
編集長
私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!
この記事を監修した人

監修者:中嶋大貴
5年前に遺品整理事業を立ち上げ、現在は全国18拠点の事業者を対象にコンサルティングを行う。
遺品整理、ゴミ屋敷清掃、不用品回収の現場経験が豊富で、各地域の実情に合わせた運営改善・業務効率化の指導に精通している。
現場の実務から業界動向まで幅広く把握しており、専門性を生かした正確で信頼性の高い情報提供を行っている。
こんな人におすすめ
- 「何から手をつければいいか分からない」と、最初の一歩が踏み出せずにいる方
- 実家の物が多すぎて心配だが、親にどう切り出せばいいか悩んでいる方
- 「家族に迷惑をかけたくない」けれど、具体的に何を準備すれば安心なのか知りたい方
- 体力・気力があるうちに身の回りをスッキリさせて、これからの人生をもっと楽しみたい方
この記事でわかること
- 挫折率を劇的に下げる「生前整理の正しい順番(ロードマップ)」
- 思い出の品でも迷わない! プロ直伝の「残す・捨てるの判断基準(3秒ルール)」
- 通帳やハンコより厄介な「デジタル遺品(スマホ・ネット資産)」の対策法
- トラブルを未然に防ぐ「悪徳業者の見分け方」と「相見積もりのコツ」
- 【付録】印刷して塗りつぶせる「生前整理・完全実行チェックリスト」
第1章:まずは全体像を把握! 生前整理の標準ロードマップ

生前整理を始めようと思い立ったとき、多くの人が最初にぶつかる壁が「何から手をつければいいのかわからない」という悩みです。
「とりあえず目の前の服を捨ててみようか」「いや、エンディングノートを買うのが先か?」
このように迷ったまま見切り発車でスタートすると、途中で部屋が散らかりすぎて収拾がつかなくなったり、重要な書類を誤って捨ててしまったりと、取り返しのつかない失敗につながるリスクがあります。
この章では、日本一の生前整理メディアとして蓄積してきたデータをもとに、最短ルートで、かつ確実に完了させるための「正しい手順」を解説します。これを読めば、今日から迷うことなく最初の一歩を踏み出せます。
生前整理と遺品整理の決定的な違い
まず大前提として知っておくべきは、生前整理は単なる「死支度」ではないということです。
- 遺品整理:本人が亡くなった後、遺族が手探りで行う「事後処理」。本人の意思は反映されにくく、遺族には精神的・肉体的負担がのしかかります。
- 生前整理:本人が元気なうちに、自分の意思で物や情報を整理し、これからの人生をより快適に生きるための「環境整備」。
内閣府の高齢社会白書などでも触れられている通り、高齢期の生活環境を整えることは、転倒事故の防止や、いざという時の避難のスムーズさにも直結します。つまり、生前整理は「残りの人生を安全に、心地よく過ごすための前向きなアクション」なのです。
参考リンク:高齢社会対策(内閣府)
挫折しない「正しい順番」はこれ! 鉄板ロードマップ
生前整理で最も重要なのは「順番」です。実は、多くの人が最初に手をつけるべきではない場所から始めてしまい、挫折しています。
以下の独自データをご覧ください。
【お片づけの窓口独自アンケート】
生前整理・断捨離を試みた50代〜70代の男女400名に「最初に手をつけて失敗した・後悔した場所」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 押し入れの奥にある思い出の品・写真(58%)
- 重要書類・契約書関係(25%)
- キッチン・食器類(10%)
- その他(7%)
※調査期間:2023年9月〜11月 対象:弊社セミナー参加者および相談者

なぜ「思い出の品」から始めると失敗するのでしょうか? それは、写真や手紙を見ると手が止まり、思い出に浸ってしまうからです。片付けのプロでも、思い出の品は再考に時間を要するため、一番最後に回すのが鉄則です。
