
編集長
私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!
こんな人におすすめ
- 親や親族が一人暮らしで亡くなり、大量の家財を前に途方に暮れている
- 「勝手に捨てると借金を背負う」という法的なリスク(相続の罠)を回避したい
- 遠方・多忙などの理由で、自分たちでやるか業者に頼むか迷っている
- 兄弟・親族間でお金や手間の押し付け合いなどのトラブルになりたくない
この記事でわかること
- 【初動】 葬儀後1週間以内に「止めるべき契約」と「絶対に捨ててはいけないモノ」
- 【捜索】 現金・権利書・へそくりがザクザク出てくる「プロの探索ポイントTOP5」
- 【費用】 遺品整理のリアルな相場と、凍結された親の口座から費用を出す合法的な方法
- 【業者】 悪徳業者を排除し、追加料金なしで依頼するための「魔法の質問」
1.【最重要】ゴミ袋を広げる前に!「相続」の落とし穴

「独居していた叔父が亡くなった。賃貸だから早く片付けないと家賃がかかる」
「身寄りは自分しかいないから、とりあえず今度の週末にゴミ袋を持って行こう」
ちょっと待ってください。そのゴミ袋、まだ広げないでください。
実は、私が以前相談を受けたケースで、良かれと思って亡くなったお父様の部屋を片付け、リサイクルショップに不用品を売った直後に「300万円の借金」の督促状が出てきた方がいました。
彼は部屋を片付けてしまったがために、「借金を相続放棄する権利」を失ってしまったのです。
独居老人の遺品整理で最初にやるべきは、掃除ではありません。「現状維持」です。なぜ、うかつに手を出してはいけないのか。法律の落とし穴と、最初にやるべき鉄則を解説します。
まだ捨てるな! 遺品に触ると「借金」も背負うことになる?
なぜ、掃除をしてはいけないのでしょうか。 日本の法律(民法)には「単純承認」というルールがあるからです。
これは簡単に言うと、「故人の財産(遺品)を処分したり消費したりした時点で、あなたは『プラスの財産もマイナスの財産(借金)もすべて受け入れます』と意思表示したとみなす」という決まりです。
独居のご老人は、家族に心配をかけまいと借金を隠しているケースが意外と多いです。
- 換金価値のあるものを売った
- 家具を粗大ゴミとして捨てた
- 預金を勝手に引き出して使った
- 故人の車を自分の名義に変えた
これらを行うと、後から「やっぱり借金が怖いから相続放棄します」と言っても、裁判所は認めてくれません。「だって、あなたはもうオーナーのように振る舞って処分しましたよね?」と判断されるからです。
まずは「借金がないか」が確定するまで、部屋の物は「動かさない、捨てない、売らない」が鉄則です。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

焦って片付けようとする親族には、「法律上、下手に触ると借金を背負うことになるらしいから、調査が終わるまで待とう」と伝えてください。「面倒だからやりたくない」と言うと角が立ちますが、「借金リスク」の話なら誰もが納得して足を止めますよ。
「相続放棄」をする可能性がある場合の立ち入り禁止ルール
もし、故人と疎遠で「関わりたくない」あるいは「明らかに借金がある」場合は、「相続放棄」を検討することになります。
相続放棄をするつもりなら、家の敷居をまたぐことすら慎重になるべきです。 形見分けとして「アルバム1冊」「古びた時計1つ」を持ち帰っただけでも、債権者(お金を貸している側)から「遺品を持ち出した=単純承認だ」と詰め寄られるリスクがあるからです。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を経験した男女350名に「整理着手前に確認せずに後悔したこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 故人の隠れた借金や未払金が後から発覚した(58%)
- 重要書類(権利書など)をゴミと間違えて捨ててしまった(25%)
- 親族間で「誰がやるか」の合意が取れておらず揉めた(12%)
- その他(5%)
※調査期間:2023年8月〜10月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

この結果からもわかる通り、半数以上の方が「見えないお金の問題」に直面しています。まずは「片付ける」のではなく「調査する」ことが最優先です。
遺言書の有無を確認する場所と開封のルール(検認とは)
部屋に入って最初に探すべきは、通帳でも現金でもなく「遺言書」です。 なぜなら、遺言書の内容によっては、誰が財産を受け継ぐかが変わり、今そこにいるあなたが片付ける権限すら持っていない可能性があるからです。
よくある隠し場所
- 仏壇の引き出し
- 金庫
- 鍵付きの机
- タンスの「着物のたとう紙」の間
もし封筒を見つけたら
絶対にその場で開封してはいけません。 封印のある遺言書を勝手に開けると、5万円以下の過料に処せられるだけでなく、変造や隠匿を疑われて相続争いの火種になります。
見つけたら、そのまま家庭裁判所に持っていき、相続人立会いのもとで開封する「検認」という手続きが必要です。
参照:遺言書の検認 | 裁判所
親族会議:誰が「代表者」になるか決める際の注意点
「長男だから」「近くに住んでいるから」という理由だけで、なし崩し的にあなたが担当者になっていませんか?
独居老人の遺品整理は、数十万円の費用と、膨大な手続きの手間がかかります。これを一人で背負うと、必ず後で「なんで自分だけが」という不満が爆発します。
作業を始める前に、LINEグループでも良いので以下の3点を親族間で合意してください。
- 誰がリーダー(窓口)になるか
- 費用は誰が立て替えるか(後で遺産から引くのか)
- 万が一、借金が出た場合は全員で放棄するか
私の経験上、「お金の話は汚いから」と先送りにした家族ほど、整理が終わった後に骨肉の争いを繰り広げています。 今はまだ、部屋の中にあるのは「ゴミ」ではなく「故人の人生そのもの」であり「資産」です。
まずは「誰も手を出さない」という合意形成から始めてください。実際の片付けは、その次です。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

