遺品整理業者のネコババは本当?手口と絶対防ぐ「監視術」

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私自身、過去に何度も不用品回収サービスに助けられた
元・ヘビーユーザーです。
その実体験から、いざという時に頼れる『利用者目線の情報』をお届けするという
理念を掲げ、実体験に基づいた情報をお届けします!

この記事を監修した人

監修者:中嶋大貴
5年前に遺品整理事業を立ち上げ、現在は全国18拠点の事業者を対象にコンサルティングを行う。
遺品整理、ゴミ屋敷清掃、不用品回収の現場経験が豊富で、各地域の実情に合わせた運営改善・業務効率化の指導に精通している。
現場の実務から業界動向まで幅広く把握しており、専門性を生かした正確で信頼性の高い情報提供を行っている。

こんな人におすすめ

  • 実家の遺品整理を業者に頼む予定だが、「窃盗・着服(ネコババ)」の噂を聞いて不安で仕方がない人
  • 業者を「信用できない前提」で考え、絶対に騙されないための防衛知識が欲しい人
  • 見積もりの安さよりも、「故人が残した大切な資産を守ること」を最優先したい人
  • 万が一のトラブルに備えて、警察や法的に通用する「鉄壁の自衛策」を知っておきたい人

この記事でわかること

  • 悪徳業者が行う「ゴミ処分を装った転売・着服」の汚い手口と実態
  • 契約前に泥棒業者をあぶり出す、見積書とスタッフの「危険シグナル」の見抜き方
  • プロの窃盗団も手出しできなくなる、現場での「最強の監視ポジション」「牽制フレーズ」
  • 「証拠がない」と泣き寝入りしないための、スマホを使った「証拠保全」「契約書の裏技」
目次

第1章 敵を知る:悪徳業者の「ネコババ」手口とは

遺品整理業者を探しているあなたが最も恐れていること。それは、故人が大切にしていた遺品や、本来残すべき財産を、業者が勝手に盗んで自分の利益にしてしまうことではないでしょうか。

残念ながら、その不安は的中しています。 業界の内部事情をお話しすると、格安を謳う業者の中には、最初から「盗品転売」を利益構造の一部に組み込んでいる悪質なケースが存在します。彼らにとって、あなたの実家は「片付け現場」ではなく「宝の山」に見えているのです。

まずは彼らがどのようにして、依頼主であるあなたの目を盗み、犯行に及ぶのか。その汚い手口を白日の下に晒します。敵の手口を知ることが、最大の防御になります。

「ゴミとして処分します」という言葉の嘘

最も古典的でありながら、現在も横行しているのが「廃棄処分」を装った横領です。 依頼主に対しては「これは古いし汚れているので、ゴミとして処分代がかかります」と説明し、処分費用を請求します。しかし、実際にはその品物を廃棄せず、裏で古物市場や海外輸出ルートへ流して売却益を得ているのです。

  • 依頼主からの処分費用
  • 転売による売却益

この二重取りこそが、悪徳業者の旨味です。特に、素人目には価値がなさそうに見える「古い鉄瓶」「贈答品のタオル」「壊れたオーディオ機器」などが狙われます。「ゴミだと思っていたものが盗まれていた」ことに気づく遺族はほとんどいません。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

業者が使う「処分」という言葉に騙されてはいけません。彼らにとっての処分とは、「捨てる」ことではなく、「自分たちの利益になるように処理する」ことを指す場合があります。「廃棄証明書」の発行を拒む業者は、この手口を使っている可能性が極めて高いと疑ってください。

巧妙なチームプレーによる「撹乱(かくらん)作戦」

「作業中は私も立ち会うから大丈夫」と思っていませんか? プロの窃盗団まがいの業者は、あなたの監視をすり抜けるためのフォーメーションを組んでいます。

よくある手口が、意図的な人員配置です。 リーダー格の愛想の良いスタッフが、リビングであなたに話しかけたり、思い出話を聞くふりをして注意を引きつけます。その隙に、他のスタッフが奥の部屋や2階で、金目のものをポケットに入れたり、段ボールの底に隠したりするのです。

