な成功事例をご紹介します。あなたの背中を押す、リアルな体験談です。

第5章:【体験談】整理から売却までを乗り切った事例集

「ゴミ屋敷すぎて、不動産屋さんに見せるのも恥ずかしい」 「田舎の古い家なんて、お金をかけて片付けても売れないんじゃないか」

現場では、そんな悲痛な声を毎日耳にします。しかし、断言します。「解決できない家」はありません。 どんなに荒れ果てた家でも、正しい手順とパートナーを選べば、必ず「資産」として生まれ変わり、きれいな形で手放すことができます。

ここでは、私が実際に携わった案件の中から、特に参考になる3つのケースをご紹介します。

1. ケース1:ゴミ屋敷状態から整理して、高値で売却できた事例

  • 【依頼者】 50代男性(会社員)
  • 【状況】 実家は築45年の戸建て。お母様が晩年、認知症を患い「セルフネグレクト」状態で、膝の高さまでゴミが堆積。

彼が最初に相談したのは、近所の解体業者でした。「中身ごと壊すしかない」と言われ、提示された見積もりは350万円。高すぎて諦めかけていたところ、私たちにご相談いただきました。

逆転のポイント

私たちはまず、家の「床」を出すことに集中しました。 ゴミ(生活ごみ)と資源(リサイクル品)を徹底的に分別。すると、ゴミの山の中から、お母様が隠していた「貴金属」と、お父様が集めていた「大量の古銭」が出てきました。

  • 遺品整理費用: 120万円(ゴミ撤去・清掃含む)
  • 買取金額: 45万円(貴金属・古銭・贈答品)
  • 実質負担: 75万円

解体業者の見積もり(350万円)の約5分の1で部屋が綺麗になりました。 さらに驚くべきはその後です。綺麗になった家を地元の不動産会社に見せたところ、「梁(はり)が立派な古民家風の作りなので、リノベーション物件として売り出しましょう」と提案され、解体せずに現状有姿で1,200万円で売却できたのです。

「ゴミだと思っていたものが、全て宝の山だった」と、男性が安堵の表情で語った言葉が忘れられません。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

ゴミ屋敷だからといって、いきなり「解体」を選ばないでください。まずは「分別」です。ゴミの中に埋もれているのは、現金だけではありません。「家のポテンシャル(素材としての良さ)」も埋もれています。それを掘り起こすのが、遺品整理の真の役割です。

2. ケース2:遺品整理費用が払えず、売却益で精算した事例

  • 【依頼者】 60代女性(パート勤務)
  • 【状況】 亡くなったお父様に借金があり、預貯金はほぼゼロ。相続したマンションを売りたいが、管理費の滞納もあり、手元の資金が全くない。

まさに「八方塞がり」の状態でした。彼女は「相続放棄」も考えましたが、不動産価値を調べると、借金を返済しても十分にお釣りが来ることが判明。そこで活用したのが「売却代金での完全後払い」です。

逆転のポイント

提携している不動産会社と三者間契約を結びました。 「遺品整理代金は、物件引き渡し時に司法書士立ち会いのもと、売買代金から直接業者へ振り込む」という特約を付けたのです。

これにより、女性は手出し0円で作業を依頼できました。 マンションは駅近だったため、整理完了からわずか2ヶ月で買い手がつき、無事に借金も完済。手元には数百万円の現金が残りました。「諦めて相続放棄していたら、このお金も、父との思い出も全て消えていた」と感謝されました。

ここで、実際にこの手法を選んだ人がどう感じているか、データを見てみましょう。

【お片づけの窓口独自アンケート】

遺品整理と不動産売却を同時に進めた男女290名に、「売却活動全体の満足度を左右した要因」を聞いたところ、以下の結果となりました。

  • 費用の持ち出しがなく、資金繰りの不安がなかった(41%)
  • 信頼できる担当者が、整理から売却まで窓口を一本化してくれた(28%)
  • 思ったよりも高く売れた(20%)
  • その他(11%)

※調査期間:2024年2月〜5月 対象:弊社へご相談いただいたサービス利用者

分析

「高く売れること」よりも、「手出しのお金がない安心感」の方が、精神的な満足度が高いことがわかります。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

お金がないからと、自分で少しずつ片付けようとして何年も空き家にしてしまうのが一番の損失です(固定資産税や管理費がかかり続けるため)。「後払い」という選択肢があることを知り、一日でも早く「資産の現金化」へ向けて動き出すことが、結果的に自分を助けます。

3. ケース3:遠方に住みながら、一度も帰省せずに家じまいを完了した事例

  • 【依頼者】 40代夫婦(共働き・東京在住)
  • 【状況】 実家は北海道。仕事が忙しく、子供の受験も重なり、物理的に帰省できない。しかし、雪が降る前に家を処分しないと、屋根の雪下ろし費用が発生してしまう。

彼らが選んだのは、徹底した「リモート遺品整理 × 不動産売却」でした。

逆転のポイント

鍵を郵送で預かり、Zoomを使って室内の仕分けを行いました。 「この棚の右側にあるアルバムは残して、配送してください」「左の洋服は全部寄付で」と、画面越しに細かく指示をいただきました。 発見された権利書や実印は、書留で即日返送。

片付けが終わった翌週には、地元の不動産会社が査定に入り、Web面談で媒介契約を締結。 結果、一度も北海道の土を踏むことなく、家の売却と引き渡しが完了しました。

「冷たいやり取りになるかと思ったが、報告の写真を見て、現地に行く以上に丁寧に扱ってくれたことが伝わった」という感想をいただきました。

参考リンク:国土交通省:ITを活用した重要事項説明等に関する取組み(IT重説) ※不動産契約もオンラインで完結できる時代になっています。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

「親不孝ではないか」と悩む必要はありません。無理をして帰省し、疲弊して家族仲が悪くなる方が、故人も悲しみます。テクノロジーとプロの手を借りて、スマートに、しかし心は込めて完了させる。これが現代の新しい親孝行の形です。

記事のまとめ:あなたの「新しい人生」を始めるために

全5章にわたり、遺品整理と不動産売却の真実をお伝えしてきました。

あなたが今、抱えている「家」と「モノ」は、過去の思い出であると同時に、あなたの未来を切り拓くための「資産」でもあります。

  1. まずは「床」が見えるまで片付ける。
  2. お金がなければ「後払い」や「買取」を活用する。
  3. 付帯設備や権利関係のルールを守る。
  4. 信頼できる専門家(遺品整理士×不動産知識)を味方につける。

このステップを踏めば、必ず出口は見えます。

マズローの欲求段階説で言えば、安全な住環境や資産を確保し(安全の欲求)、親族とのトラブルを避けて良好な関係を守り(愛と所属の欲求)、最後に「親の人生を立派に締めくくった」という達成感を得る(自己実現の欲求)。

この一連の作業は、単なる「お片付け」ではなく、あなた自身が次のステージへ進むための儀式なのです。

さあ、まずは最初の一歩を踏み出しましょう。 まずは、実家の「玄関」の写真を一枚撮ってみることから始めてみませんか?

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