遠方の親族には、部屋の現状を写真や動画で送って「共有」しておきましょう。「思ったより綺麗だね」などと無責任なことを言う人も、山積みの荷物の写真を見れば現実を理解してくれます。事実を共有することが、あなたを守る盾になります。
次の章では、誰もが一番気になる「お金」の話。 実際に片付け費用はいくらかかるのか? 誰が払うべきなのか? について、リアルな数字を交えて解説します。
2.【費用】片付け代は誰が払う? 立て替えと精算

「業者に頼むと数十万円かかるって聞いたけど、本当?」
「親の口座は凍結されているはず。とりあえず自分が立て替えて、後で他の兄弟に請求できるの?」
第1章で「法的リスク」を回避したら、次に直面するのは、この「生々しいお金の問題」です。
独居だった叔母の整理をした際、私も一番頭を悩ませたのがここでした。最初は「まあ、かかった分は遺産から引けばいいか」と軽く考えていましたが、実際には「誰が一時負担するか」で親族間の空気がピリついたのを覚えています。
この章では、業者費用のリアルな相場と、凍結された親の口座からお金を引き出すための合法的な裏技(制度)、そして家賃などのランニングコストについて解説します。
独居老人宅(2DK〜一軒家)の片付け費用相場リスト
まずは敵を知ること、つまり「いくらかかるか」の相場を把握しましょう。
独居の方の場合、生活感そのままで亡くなるケースが多く、荷物量は「多め」になる傾向があります。
以下は、私が過去に数百件の見積もりを見てきた経験と、業界の平均的な価格帯です。
| 間取り | 費用相場 | 作業人数 | 備考 |
| 1R / 1K | 3万〜8万円 | 1〜2名 | 荷物が少ない場合。ゴミ屋敷化していると20万超えも。 |
| 1DK / 2K | 9万〜18万円 | 2〜3名 | 団地などに多いサイズ。階段作業の有無で料金変動。 |
| 2DK / 2LDK | 12万〜30万円 | 3〜4名 | 夫婦で住んでいた荷物がそのまま残っていると高額に。 |
| 3DK以上(一軒家) | 20万〜60万円〜 | 4名〜 | 庭の残置物、倉庫、家電リサイクル料などが加算される。 |
「高い!」と思いましたか?
しかし、これには「分別作業費」「搬出作業費」「トラック代」「処分場への廃棄費用(これが一番高い)」が含まれています。
特に独居高齢者の家は、長年の「もったいない精神」で、押し入れの奥まで物が詰まっていることがほとんど。自分でやれば無料ですが、週末ごとの作業で半年かかるとしたら、その労力を時給換算すると業者の方が安いケースも多々あります。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

見積もりを取る時は、必ず「追加料金が発生する条件」を聞いてください。「当日に荷物が増えていなければ追加はありません」と言質を取るのがプロの依頼方法です。悪徳業者は、作業後に「想定より重かった」などと言って請求額を吊り上げます。
親の預金口座は凍結される? 葬儀・整理費用の引き出し方
「費用は親の貯金から出したい」
誰もがそう思いますが、銀行は名義人の死亡を知った時点で口座を凍結します。引き出しはもちろん、公共料金の引き落としもストップします。
昔は、遺産分割協議(誰がいくら貰うか全員でハンコを押して決める会議)が終わるまで、1円も引き出せませんでした。しかし、それでは葬儀代も払えない人が続出し、2019年の民法改正でルールが変わりました。
「遺産分割前の仮払い制度」を活用しよう
現在は、遺産分割協議が終わる前でも、一定額までなら窓口で払い戻しを受けることができます。
- 引き出せる額の上限:
相続開始時の預金残高 × 1/3 × その人の法定相続分
(※ただし、1つの金融機関につき150万円が上限)
例えば、預金が600万円あり、あなたが長男(相続分1/2)の場合、
600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円
までなら、単独で引き出して、片付け費用や葬儀代に充てることができます。この制度を使えば、あなたの財布から数十万円を持ち出す「持ち出しリスク」を回避できます。
参照:遺産分割前の相続預金の払戻し制度 – 一般社団法人全国銀行協会
空き家期間中の「家賃」と「固定資産税」は誰の負担か
片付けが終わるまでの間も、チャリンチャリンと課金され続けるのが「家賃」や「管理費」です。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を経験した男女350名に「整理のタイミングで最も金銭的に損をしたと感じたこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 解約予告が遅れて余分な家賃が発生した(62%)
- 急いで業者を手配したため割高な料金になった(21%)
- 解約した後に必要な書類が見つかり再発行手数料がかかった(10%)
- その他(7%)
※調査期間:2024年1月〜3月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