推奨する「生前整理の5ステップ」
- 【財産の棚卸し】(まずは現状把握)
- 通帳、不動産権利証、保険証券などを一箇所に集める。「何を持っているか」を把握しないと、捨てる・残すの判断ができません。
- 【明らかなゴミ・不要品の処分】
- 壊れた家電、期限切れの食品、数年着ていない衣類など、判断に迷わないものから減らし、物理的なスペースを確保します。
- 【日常使いの物の選別】
- キッチン用品、日用品など、今の生活に必要なものを選び抜きます。
- 【情報の整理】
- デジタル資産、サブスクリプション契約、友人リストなど、目に見えない情報を整理します。
- 【思い出の品・エンディングノート】
- 最後にじっくりと、写真や手紙に向き合い、家族に残したいメッセージをまとめます。
この順番を守るだけで、作業効率は劇的に上がります。まずは「判断がいらないもの」で勢いをつけ、徐々に「判断が難しいもの」へと進んでいくのがコツです。
いつから始める? 期間設定とスケジュールの立て方
「定年退職してからでいいや」と考えているなら、少し危険かもしれません。生前整理には、想像以上の**「判断力」と「体力」**が必要です。
環境省の調査でも、家庭からの廃棄物量は年々課題となっており、高齢になってから大量の不用品を排出するのは、身体的にも金銭的にも大きな負担となります。
参考リンク:環境省_一般廃棄物の排出及び処理状況等について
1ヶ月集中型か、1年計画型か
ご自身の性格やライフスタイルに合わせて、無理のない計画を選びましょう。
- 短期集中型(1〜3ヶ月)
- 引越しやリフォームを控えている人向け。
- メリット:一気に片付くので達成感が大きい。
- デメリット:心身ともに疲労が溜まりやすい。業者への依頼も検討が必要。
- 長期継続型(半年〜1年)
- 今の家に住み続けながら少しずつ進めたい人向け。
- メリット:日常の隙間時間で進められる。じっくり判断できる。
- デメリット:中だるみしやすく、途中でやめてしまうリスクがある。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

生前整理を成功させる最大の秘訣は、「完璧を目指さないこと」です。最初から100点満点の整理を目指すと、必ず疲れてしまいます。「今日は引き出し1段だけ」「今週は玄関の靴だけ」といったように、小さな達成感を積み重ねていくことが、結果的に一番の近道になりますよ。無理せず、自分のペースで進めていきましょう。
これだけは揃えておこう! スタートキットリスト
気持ちが決まったら、まずは形から入るのも有効です。作業を中断させないために、以下の道具を事前に準備しておきましょう。
- 厚手のゴミ袋(大・中・小)
- 自治体の指定袋を多めに用意します。途中で袋がなくなると、やる気が削がれます。
- 軍手・マスク
- 長年のホコリを吸い込まないよう、健康管理も大切です。
- 荷造り紐・ガムテープ・ハサミ
- 雑誌やダンボールをまとめるのに必須です。
- 油性マジック・付箋
- 「捨てる」「残す」「保留」「誰々に譲る」など、箱や袋に大きく書いて貼るために使います。
- クリアファイル・バインダー
- 出てきた重要書類を一時的に保管するためです。
特に重要なのが「保留ボックス」(ダンボール箱でOK)を作ることです。 「捨てるか迷うもの」が出てきたら、悩まず一旦この箱に入れます。判断を後回しにすることで、片付けの手を止めずに進めることができます。
これで準備は整いました。次章からは、いよいよ具体的な「物の選別」と「処分のテクニック」に入っていきます。家の中がスッキリと生まれ変わっていく感覚を、ぜひ楽しみにしてください。
第2章:【物の整理】「残す・捨てる」の判断基準と処分のコツ

第1章で全体のロードマップができたら、いよいよ実践編です。家の中に溢れる「物」と向き合う時間がやってきました。