人間は、一度に複数の場所を見ることはできません。彼らはその心理的な死角を巧みに突いてきます。

トラック積込時の「すり替えマジック」

部屋の中では完璧に監視していても、盲点となるのがトラックへの積み込みです。 多くの現場では、「廃棄用トラック」と「リサイクル(転売)用トラック」を分けたりせず、一度すべて同じトラックに詰め込みます。

悪徳業者は、依頼主が見ていない一瞬の隙に、高価な貴金属や骨董品を、ゴミ袋に見せかけた袋に入れてトラックの運転席や、荷台の奥深くに隠します。一度トラックに積まれてしまえば、「もう積み込んだので出せません」「ゴミ処理場に直行します」と言われれば、それまでです。

【お片づけの窓口独自アンケート】

私たちは、実際に遺品整理業者を利用し、作業中に「不審だ」と感じた経験のある男女240名に緊急アンケートを行いました。

Q. 作業中のスタッフの行動で、最も「怪しい・怖い」と感じた瞬間は?
  • 自分たちがいる部屋とは別の部屋へ入るのをなぜか止められた・嫌がられた(48%)
  • スタッフ同士が小声や目配せで合図し合っていた(28%)
  • トラックへの積み込み作業を見ようとしたら「危ない」と強く制止された(15%)
  • その他(9%)

※調査期間:2023年9月〜11月 対象:弊社へご相談いただいた、他社利用経験のあるお客様

この結果からも分かる通り、彼らは「見られること」を極端に嫌がります。もし作業中に「お客様はホコリが舞うのであちらでお待ちください」と、頑なに現場から遠ざけようとする業者がいれば、それは優しさではなく「犯行の合図」かもしれません。

見積もりは「泥棒の下見」と同じ

衝撃的な事実をお伝えしますが、ネコババのリスクは契約前の見積もりの段階から始まっています。 悪徳業者は、見積もりのために部屋を見て回りながら、単に荷物の量を測っているだけではありません。「どこに金庫があるか」「どの棚に貴金属がありそうか」「依頼主はこの家の資産状況を把握しているか」を詳細にリサーチしています。

最悪のケースでは、見積もりの最中に、トイレを借りるふりや、別の部屋を確認するふりをして、小さな貴金属をポケットに入れる「つまみ食い」も発生しています。契約していない業者だからといって、絶対に目を離してはいけません。


参考リンク: 独立行政法人 国民生活センター:遺品整理サービスでの契約トラブル-高額請求、見積もりの際の物品の紛失等に注意-


第1章では、彼らの手口がいかに日常業務の中に溶け込んでいるかを見てきました。 「まさかそこまで」と思うかもしれませんが、これはビジネスとして行われている現実です。

では、具体的に「どんなもの」が狙われやすいのか? 現金や宝石だけだと思っていませんか?実は、あなたが「ガラクタ」だと思って放置しているモノこそが、彼らの最大のターゲットなのです。

続く第2章では、プロの窃盗業者が狙う「意外な危険リスト」を公開します。これを知らずに業者を家に入れるのは、財布を落として歩くのと同じです。

第2章 狙われるのは現金だけではない「危険なリスト」

「うちはそんなにお金持ちじゃないから、盗まれるものなんてない」 そう思っていませんか?