アンケート結果の通り、6割以上の方が「家賃」で損をしています。
賃貸契約の多くは「解約予告は1ヶ月前まで」となっています。つまり、今日解約の電話を入れても、来月の今日までの家賃は発生するのです。
手続きが遅れれば遅れるほど、誰も住んでいない部屋に数万円を払い続けることになります。この費用は原則、「法定相続人が全員で負担(法定相続分に応じて分割)」すべき債務となりますが、現実的には立て替えた人が損をするケースが後を絶ちません。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

賃貸の場合、不動産屋への連絡は「死亡診断書」が出たらすぐに入れてください。「片付いてから連絡しよう」では遅すぎます。「亡くなったので退去します。片付けの目処は◯日です」と、まずは解約の意思表示(予告)を先に済ませるのが、無駄な出費を抑える鉄則です。
兄弟・親族間での費用の分担トラブルを防ぐコツ
最後に、一番厄介な人間関係の話を。
「お兄ちゃんが勝手に高い業者頼んだんでしょ?」と言われないために、以下の3つを徹底してください。
- 見積書は3社取り、LINEで共有して投票で決める
- 「A社は安いけど対応が雑そう、B社は高いけど丁寧。どっちがいい?」と相談のプロセスを踏むことで、責任を分散させます。
- 領収書の宛名は「故人の名前」か「相続人代表者」で統一
- 自分のお金で立て替えたとしても、それは「遺産整理のための経費」です。後で精算する際の確実な証拠になります。
- 「財産目録」に未払い費用として記載する
- 遺産分割協議書を作る際、プラスの財産だけでなく、あなたが立て替えた「片付け費用」「未払い家賃」もマイナスの財産として計上し、その分を多めに相続できるよう調整します。
「お金の話は早めにする」。これが、亡くなった方への供養にもなり、残された親族の絆を守る唯一の方法です。
さて、お金の算段がついたら、いよいよ部屋に入ります。
しかし、いきなりゴミ袋に入れてはいけません。次章では、「初動の1週間でやるべきこと・やってはいけないこと」について、時系列で解説します。ライフラインの解約にも、実は「順番」があるのです。
3.【初動】最初の1週間でやるべきこと・やってはいけないこと

「親が亡くなった。悲しむ暇もなく葬儀の手配、そして空き家になった実家のこと…何から手をつければいいの?」
葬儀直後の1週間は、まさに「カオス(混沌)」です。 私も祖母が亡くなった際、思考停止のまま手当たり次第に電話をかけまくり、必要な契約まで解約してしまって、後で復旧に数万円取られるという痛いミスを犯しました。
この「魔の1週間」を乗り切るには、「止めるもの」と「残すもの」の優先順位がすべてです。 感情を一旦脇に置き、事務的に淡々とこなすべき「初動リスト」を公開します。
解約してはいけないライフラインと、即止めるべきもの
「誰も住まないんだから、全部解約すればいいんでしょ?」
これが最大の落とし穴です。遺品整理(片付け)は、ライフラインがないと地獄を見ます。
【絶対に解約してはいけないもの】
- 電気
- 理由: 暗闇の中で遺品の仕分けはできません。特に夏場のエアコン、冬場の暖房がない作業は命に関わります。また、掃除機も使えません。
- 水道
- 理由: トイレ掃除、雑巾掛け、手洗い。掃除をするのに水は必須です。これがないと、業者にお願いする際も断られるか、別途水を用意する費用が発生します。
【すぐに解約・停止すべきもの】
- ガス
- お湯が出なくても掃除はできます。基本料金が高いので、即解約でOKです。
- 新聞・牛乳などの配達サービス
- ポストに新聞がたまると「ここは空き家です」と泥棒に宣伝しているようなものです。防犯上、電話一本ですぐに止めてください。
- インターネット・固定電話
- これらも基本不要です。ただし、NTTの固定電話権などは資産価値がある場合もあるので、解約ではなく「休止」にする選択肢もあります。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

電気を止める際、絶対に忘れてはいけないのが「冷蔵庫の中身」です。中身が入ったままブレーカーを落とすと、数日で食品が腐敗し、強烈な悪臭と「うじ」が発生します。電気を止めるなら、その前に必ず冷蔵庫を空っぽにして、扉を開け放っておいてください。これは鉄則です。
警察・管理会社・大家さんへの連絡と立ち合いの流れ
独居の方が賃貸物件で亡くなった場合、誰に連絡するかでその後の展開が変わります。
もし、発見が早く「病院で亡くなった」なら、まずは管理会社(または大家さん)へ連絡です。 「契約者が亡くなったため、退去します」と伝え、解約手続きと明け渡しの期限を確認します。
一方、自宅で亡くなっているのが見つかった(孤独死の)場合は、まず「警察」です。 絶対に遺体を動かしたり、部屋の物を触ったりしてはいけません。警察の現場検証が終わり、「入室許可」が出るまでは、部屋は封鎖されます。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を経験した男女350名に「整理の初動段階(1週間以内)で失敗したこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 冷蔵庫の中身を放置したまま電気を止め、腐敗させた(42%)
- 新聞や郵便物を止め忘れ、ポストが溢れて防犯上危険だった(28%)
- 管理会社への連絡が遅れ、翌月分の家賃が発生した(18%)
- その他(12%)
※調査期間:2023年5月〜7月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