生前整理における物の片付けは、単なる大掃除とは違います。 「これからの人生で、自分を幸せにしてくれる物だけを選び抜く作業」です。
しかし、長年連れ添った愛用品を前にすると、「いつか使うかも」「高かったのに」という感情が湧き上がり、手が止まってしまうのが人情です。 この章では、そんな迷いを断ち切り、後悔なく整理を進めるためのプロのメソッドを伝授します。
判断に迷わないための「3秒ルール」と仕分け4分類
物を手にした瞬間、悩む時間は「3秒」までと決めてください。 人間は長く考えれば考えるほど、「捨てない理由」を探し始める生き物だからです。
3秒で直感的に判断するために、以下の「仕分け4分類」を使います。ダンボールやスペースを4つ用意し、機械的に振り分けていきましょう。
- 【使う(必需品)】
- 現在進行形で使っているもの。
- 1年以内に確実に使う予定があるもの(喪服、季節家電など)。
- 【使わないが価値がある(資産・譲渡)】
- 自分は使わないが、市場価値がある貴金属、骨董品、ブランドバッグなど。
- 家族や知人が「欲しい」と明言しているもの。
- 【思い出の品(保留)】
- 写真、手紙、賞状、形見など。
- 今の段階で判断がつかないものは、無理に捨てず「保留ボックス」へ。ここで時間をかけないのが最大のコツです。
- 【即処分(ゴミ・リサイクル)】
- 壊れているもの、1年以上使っていない日用品。
- 「いつか使うかも」と思っているだけのもの。
「いつか」は永遠に来ません。 今の生活スペースを圧迫してまで取っておく家賃(スペース代)の方がもったいないと考えましょう。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「もったいない」という言葉は美しいですが、使わずに押し入れの肥やしにすることこそ、物にとって一番不幸な状態かもしれません。誰かに譲って使ってもらったり、リサイクルに出して資源として循環させたりすることも、立派な「物を大切にする形」ですよ。罪悪感を持つ必要はありません。
カテゴリー別! 効率的な片付けテクニック
家中の物を漫然と片付けるのではなく、カテゴリー(種類)ごとに攻略するのが鉄則です。 ここでは、特に処分に困りやすい4大カテゴリーの攻略法を解説します。
1. 衣類・布団:量が多いものから減らす
衣類は「収納スペースの7割」を目安に減らしましょう。クローゼットに隙間ができると、通気性が良くなり、カビや虫食いも防げます。
- 処分の基準:
- サイズが合わないもの。
- 2シーズン袖を通していないもの。
- 黄ばみ、ほつれがあるもの。
- 布団の整理:
- 来客用の布団は、レンタル布団サービスの利用を検討し、思い切って手放すのも手です。重い布団の上げ下ろしがなくなると、身体的負担も激減します。
2. 写真・アルバム:デジタル化と「ベスト版」の作成
大量のアルバムは、場所を取るだけでなく、重たくて見返すのも大変です。
- デジタル化(スキャン):
- 専門店やスマホアプリを使ってデータ化すれば、スマホでいつでも見返せますし、火事や災害で失うリスクもなくなります。
- ベスト版アルバムの作成:
- どうしても紙で残したい写真は、1冊の「人生のベストアルバム」に厳選しましょう。これなら、家族が見てもあなたの人生の歩みが一目でわかります。
3. 趣味のコレクション:価値のわかる譲り先の探し方
あなたにとっては宝物でも、興味のない家族にとっては「処分に困るゴミ」になりかねません。これが最もトラブルになりやすいポイントです。
以下の独自データをご覧ください。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺品整理を経験した男女350名に「親の家にあって処分方法や価値がわからず最も困ったもの」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 趣味の収集品(フィギュア、切手、茶器など)(42%)