その油断こそが、悪徳業者の思う壺です。彼らは「現金」だけを探しているわけではありません。プロの窃盗団的な業者は、あなたが「ガラクタだと思っているもの」「存在すら忘れているもの」にこそ、莫大な価値があることを熟知しています。

この章では、業者が虎視眈々と狙っている、一般家庭に眠る「意外なターゲット」をリストアップしました。これらを知らずに業者を招き入れることは、みすみす財産を譲り渡すようなものです。

1. タンス預金・へそくりの「隠し場所」ランキング

高齢の方は、銀行よりも手元に現金を置くことを好む傾向があります。そして、その隠し場所は驚くほど共通しています。業者は作業をしながら、以下の場所を真っ先にチェックします。

  • 衣類のポケット: コートや背広の内ポケットはもちろん、着物のたもと、靴下の中。
  • 本や雑誌の間: 封筒に入れたお札が挟まっています。
  • 台所用品: 冷蔵庫の奥、米びつの中、タッパーの中。
  • 仏壇まわり: 引き出しの奥や、骨箱の中。
  • 畳の下・床下: 昔ながらの隠し場所ですが、今でも現役です。

家族でさえ知らない場所にある現金を、業者は片付けのプロとしての経験則から、いとも簡単に見つけ出します。そして、見つけた瞬間にポケットに入れてしまえば、「最初から無かったこと」にされてしまいます。

2. 素人にはゴミに見える「お宝」たち

これが最も厄介なネコババの手口です。 あなたにとっては「汚れた古い道具」でも、中古市場では数万円、数十万円で取引されるものが多々あります。業者はこれらを「処分代がかかるゴミ」と言って回収費用を取りつつ、裏で高値で転売します。

特に狙われやすいのは以下の品目です。

  • 鉄瓶・茶道具: サビだらけの南部鉄器や、桐箱に入った茶碗。中国富裕層向けの需要が高く、高値で取引されます。
  • 古銭・切手: 額面以上の価値があるプレミア品が混ざっていても、素人は「古いお金」としてまとめて処分しがちです。
  • 昭和のレトロおもちゃ: ブリキのロボット、ソフビ人形、未開封のプラモデル。マニアの間では驚くような価格がつきます。
  • オーディオ・カメラ: 壊れて動かないジャンク品でも、部品取りとしての需要があり、ネコババの格好の標的になります。
【編集長からのワンポイントアドバイス】

「汚いから捨てていい」と即断するのは危険です。特に、箱に入っているもの、重みのある金属製品、古い紙類(古地図やチラシなど)は、一度立ち止まってください。メルカリやヤフオクなどの相場を少し調べるだけでも、業者の「ゴミですね」という嘘を見抜けるようになります。

3. 悪用されると最も怖い「個人情報」

金銭的な被害以上に恐ろしいのが、個人情報の持ち出しです。 実印、権利書、通帳、クレジットカード、そして「故人の運転免許証や保険証」。これらは、闇ルートで売買されたり、振り込め詐欺の道具として使われたりするリスクがあります。

「故人はもう亡くなっているから大丈夫」ではありません。空き家となった実家の名義変更が済んでいない間に、権利書を悪用されるトラブルも発生しています。これらは物理的な「モノ」としての価値以上に、あなたの家族の安全を脅かす危険物になり得ると認識してください。

【お片づけの窓口独自アンケート】

実際に遺品整理を行い、後になって「あれは価値があったのではないか?」と後悔した経験を持つ男女310名にアンケートを実施しました。その結果、多くの人が「現金以外」のものを安易に手放してしまっている実態が明らかになりました。

Q. 業者に「処分・回収」されたもので、後から「売ればよかった・取っておけばよかった」と最も後悔したものは?
  • アクセサリー・時計(壊れていたもの含む)(42%)
  • コレクション品(切手、古銭、フィギュアなど)(35%)
  • 着物や帯(15%)
  • その他(8%)

※調査期間:2024年2月〜4月 対象:弊社セミナー参加者および相談者

このアンケート結果で注目すべきは、「壊れていたもの」でも後悔している人が多い点です。「壊れている=ゴミ」という常識は、遺品整理の現場では通用しません。金(ゴールド)やプラチナは、ちぎれていても変形していても、グラム単位で資産価値があるからです。