やはり、ライフラインと連絡のミスで「二次被害」を出している方が多いのが現実です。
ご近所への挨拶:「何と言って」挨拶回りをすべきか
意外と忘れがちなのが、両隣や上下階への挨拶です。 独居老人の場合、近隣住民が異変(郵便物が溜まっているなど)に気づいてくれていたケースも多々あります。
また、これから片付けをするにあたり、トラックの駐車や搬出の騒音で必ず迷惑をかけます。トラブルを未然に防ぐため、以下のテンプレートを使って挨拶しておきましょう。
【挨拶の文例】
「〇〇号室に住んでおりました(故人名)の親族の(自分の名前)です。 生前は叔父が大変お世話になりました。 先日、病院にて息を引き取りましたので、これから少しずつ部屋の片付けを行わせていただきます。 トラックの出入りや足音などで、〇日〜〇日の間、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、何卒よろしくお願いいたします」
手土産は500円〜1000円程度の洗剤やお菓子で十分です。 「ちゃんと挨拶に来るしっかりした親族がいる」とわかれば、近隣の方も安心し、多少の音には目をつぶってくれます。
郵便物の転送手続き:借金の督促状を見逃さないために
初動の事務手続きで最も重要なのが、「郵便物の転送届」です。 故人宛の郵便物を、あなたの自宅に転送されるように郵便局で手続きをしてください。
なぜこれが重要かというと、郵便物は「借金と資産の探知機」だからです。
- クレジットカードの請求書 → 未払いの借金がわかる
- 固定資産税の通知書 → 知らなかった山林や土地が見つかる
- 保険会社からの通知 → 受け取れる保険金が見つかる
これらは全て郵便で来ます。空き家のポストに入れっぱなしにすると、重要な財産を捨てることになったり、知らぬ間に借金の利息が膨らんだりします。
手続きに必要なもの
- 故人と届出人(あなた)の関係がわかる書類(戸籍謄本など)
- 故人の死亡が確認できる書類(除籍謄本、死亡診断書のコピーなど)
- あなたの本人確認書類(免許証など)
※窓口で「転居届」を出す際に、「死亡による転送です」と事情を説明すればスムーズです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

転送期間は「1年間」です。1年経てば大抵の手続きは終わりますが、念のため期間が切れる前にもう一度更新手続きをしておくと安心です。郵便物は「情報の宝庫」。一通たりとも見逃さない執念を持ってください。
ライフラインを確保し、連絡も済ませ、郵便物も手元に来るようになった。 これでようやく、安心して部屋の探索に入れます。 次の章では、いよいよ実地調査。「プロが教える、高齢者がお金を隠しがちな場所トップ5」を暴露します。ここを見ずに業者を入れると、数十万円をドブに捨てることになりますよ。
4.【捜索】プロが教える「隠し資産」の探し場所

「部屋中ゴミだらけで、どこに何があるかさっぱりわからない」 「業者に全部任せたいけど、現金ごと捨てられたらどうしよう…」
さあ、ここからは「宝探し」の時間です。 独居の高齢者は、防犯意識の強さや銀行への不信感から、信じられない場所に大金を隠していることがよくあります。
実際に私が立ち会った現場でも、ボロボロの古新聞の束から300万円の現金が出てきたり、使い古した薬箱の中から土地の権利書が出てきたりした経験があります。これらを「ゴミ」だと思って捨てていたら…と想像するとゾッとしますよね。
業者に依頼する前、あるいは依頼した後でも、必ずあなたが自分の目でチェックすべき「魔の隠し場所」をランキング形式で伝授します。
通帳・ハンコ・権利書:高齢者が隠しがちな場所トップ5
泥棒対策のつもりなのか、それとも認知症の影響なのか。高齢者の「隠し場所」には一定の法則があります。ここだけは絶対にチェックしてください。
- 仏壇の「引き出し」と「位牌の裏」
- ご先祖様が守ってくれると信じているのか、最も高確率で現金や通帳があります。引き出しのさらに奥、二重底になっていないかも見てください。
- タンスの「着物」と「敷紙の下」
- 着物の「たとう紙」の間は定番です。また、引き出しの底に敷いてある新聞紙の下に、万札が綺麗に並べられていることもあります。
- 冷蔵庫・米びつの中
- 「火事になっても燃えないから」という理由で、冷蔵庫の野菜室の奥や、米びつの中に印鑑や貴金属を入れている方がいます。食品と一緒に捨てないで!
- 本棚の「百科事典」や「アルバム」の間
- 分厚い本は隠し場所の定番。パラパラとめくるだけでなく、背表紙とページの間も要チェックです。
- 神棚の上
- 高いところにあるので見落としがちですが、封筒に入った現金が祀られていることがあります。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