- 大量の食器・贈答品(28%)
- 専門書・全集(18%)
- その他(12%)
※調査期間:2023年5月〜7月 対象:弊社へご相談いただいた遺品整理経験者

対策: 元気なうちに、その価値がわかる買取専門店に査定に出すか、同じ趣味を持つ友人に譲りましょう。「これが欲しい」と言ってくれる人に託すことこそ、コレクターとしての最後の務めです。
4. 家具・家電:大型ゴミの手配とリサイクル
大型の家具や家電は、処分に体力とお金がかかります。 まだ使える新しい家電(製造から5年以内が目安)はリサイクルショップで売れる可能性がありますが、古いものは行政のルールに従って処分が必要です。
- 家電リサイクル法対象品目:
- エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機は、粗大ゴミとして出せません。購入した店舗や指定引取場所に持ち込む必要があります。
- 悪徳業者に注意:
- 「無料で回収します」とトラックで回ってくる業者の中には、後で高額な料金を請求したり、不法投棄したりする悪質なケースがあります。必ず自治体の許可を持った業者を選びましょう。
参考リンク:いらなくなった家電製品は正しくリサイクル!(経済産業省)
参考リンク:廃品回収業者とのトラブルに注意!(国民生活センター)
まとめ:空間が広がることは、未来への投資
物を減らすと、部屋が広くなるだけではありません。 つまずいて転ぶリスクが減り(安全)、掃除が楽になり(時間のゆとり)、どこに何があるか把握できるようになります(認知コストの低下)。
物理的な整理は、これからの生活の質(QOL)を上げるための、最も確実な投資です。 次章では、物よりもさらに厄介で重要な「情報と資産の整理」について解説します。デジタル時代特有の落とし穴に備えましょう。
第3章:【情報の整理】トラブル回避必須! 資産とデジタルの管理

「部屋は片付いた。これで一安心」……本当にそうでしょうか? 現代の生前整理において、目に見える「物」以上に深刻なトラブルを引き起こしているのが、目に見えない「情報」と「資産」です。
昔であれば、タンス預金と通帳、権利証を探せば済みました。しかし今は、スマホの中に銀行があり、クレジットカードの中に借金があり、クラウド上に大切な思い出があります。これらは、あなたが情報を残さずに亡くなってしまった瞬間、誰にも見つけられない「永遠の秘密」となり、ご家族を大混乱に陥れます。
この章では、残された家族が路頭に迷わないための「資産の棚卸し」と、現代必須の「デジタル遺品対策」について解説します。これは、あなたの大切な資産を守り、スムーズに引き継ぐための防衛策です。
「財産目録」は家族への最強のガイドマップ
財産目録とは、自分が持っているプラスの財産とマイナスの財産を一覧にしたリストです。 法的な形式にこだわる必要はありません。「どこに何があるか」が家族に伝わることが最優先です。
以下の独自データを見ると、情報の整理がいかに重要かがわかります。
【お片づけの窓口独自アンケート】
親を見送った経験のある男女380名に「お金や契約関係の整理で最も困ったこと・驚いたこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- どこの銀行に口座があるのか全容が把握できなかった(45%)
- スマホのロックが解除できず、連絡先や写真データを取り出せなかった(32%)
- 死後数ヶ月経ってから借金(督促状)が見つかった(15%)
- その他(8%)
※調査期間:2023年10月〜12月 対象:弊社セミナー参加者

1. 資産(プラスの財産)のリスト化
以下の項目をノートやExcelにまとめ、保管場所も明記しましょう。
- 預貯金:銀行名、支店名、口座番号。(ネット銀行は特に注意!)