参考リンク: 環境省:不用品回収業者に関するトラブルにご注意ください ※無許可の回収業者が、価値ある家電等を不適正に持ち去るケースについて警告されています。


ここまで読んで、家の中にある「守るべきもの」の輪郭がはっきりしてきたはずです。 しかし、敵もプロです。「これは大切だから」とあなたが隠そうとしても、巧みな話術や心理戦で契約を迫ってきます。

次章、第3章では、そんな「泥棒業者」を契約前の段階で見抜き、リストから弾くための具体的なフィルタリング術を伝授します。 見積書一枚、名刺一枚から、彼らの本性を見破る方法があります。

第3章 「泥棒業者」を契約前に弾くフィルタリング術

「どの業者もホームページは綺麗だし、どこを選べばいいか分からない」

そう迷っているなら、少し見方を変えてみましょう。 ホームページのデザインや甘いキャッチコピーを見るのではなく、「犯罪の予兆」を探すのです。ネコババをするような悪徳業者には、契約前の段階で必ずボロが出ます。

この章では、あなたが探偵になったつもりで、悪質業者を炙り出すための具体的なチェックポイントを伝授します。彼らを家に入れる前に、水際で食い止めましょう。

見積書に潜む罠:「一式」表記と「安すぎる金額」

見積書をもらった時、合計金額だけを見ていませんか? 悪徳業者を見抜く最大のヒントは、金額ではなく「内訳」にあります。

もし、見積書の項目に「遺品整理一式 20万円」としか書かれていなかったら、その場でお引き取り願いましょう。 この「一式」という言葉は、業者にとって魔法の隠れ蓑です。「どの作業が含まれ、どの荷物がどう処理されるか」を曖昧にすることで、後から何がなくなっても「それは処分範囲内でした」と言い逃れできるようにしているのです。

また、他社に比べて異常に安い見積もりも危険信号です。 人件費や処分費を削って赤字ギリギリで請け負う業者は、どこで利益を出すのでしょうか?そうです。現場から出てきた「金目のもの」を黙って持ち帰る(ネコババする)ことで、帳尻を合わせている可能性が極めて高いのです。 「安物買いの銭失い」どころか、「安物買いの財産失い」になりかねません。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

まともな業者の見積書なら、「人件費」「車両費」「処分費(部屋ごとや立米単価)」などが細かく記載されています。さらに信頼できる業者は、「貴重品捜索費」や「買取査定額」を明確に別項目として計上します。「全部コミコミで安くしますよ」という甘い言葉は、泥棒の誘い文句だと思ってください。

「古物商許可」を持っていない業者は論外

遺品整理の過程で、少しでも価値のあるものを買い取ってもらう、あるいはリサイクルに回す場合、業者は必ず都道府県の公安委員会から「古物商許可」を得ていなければなりません。

この許可を持っていないのに「なんでも引き取ります」と言う業者は、違法業者です。 法律を守らない彼らが、あなたの家のルールや財産を守るはずがありません。ホームページの会社概要や、名刺の端に「古物商許可番号(第〇〇号)」の記載があるか、必ず確認してください。記載がなければ、その時点で候補から外すべきです。

スタッフの質で見抜く:名刺と靴下

訪問見積もりに来たスタッフの立ち振る舞いは、その会社のモラルを映す鏡です。 特に以下の点は、窃盗リスクと直結します。

  • 名刺を渡さない: 自分の身元を明かさないのは、トラブルが起きた時に逃げる気満々だからです。
  • 即決を迫る: 「今決めてくれたら5万円引きます」と契約を急かすのは、あなたに考える時間を与えず、冷静な判断力を奪うためです。
  • 身だしなみが汚い: 汚れた靴下で平気で他人の家に上がる神経の持ち主は、故人の遺品を丁寧に扱うという意識が欠落しています。

「たかがマナー」と思わないでください。小さなルールの軽視は、やがて「バレなければ盗んでもいい」という大きなモラルの崩壊に繋がります。

【お片づけの窓口独自アンケート】

私たちは、遺品整理の見積もり段階で「この業者はやめておこう」と判断し、トラブルを回避できた男女280名にアンケートを行いました。彼ら「危険だ」と直感した最大の要因は、金額ではなく「不透明さ」でした。