探索する時は、必ず「軍手」と「マスク」を着用してください。しかし、手先の感覚が鈍るような厚手の軍手はNGです。紙幣の感触、封筒の厚みを指先で感じるために、滑り止め付きの薄手の手袋をおすすめします。「違和感」を見逃さないことが、財産を守るコツです。
タンス預金・へそくり:捨てがちな古封筒や本の間をチェック
「まさかこんなところから?」 遺品整理は、常識を捨てることから始まります。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を経験した男女350名に「整理中に予期せぬ場所から現金・貴重品が見つかった場所」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 本、雑誌、新聞の間に挟まっていた(45%)
- 衣類(ポケット、靴下の中)に入っていた(30%)
- 台所用品(タッパー、茶筒、冷蔵庫)の中(15%)
- その他(布団の下、カーペットの下など)(10%)
※調査期間:2023年9月〜11月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

なんと約半数の方が「紙類の間」から発見しています。 古新聞や古雑誌を紐で縛って捨てる前に、必ず一度逆さまにしてバサバサと振ってください。封筒がポロッと落ちてくるかもしれません。
また「古い背広やコートのポケット」も盲点です。クリーニングの袋がかかったままでも、ポケットに数万円入ったまま放置されているケースは山ほどあります。
危険な契約書類:連帯保証人の書類や未払いの請求書の見つけ方
資産を探すのと同じくらい重要なのが、「負の遺産」を見つけることです。 特に恐ろしいのが「連帯保証人」の契約書です。
- 探すべきキーワード: 「契約書」「覚書」「金銭消費貸借契約証書」「督促状」「催告書」
これらが一番見つかりやすいのは、意外にも「とっ散らかったテーブルの上」や「電話台の周り」です。 高齢者は、大事な書類や返事をしなきゃいけない書類を、忘れないように目につく場所に置く癖があります。
電話の横にあるメモ書き、レシートの山、カレンダーの裏の書き込み。これらはゴミではありません。故人の行動履歴を示す重要な「証拠」です。全部箱に入れて確保しておきましょう。
デジタル遺品:スマホやパソコンのパスワード解除と契約確認
現代の遺品整理で避けて通れないのが、「デジタル遺品」です。 通帳が見つからなくても、「ネット銀行」に数千万円入っている可能性だってあります。
- スマホのチェックポイント:
- 銀行アプリ、証券アプリが入っていないか
- 月額課金(サブスク)のメールが来ていないか
- 「PayPay」などの電子マネー残高
パスワードがわからなくて開けない場合は、無理に解除しようとせず(ロックされると厄介です)、携帯キャリアのショップに相談するか、死亡診断書を持って解約手続きを行うのが安全です。 また、パソコンの横に「パスワード」と書かれた付箋やノートがないかも探してください。アナログなメモが最強の鍵になります。
参照:デジタル遺品とは?トラブル事例や生前の対策 – 総務省
探索作業は、故人との最後の対話でもあります。 「こんなものを大切にしていたのか」「こんなにお金を貯めてくれていたのか」 そんな発見が、あなたの心の整理にも繋がります。
さて、めぼしい貴重品を救出したら、次はいよいよ部屋を埋め尽くすモノたちとの決別です。
「思い出の品」と「ただのゴミ」。この境界線はどこにあるのでしょうか? 第5章では、誰もが悩み、手が止まってしまう「分別の基準」について、心を鬼にして解説します。
5.【分別】「思い出」と「ゴミ」の仕分け基準