- 不動産:自宅、投資用マンション、実家の土地などの所在地。
- 有価証券:株式、投資信託、国債などの証券会社名。
- 保険:生命保険、医療保険、火災保険の証書保管場所。
2. 負債(マイナスの財産)と解約リスト
家族にとって最も恐ろしいのは、知らない借金や、死後も課金され続ける契約です。
- 借入金:住宅ローン、自動車ローン、カードローンの残高と借入先。
- ※もし負債が資産を上回る場合、遺族は「相続放棄」を検討する必要がありますが、これには3ヶ月という期限があります。情報がないと判断が遅れ、借金を背負わせてしまう可能性があります。
- クレジットカード・サブスクリプション:
- 年会費のかかるカード、動画配信サービス、会員制クラブなど。
- 「解約手続きに必要なID・パスワード」もセットで残すのが親切です。
参考リンク:相続の放棄の申述(裁判所)
【編集長からのワンポイントアドバイス】

財産目録を作ると言うと、「資産家じゃあるまいし」と笑う方がいらっしゃいます。ですが、口座が少額でも複数に分散している方が、実は手続きは大変なのです。残高数百円の口座一つを解約するために、平日に仕事を休んで役所と銀行を回る……そんな苦労を家族にさせないための、これは「愛情のリスト」なんですよ。
現代の必須課題「デジタル遺品」対策
「デジタル遺品」とは、スマホやPCに保存されたデータ、およびインターネット上の登録情報のことです。 これらはセキュリティが高く、本人が亡くなると、プロの業者でもロック解除は極めて困難です。
1. スマホ・PCの「スペアキー」を残す
スマホが開かないと、葬儀に呼びたい友人の連絡先すらわかりません。
- ロック解除コード(PIN)の共有:
- エンディングノートに書くか、信頼できる一人だけに口頭で伝えておく。
- ※防犯上、紙に書く場合は「スマホのパスワード」と明記せず、自分と家族だけがわかる暗号やヒントにしておくのも手です。
2. ネット銀行・証券口座のID/パスワード管理
通帳のないネット銀行は、郵便物すら来ないことが多く、存在自体が気づかれないリスクが最大です。
- 口座リストの作成:
- 「楽天銀行」「SBI証券」など、利用している金融機関名を必ず書き残してください。ログイン情報は厳重に管理しつつも、死後には見つかる工夫(貸金庫や、重要書類ファイルへの封入)が必要です。
3. 見られたくないデータ(SNS、画像)の処理
誰にでも「墓場まで持っていきたい秘密」はあるものです。
- 見られたくないデータの隠蔽:
- 専用フォルダに入れてロックをかける、または生前にクラウドへ移してパスワードを複雑にするなどの対策を。
- 死後の自動削除機能:
- Googleの「アカウント無効化管理ツール(旧:追悼アカウント管理機能)」のように、一定期間アクセスがないとデータを削除したり、指定した人に権限を譲渡したりできる機能を設定しておきましょう。
- FacebookなどのSNSには「追悼アカウント」機能があり、死後にアカウントを削除するか、追悼用ページとして残すかを生前に選択できます。
参考リンク:デジタル遺品とは(国民生活センター)
まとめ:情報は「見つかる」ことに意味がある
どれだけ完璧に整理しても、そのリストが見つからなければ意味がありません。 作成した財産目録やデジタル情報のメモは、仏壇の引き出しや金庫など「家族が必ず探す場所」に保管するか、次章で紹介する「エンディングノート」や「遺言書」と一緒に管理することをお勧めします。
さて、物理的な「物」と、事務的な「情報」の整理が終わりました。 次はいよいよ、あなたの「心」と「想い」を形にするステップです。第4章では、法的効力を持つ遺言書と、想いを伝えるエンディングノートの違いについて深く掘り下げます。
第4章:【想いの整理】エンディングノートと遺言書

部屋を片付け、財産やデジタル情報を整理しました。ここまでくれば、あなたの身の回りは随分とスッキリしたはずです。 しかし、最後に一つだけ、どうしても整理しておかなければならないものがあります。それは、あなたの「意思(想い)」です。
「延命治療はしてほしいのか?」「お葬式は誰を呼んでほしいのか?」「この家は誰に継いでほしいのか?」
これらは、物やお金のリストを見るだけでは分かりません。あなたが言葉にして残さない限り、家族はあなたの本当の気持ちを永遠に知ることができず、「あの時、こうしてあげるべきだったのでは……」と、残された人生で後悔し続けることになるのです。