「これも思い出、あれも大事…全然捨てられない!」
「親が大切にしていた日本人形、ゴミ袋に入れるなんてバチが当たりそう…」
遺品整理で最も時間がかかり、そして心が折れるのがこの【仕分け作業】です。 私の実家の整理でも、母が書き溜めた日記や、旅行先で買った謎の置物を前にして、丸一日手が止まってしまったことがあります。
しかし、心を鬼にして言います。 ここを乗り越えないと、家賃と管理費であなたの資産が食いつぶされます。
何を残して、何を捨てるべきか。感情論ではなく、プロの視点で「機械的に判断できる基準」をお渡しします。
残すべきものリスト:相続手続きに必要な重要書類一覧
まずは、感情抜きに【物理的に残さなければならない書類】を確保しましょう。これらを間違って捨てると、役所や銀行の手続きで地獄を見ることになります。
以下のリストにあるものは、専用の段ボール箱(通称「重要書類BOX」)を一つ作り、無条件で放り込んでください。
【絶対に捨ててはいけない重要書類リスト】
- 遺言書(見つけたら開封厳禁)
- 通帳・キャッシュカード・印鑑(銀行印・実印・認印すべて)
- 不動産権利書(登記済証・登記識別情報通知)
- 年金手帳・年金証書
- 保険証券(生命保険・火災保険などすべて)
- 公共料金の領収書・検針票(お客様番号がわかる最新のもの)
- 賃貸借契約書(賃貸の場合)
- マイナンバーカード・通知カード
- 古い戸籍謄本や除籍謄本(過去に取ったものがあれば役立ちます)
- 借用書・契約書(借金の証拠になるものも含めて)
これらはすべて、手続きが終わるまで保管です。「期限切れかな?」と思っても、念のため残しておくのが正解です。
捨てていいものリスト:価値がありそうで値段がつかない昭和の家財
次に、親世代(昭和世代)の家には必ずあるけれど、残念ながら今の時代では【ほぼ価値がない(値段がつかない)もの】です。 期待してリサイクルショップに持ち込んでも、「引き取り料がかかります」と言われて赤字になる代表格を紹介します。
- 婚礼家具(桐のタンス・巨大な洋服ダンス)
- 「嫁入り道具だから高かったはず」と言われますが、現代の住宅事情(クローゼット中心)に合わず、需要がほぼゼロです。買取不可がほとんどです。
- 黒塗りの座卓・ガラスケース入りの人形
- これも場所を取るため需要がありません。
- 使用済みの布団・座布団
- 衛生用品のため、中古市場では売れません。寄付も受け付けていないケースが多いです。
- ノーブランドの食器・陶器
- 箱に入っていても、有名ブランド(マイセンやノリタケなど)以外は、重さ単位の「キロ買い」で数十円にしかなりません。
- 百科事典・文学全集
- インターネットの普及で情報が陳腐化しており、古書店でも断られる筆頭です。
これらは、思い切って【粗大ゴミ】として処分する覚悟を決めてください。運ぶ手間をかけて店に持ち込んでも、徒労に終わります。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「もったいない」と心が痛むなら、リサイクルショップではなく【寄付団体】を探してみてください。海外途上国への支援物資としてなら、古着やぬいぐるみを受け入れてくれる団体があります。「捨てる」のではなく「誰かの役に立つ」と思えば、手放す罪悪感が消えますよ。
写真・人形・仏壇:ゴミとして捨てにくい物の「供養」と「処分」
アルバムや遺影、仏壇。これらをゴミ収集車に投げ込むのは、心理的に強烈な抵抗がありますよね。 ここで活用すべきなのが【供養】というシステムです。
1. お焚き上げ(おたきあげ)
神社やお寺に依頼して、焼却供養してもらう方法です。 最近では、遺品整理業者が提携寺院に持ち込んで合同供養してくれるサービスも増えています。「供養証明書」を発行してくれる業者を選べば安心です。
2. 仏壇の「閉眼供養(へいがんくよう)」
仏壇を処分する前には、お坊さんに来ていただき、仏様の魂を抜く儀式(魂抜き)を行います。これを行えば、仏壇はただの「木の箱」に戻りますので、粗大ゴミとして出しても宗教的に問題ありません。
3. 写真のデジタル化
かさばるアルバムは、スキャナーでデータ化してパソコンやクラウドに保存し、現物は数枚だけ残して処分する人が増えています。「場所は取らないけれど、思い出は消えない」現代的な解決策です。
着物・骨董品:リサイクルショップと専門買取業者の使い分け
最後に、少しでもお金に変えたい「お宝」について。 ここでの失敗は、【持ち込む店を間違える】ことです。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を経験した男女350名に「遺品の買取査定で『期待外れ』だった品物」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 着物・帯(購入額の1/100以下だった、または買取拒否)(68%)
- 掛け軸・壺などの骨董品(偽物や量産品と判定された)(15%)
- 切手コレクション(額面以下での買取だった)(12%)
- その他(5%)
※調査期間:2023年2月〜4月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

アンケートの通り、着物は最もガッカリするアイテムNo.1です。 近所の総合リサイクルショップに持っていくと、生地の価値しか見てもらえず「1着100円」なんてこともザラです。
着物や骨董品は、必ず【着物専門買取店】【骨董専門業者】に査定を依頼してください。 彼らは「作家名」や「織りの種類」で価値を判断します。たとえシミがあっても、人間国宝の作品なら高値がつくこともあります。
【処分の鉄則】
- 家具・家電・日用品 → 総合リサイクルショップへ
- 着物・茶道具・骨董 → 専門の出張買取業者へ
餅は餅屋。専門家に任せるのが、故人が残した価値を正当に評価してもらう唯一の方法です。
分別が終われば、家の中はかなりスッキリしたはずです。 しかし、大物の家具や大量の不用品を運び出すのは、自分たちだけでは限界があるかもしれません。
第6章では、いよいよ【業者選び】の最終判断。 「自分たちでやりきるか、プロに頼むか」。その分岐点と、絶対に失敗しない業者の見極め方を解説します。安易に頼むと、あとで高額請求に泣くことになりますよ。
6.【業者】自力でやるか、業者に頼むかの判断ライン