第4章では、法的効力を持つ「遺言書」と、家族への愛情を伝える「エンディングノート」の使い分けについて、日本一分かりやすく解説します。
「なんとかなる」は危険! 意思表示がないと起きる悲劇
「うちは金持ちじゃないから揉めない」「家族仲が良いから大丈夫」 そう思っているご家庭ほど、いざという時に亀裂が入ります。
以下の独自データをご覧ください。
【お片づけの窓口独自アンケート】
遺産相続や葬儀を経験した男女320名に「故人の意思が不明で困ったこと・親族間で揉めた原因」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 延命措置や介護方針の判断を迫られ、正解がわからず苦しんだ(51%)
- 「誰が実家を継ぐか(売るか)」で兄弟間の意見が割れた(28%)
- 葬儀の規模や形式(宗教など)について親族から文句が出た(15%)
- その他(6%)
※調査期間:2023年2月〜4月 対象:弊社へご相談いただいた遺族および生前整理検討者

お金の配分以上に、「命や儀式に関わる選択」が遺族の重荷になっていることが分かります。これを防げるのは、あなただけです。
気軽に書ける「エンディングノート」の役割
エンディングノートには法的効力(強制力)はありません。しかし、その分だけ自由に、あなたの「希望」や「感謝」を綴ることができます。 書店で売っている専用ノートを買ってもいいですし、普通の大学ノートでも構いません。以下の3点は必ず書きましょう。
1. 医療・介護の希望(尊厳死・延命治療)
あなたが倒れて意識がなくなった時、医師は家族に「延命治療をしますか?」と問いかけます。 この決断は家族にとってあまりに重く、精神的トラウマになることもあります。
- チェックポイント:
- 胃ろうや人工呼吸器を希望するか。
- 緩和ケア(痛みの除去)を優先してほしいか。
- 臓器提供の意思はあるか。
2. 葬儀・お墓の希望
「派手な式はいらない」「家族だけで見送ってほしい」「散骨してほしい」など、具体的なイメージを書き残します。 遺影に使ってほしい写真(第2章で選んだベストショット)の保存場所もここに記しておきましょう。
3. 大切な人へのメッセージ
これがエンディングノートの真髄です。 「ありがとう」「幸せだった」という一言があるだけで、遺族の悲しみは「温かい思い出」へと変わります。法的文書である遺言書には書ききれない、あなたの温度感を伝えてください。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

エンディングノートを書こうとすると、「死ぬ準備をしているようで怖い」と筆が止まる方がいます。そんな時は、「未来の家族へのラブレター」だと思って書いてみてください。「もしもの時、あなたが困らないように」という優しさが原動力になれば、不思議と筆が進むものですよ。一度に全部埋める必要はありません。書きたいところから埋めていきましょう。
法的効力を待たせるなら「遺言書」一択
「特定の財産を、特定の人に渡したい」という明確な意思がある場合は、エンディングノートではなく、必ず「遺言書」を作成してください。 エンディングノートに「家は長男に」と書いても、法的な強制力はなく、他の兄弟が納得しなければ無効です。
主な遺言書は2種類あります。それぞれの特徴を理解して選びましょう。
1. 自筆証書遺言
自分で手書きする遺言書です。
- メリット: 費用がかからず、いつでも書ける。
- デメリット: 書き方の不備(日付がない、押印がない等)で無効になるリスクが高い。紛失や改ざんの恐れがある。
- 最新の対策: 2020年から、自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度が始まりました。形式チェックも受けられ、紛失リスクもゼロになるため、自筆で書くならこの制度の利用を強く推奨します。
参考リンク:法務局における自筆証書遺言書保管制度について(法務省)
2. 公正証書遺言
公証役場で、公証人(法律のプロ)に作成してもらう遺言書です。
- メリット: 形式不備で無効になることがほぼない。原本が公証役場に保管されるため、確実性が最も高い。
- デメリット: 作成に費用(数万円〜)と、証人2名の立ち合いが必要。
どちらを選ぶべき?
- 公正証書遺言がおすすめな人:
- 不動産や事業など、財産が複雑な人。
- 「長男には多めに」「介護してくれた嫁に遺贈したい」など、法定相続分と異なる配分をしたい人。
- 絶対に親族間で揉めてほしくない人。
参考リンク:遺言書を作成する(日本公証人連合会)
まとめ:言葉にすることで、今を生きる覚悟が決まる
エンディングノートや遺言書を書くと、不思議なことに「死」への漠然とした恐怖が薄れ、「残りの人生で何をすべきか」が明確になります。 これは死ぬための準備ではなく、「最後まで自分らしく生き抜くための宣言書」なのです。
ここまでで、自分自身の整理はほぼ完了しました。 しかし、これら全てを「自分一人(または家族だけ)」で完遂するのは、体力・精神力ともに至難の業であることも事実です。
最終章である第5章では、無理せずゴールにたどり着くための選択肢、「プロの手を借りる判断基準と業者の選び方」について解説します。悪徳業者に騙されないための防衛術も必見です。
第5章:プロの手を借りる判断と業者の選び方

ここまで自力で進める方法をお伝えしてきましたが、家の広さや物の量によっては、家族だけで完了させるのが物理的に不可能なケースもあります。
「週末ごとに実家に帰って片付けているが、2年経っても終わらない」 「重い家具を動かそうとして、腰を痛めてしまった」
こうなっては本末転倒です。生前整理のゴールは「片付けること」ではなく、「その後の生活を楽しむこと」。無理だと感じたら、プロの手を借りる勇気もまた、賢い選択です。
最終章では、業者に依頼すべきかの判断ラインと、絶対に騙されないための業者の選び方を解説します。
自分たちでやる限界ラインはどこ?
プロに頼むべきか迷ったら、以下の基準を参考にしてください。一つでも当てはまるなら、業者への依頼(または部分的な依頼)を検討すべきサインです。
- 3部屋以上の荷物が天井近くまで積まれている(いわゆるゴミ屋敷状態)。
- 大型家具(タンス、冷蔵庫など)が5点以上あり、運び出す男手がない。
- 実家が遠方(片道2時間以上)で、通う頻度が月に1回以下。
- 完了させたい期限(引越しや施設入居)まで1ヶ月を切っている。
特に「遠方」かつ「期限付き」の場合、交通費と時間を計算すると、業者に頼んだ方が安上がりなケースが多々あります。
「不用品回収」と「生前整理業者」は別物!
業者選びで最も多い失敗が、業態の違いを理解せずに依頼してしまうことです。
- 不用品回収業者:
- 目的:ゴミや不用品を回収・処分すること。
- 特徴:作業が早いが、「仕分け」はしてくれないことが多い。必要な書類も一緒に捨てられるリスクがある。
- 生前整理(遺品整理)業者:
- 目的:物の仕分け、探索、買取、供養、そして処分をトータルで行うこと。
- 特徴:一品ずつ確認しながら仕分けるため、権利証や思い出の品を見つけ出してくれる。「整理収納アドバイザー」や「遺品整理士」などの資格者が在籍していることが多い。
悪徳業者に騙されないための「相見積もり」チェックポイント
残念ながら、この業界には高額請求や不法投棄を行う悪徳業者が存在します。被害に遭わないために、以下の独自データを教訓にしてください。
【お片づけの窓口独自アンケート】
業者を利用した生前整理・遺品整理経験者300名に「業者選びで後悔したこと・トラブルになったこと」を聞いたところ、以下の結果となりました。
- 作業当日に追加料金を請求され、見積もりの倍額になった(38%)
- 必要なもの(形見や未開封の贈答品)を勝手に処分・回収された(25%)
- 作業が雑で、壁や床に傷をつけられた(12%)
- その他(25%)
※調査期間:2023年6月〜8月 対象:弊社へご相談および再依頼いただいたお客様

必ず確認! 信頼できる業者の3条件
- 「一般廃棄物収集運搬業」の許可、または提携があるか
- 家庭のゴミを捨てられるのは、自治体からこの許可を得た業者だけです。「産業廃棄物許可」や「古物商許可」だけでは、家庭のゴミは運べません(※古物商は買取のみ可)。許可を持たない業者は不法投棄のリスクがあります。