「分別まではなんとか頑張ったけど、タンスや冷蔵庫なんて運べない…」 「週末ごとに実家に通う生活がもう3ヶ月。体力もガソリン代も限界だ」
ここまで読み進めたあなたは、すでに相当な労力を費やしているはずです。本当にお疲れ様です。 実は、遺品整理で最も「挫折」が多いのが、この搬出・運搬のフェーズです。
私も経験がありますが、昭和の家具はとにかく重い。階段を使って2階から和ダンスを降ろそうとした時、腰に激痛が走り、その瞬間に「あ、これ以上は無理だ。プロに頼もう」と心が折れました。
無理をして腰を壊したり、仕事に支障をきたしては本末転倒です。 この章では、自分たちで完遂できる「限界ライン」と、悪徳業者にカモにされないための「防衛術」を伝授します。
「自分たちでやる」限界はどこ? 期間と労力のシミュレーション
「業者に頼むと高いから」と無理をする前に、冷静な計算をしてみましょう。 以下の条件に2つ以上当てはまる場合、自力での作業は「赤字(労力・経費・リスクが見合わない)」になる可能性が高いです。
【自力整理の危険信号リスト】
- 実家まで車で片道2時間以上かかる
- ガソリン代、高速代、そして往復の疲労。毎週末通うと、数ヶ月で数十万円相当のコストがかかります。
- エレベーターなしの2階以上(団地など)
- 素人が階段で冷蔵庫やタンスを運ぶのは、怪我のリスクが高すぎます。壁や共有部分を傷つけると、修繕費を請求されます。
- トラック(2トン車以上)を運転できる人がいない
- 軽トラのピストン輸送では、一軒家の荷物は終わりません。数十往復することになります。
- 退去期限まであと1ヶ月を切っている
- 分別後のゴミ出しルールは自治体によって厳しく、「燃えるゴミは週2回」「粗大ゴミは月1回予約制」など制限があります。期限に間に合いません。
時は金なり。プロに頼む数十万円は、あなたの「時間」と「健康」を買う費用でもあります。
業者選びの急所:相見積もりでチェックすべき「追加料金」の項目
「よし、業者に頼もう」と決めた時、一番怖いのが「ぼったくり」ですよね。 見積もりでは「15万円」と言っていたのに、作業が終わった後に「荷物が予想より多かった」と「30万円」請求されるトラブルが後を絶ちません。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理業者を利用した男女350名に「業者とのトラブル・不満点」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 見積もり金額と実際の請求額が違った(追加請求された)(48%)
- 作業が雑で、壁や床に傷をつけられた(22%)
- 貴重品(現金や指輪)の報告がなく、ネコババされた疑いがある(18%)
- その他(態度が悪い、遅刻など)(12%)
※調査期間:2023年11月〜2024年1月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

約半数が金銭トラブルです。これを防ぐ魔法の言葉があります。 見積もりの際、必ず担当者の目を見てこう聞いてください。
「当日、こちらから追加のお願いをしない限り、絶対に追加料金はかかりませんか?」
まともな業者は「はい、かかりません。もし積載量が増える場合は、作業前に必ず相談します」と即答します。 「うーん、状況によりますね…」と言葉を濁す業者は、その場で断ってください。後出しジャンケンを狙っています。
「遺品整理士」は必要? 信頼できる業者の見抜き方
「遺品整理士」という資格をご存知でしょうか? これは民間資格であり、法的な必須免許ではありません。しかし、私は「遺品整理士がいる業者」を強くおすすめします。
なぜなら、彼らは「遺品はゴミではなく、故人の生きた証」という教育を受けているからです。 単なる不用品回収業者は、タンスの中身をドサドサと床にぶちまけて分別しますが、遺品整理士は一つ一つ確認しながら仕分けます。この「扱い方」の差は歴然です。
最も重要なのは「一般廃棄物収集運搬許可」
もっと重要な法的なチェックポイントがあります。 家庭から出るゴミ(遺品)を運び出すには、自治体の「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要です。
この許可を持っていない業者は、許可を持つ業者と提携している必要があります。 「回収したゴミはどうやって処分しますか?」と聞いて、「自社で提携先の処分場に運びます」など、ルートを明確に答えられる業者を選んでください。ここが怪しいと、あなたの遺品が山林に不法投棄されるリスクがあります。
参照:廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください! – 環境省
貴重品が出てきた時の対応:ネコババされないための自衛策
「業者を信じたいけれど、現金をポケットに入れられたら分からない…」 悲しいですが、魔が差すスタッフもゼロではありません。自衛策は以下の2点です。
- 「捜索品リスト」を渡す
- 契約時に「印鑑と、父が大事にしていた腕時計が見当たりません。もし出てきたら教えてください」と具体的に伝えておきます。「管理されている」という意識が抑止力になります。
- 最初と最後だけは立ち会う
- ずっと監視する必要はありませんが、「作業開始時」と「完了確認時」は必ず立ち会ってください。
- 可能であれば、貴重品がありそうな「タンス」や「机」の搬出時だけは、そばで見守るのがベストです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

良い業者を見抜く究極のコツは、「靴の揃え方」です。見積もりに来たスタッフが、玄関で靴を揃えたか。挨拶がハキハキしているか。玄関先での振る舞いが雑な業者は、遺品の扱いも間違いなく雑です。直感を信じてください。生理的に「この人なら家に入れてもいい」と思える相手を選ぶのが、一番の成功法則です。
さあ、業者も決まり、部屋の荷物が全て運び出されました。 そこにあるのは、ガランとした空間と、長年の汚れ。最後の仕上げは、この部屋を綺麗にして大家さんに返す(または売る)「退去・解約」の手続きです。
第7章では、敷金を取り戻すための掃除ポイントと、最後の「心の整理」についてお話しします。終わりよければすべてよし。最後まで気を抜かないでいきましょう。
7.【最後】退去と解約、家の「しまい方」