- 見積書に「一式」ではなく内訳があるか
- 「作業一式 30万円」という見積もりは危険信号です。「人件費」「車両費」「処分費」「リサイクル家電運搬費」などが明確に分かれているか確認してください。
- 追加料金の条件が明記されているか
- 「当日の荷物量変更がない限り、追加料金は発生しません」と明言(書面化)してくれる業者を選びましょう。
必ず3社以上から相見積もりを取り、電話対応の丁寧さや、訪問見積もりに来たスタッフの清潔感(靴下が綺麗かなど)を比較してください。家に入れる相手ですから、生理的な安心感も重要なスペックです。
参考リンク:廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!(環境省)
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「安さ」だけで業者を選ぶのは絶対にNGです。相場より極端に安い業者は、必要な人件費を削って雑な作業をするか、山林に不法投棄して処分費を浮かせている可能性があります。もし自分の荷物が不法投棄されたら、依頼主であるあなたまで警察の捜査対象になるリスクがあるんですよ。「適正価格」には、安心を買う意味も含まれていることを忘れないでくださいね。
よくある質問(Q&A)
最後に、生前整理を進める中で、多くの人が直面する悩みにお答えします。
Q. 親に生前整理を勧めたいですが、「縁起でもない」と怒られます。どう切り出せばいいですか?
A. 「死ぬため」ではなく「安全のため」と言い換えましょう。 「お父さんが死んだら困るから」と言うと反発されます。「最近地震が多いから、避難経路確保のために廊下の荷物を減らそう」「躓いて転んだら大変だから、床をスッキリさせよう」と、親の健康と安全を気遣う文脈で提案するのが正解です。または、「実家の探し物を手伝ってほしい」と頼み、一緒に片付けるきっかけを作るのも有効です。
Q. 独り身で頼れる親族がいません。死後の手続きはどうすればいいですか?
A. 「死後事務委任契約」を検討してください。 司法書士や行政書士、またはNPO法人と生前に契約を結ぶことで、死後の葬儀、納骨、役所への届出、家財道具の処分などを代行してもらえます。遺言書だけではカバーできない「事務手続き」を任せられる制度です。
Q. 認知症の症状が出始めていても、生前整理はできますか?
A. 本人の判断能力があるうちに急いでください。 認知症が進行し判断能力がないとみなされると、契約行為(不動産の売却や業者の手配)ができなくなる可能性があります。その場合は「成年後見制度」を利用することになりますが、家庭裁判所の監督下に入るため、柔軟な財産処分が難しくなります。今のうちに家族信託などを検討することをお勧めします。
Q. 業者に依頼する場合、費用相場はどれくらいですか?
A. 荷物量と部屋の広さによりますが、目安は以下の通りです。
- 1R・1K:3万〜8万円
- 1LDK・2DK:12万〜25万円
- 3LDK以上:25万〜50万円以上 ※これに「買取金額」が差し引かれる場合もあります。逆に、ゴミ屋敷状態やエレベーターなしの階層などの条件で高くなることもあります。
Q. 捨ててしまって後悔しそうなものが怖くて手が止まります。対処法は?
A. 無理に捨てず「迷い箱」に入れて封印しましょう。 箱に「○年○月まで保管」と期限を書き、押し入れの奥に入れます。期限が来た時に一度も箱を開けなかったのであれば、「なくても生活に困らなかった」という証拠です。その時改めて処分を検討すればOKです。
おわりに
生前整理は、過去の自分と向き合い、未来の自分と家族にスペース(余白)をプレゼントする作業です。
最初は膨大な物の量に圧倒されるかもしれません。しかし、一つ捨てるたびに、心にかかっていた霧が少しずつ晴れていくのを実感できるはずです。 焦る必要はありません。今日、引き出し一つから始めてみませんか?
その小さな一歩が、あなたのこれからの人生を、より軽やかで、より豊かなものに変えてくれることを約束します。