「ああ、やっと終わった…」
荷物がすべて運び出され、何一つなくなったガランとした部屋。 そこに立った時、私は言いようのない寂しさと、それ以上に大きな「安堵感」に包まれました。 あんなに山積みだった布団も、タンスも、思い出の品々も、すべて片付いたのです。
しかし、感傷に浸れる時間はあと少し。 遺品整理の本当のゴールは、部屋を空にすることではありません。 その部屋を「大家さんに返却する(賃貸)」か、「資産として処分・管理する(持ち家)」手続きを終えるまでがミッションです。
最後の最後で「敷金が返ってこない!」「高額なリフォーム代を請求された!」というトラブルに巻き込まれないよう、正しい「家のしまい方」をお伝えします。
賃貸の場合:原状回復はどこまで必要か(畳、壁紙、エアコン)
賃貸アパートやマンションの場合、最大の関門は退去時の「立ち会い」と「原状回復費用」です。
ここで知っておくべき最強の知識は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。 簡単に言うと、「経年劣化(普通に住んでいて古くなった分)は、大家さんの負担であり、借主が払う必要はない」というルールです。
独居の高齢者は、10年、20年と同じ部屋に住み続けているケースが多いですよね? 長く住めば住むほど、あなたの負担は減ります。
- 日焼けした畳・壁紙 → 大家さん負担(払わなくていい)
- 家具を置いたことによる床の凹み → 大家さん負担(払わなくていい)
- タバコのヤニ、ペットの臭い、手入れ不足によるカビ → 借主負担(払う必要がある)
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理後の賃貸物件退去を経験した男女350名に「退去立ち会いで揉めた(トラブルになった)ポイント」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 部屋に染み付いた「臭い」や汚れのクリーニング代を請求された(45%)
- 壁紙や畳の全面張り替え費用を請求された(30%)
- 後付けしたエアコンや設備の撤去費用でもめた(15%)
- その他(鍵の紛失など)(10%)
※調査期間:2024年2月〜4月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

アンケート結果の通り、4割以上の方が「臭い・汚れ」で指摘を受けています。 高齢者の家は、長年の生活臭が染み付いていることが多いです。
対策として、立ち会いの日までに「簡易清掃」だけは自分で行ってください。 プロ並みに磨く必要はありませんが、ホコリを払い、床に掃除機をかけ、窓を開けて換気をしておくだけで、管理会社の心証(「きれいに使ってくれたな」という印象)は劇的に変わります。
参照:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン – 国土交通省
持ち家の場合:空き家にしておくリスクと売却・解体のタイミング
持ち家(一軒家・分譲マンション)の場合、「とりあえず荷物はなくなったから、しばらく置いておこう」は危険です。
人が住まなくなった家は、驚くべきスピードで傷みます。 通気がなくなりカビが生え、シロアリが湧き、最悪の場合、庭の草木が伸び放題になって近隣から「迷惑空き家」として通報されます。
さらに、「特定空家(とくていあきや)」に指定されると、固定資産税の優遇措置がなくなり、税金が最大6倍に跳ね上がります。
やるべきアクション:まずは「査定」だけ済ませる
売るか売らないかは後で決めても構いません。しかし、「今の価値がいくらなのか」だけは、遺品整理が終わった直後に不動産屋に査定してもらってください。
「土地値で2000万円で売れる」と分かれば、相続人同士の遺産分割もスムーズに進みます。「価値がないから解体費の方が高い」と分かれば、相続放棄の判断材料になります。 現状を知らないまま放置するのが、一番のリスクです。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

実家を売却する場合、「空き家の3,000万円特別控除」という税金の特例が使える可能性があります。これは、相続してから3年以内に売れば、利益から3000万円まで税金がかからないという強力な制度です。「いつか売ろう」と3年以上放置すると、数百万円の税金を損することになりますよ。急がば回れ、ではなく「急げ」です。
完了の報告:親族への最終報告と費用の精算方法
すべての作業が終わり、鍵を返却(または管理を開始)したら、最後の大仕事です。 親族への「完了報告」と「お金の精算」です。
ここをなぁなぁにすると、せっかくの苦労が水の泡になり、親族関係にしこりを残します。 以下の3点セットを用意して、報告を行ってください。
- 完了後の写真
- 空っぽになった部屋の写真を見せることで、「本当に終わったんだ」という事実を共有します。
- 収支報告書(簡単なメモでOK)
- 業者への支払い、ゴミ処理券代、交通費などをリスト化し、領収書を添付します。「私がこれだけ立て替えました」という証拠です。
- 発見された貴重品のリスト
- 出てきた通帳、現金、貴金属を正直に報告します。
「忙しい中、代表してやってくれてありがとう」 この言葉をもらい、実費を精算してもらうことで、あなたの遺品整理は本当の意味で完了します。
もし、遺産よりも持ち出し(片付け費用)の方が多くなってしまったとしても、それは「故人への最後の手向け」であり、あなたが「家系の責任を果たした証」です。 どうか、損得勘定だけでなく、「やりきった自分」を誇りに思ってください。
最後に:遺品整理は、あなたの人生を前に進めるための儀式
全7章にわたり、独居老人の遺品整理について解説してきました。
最初は「借金があるかも」「何からやればいいの」と不安でいっぱいだったと思います。 でも、ここまで読み進め、一つ一つ行動に移してきたあなたなら、もう大丈夫です。
遺品整理は、単なる片付けではありません。 それは、亡くなった方との思い出に区切りをつけ、残されたあなたが「日常」を取り戻すための、とても大切な儀式です。
部屋は空っぽになりました。 もう、いつまでも過去(遺品)に縛られる必要はありません。 顔を上げて、あなた自身のこれからの人生を、軽やかに歩んでいってください。
長い間、本当にお疲れ様でした。