Q. 見積もり時に「この業者は信用できない」と判断した決め手は?
  • 見積もりの内訳が「一式」など大雑把で、質問しても明確な回答がなかった(55%)
  • 「今契約しないと高くなる」と強い圧力をかけてきた(25%)
  • スタッフの態度が高圧的、または不潔だった(15%)
  • その他(5%)

※調査期間:2023年6月〜8月 対象:弊社サービス利用者へのヒアリング

半数以上の方が、どんぶり勘定の「一式」見積もりを警戒しています。この直感は正解です。内訳を説明できない業者は、作業内容も処分フローも、すべてがブラックボックスだからです。

口コミサイトの裏読み術

ネット上の口コミや評判も参考になりますが、星の数だけで判断してはいけません。 悪徳業者は、サクラを使って良い評価を量産していることがあります。

注目すべきは、低評価のレビューの中身です。 「スタッフが優しかった」「仕事が早かった」という抽象的な高評価よりも、以下のような具体的なキーワードが含まれる低評価を探してください。

  • 「物がなくなった」
  • 「説明と違う追加料金をとられた」
  • 「雑に扱われた」

たとえ全体の評価が高くても、このような「盗難・紛失・金銭トラブル」を示唆する口コミが1件でもあれば、その業者は避けるのが賢明です。火のない所に煙は立ちません。


参考リンク: 警視庁:古物商許可業者一覧 ※東京都の例ですが、各道府県の警察HPで正規の許可業者を確認できます。依頼しようとしている業者が本当に許可を得ているか、裏取りをすることをお勧めします。


ここまでのフィルタリングで、明らかに怪しい業者は排除できたはずです。 しかし、契約した業者が「優良業者」に見えたとしても、まだ安心はできません。魔が差す瞬間は誰にでもあります。

最終的にあなたの財産を守れるのは、現場でのあなた自身の行動だけです。 次章、第4章では、作業当日にあなたがどこに立ち、どう振る舞えばネコババを物理的に阻止できるのか。プロも嫌がる「鉄壁の監視・管理術」を解説します。

第4章 現場での自衛策:あなた自身ができる監視と管理

「良い業者を選んだから、あとはお任せで大丈夫」 そう思って作業当日にリラックスしてしまうのは、あまりにも無防備です。

どんなに評判の良い会社でも、実際に作業をするのは「人間」です。目の前に札束や高価な貴金属が無造作に転がっていれば、魔が差してしまう瞬間がないとは言い切れません。 性善説に頼るのではなく、「魔が差す隙を与えない環境」を作ることこそが、依頼主であるあなたの責任であり、最大の自衛策です。

この章では、プロの業者も「この家では絶対に手出しできない」と観念する、鉄壁の現場管理術を伝授します。あなたが現場監督となり、主導権を握ってください。

1. 「事前捜索」で聖域を作る

業者が到着する前に、勝負は始まっています。 最も確実な防衛策は、「業者の目に触れる前に、自分たちで確保してしまうこと」です。

特に第2章で紹介した「タンス預金」や「権利書関係」は、業者を入れる前に徹底的に捜索し、家から持ち出してください。もし持ち出しが難しい場合は、鍵のかかる一部屋を「立ち入り禁止エリア(セーフティゾーン)」に指定し、そこに貴重品を全て移動させます。

「一緒に探してもらおう」という考えは捨ててください。一緒に探しているフリをして、あなたの背後でポケットに入れられたら、それを証明する手立てはありません。

2. 「リストの存在」を匂わせて心理的ロックをかける

作業開始前のミーティング(朝礼)で、現場の責任者に必ず伝えてほしいキラーフレーズがあります。

「事前に親族で家の中を調べ、貴重品リストを作成してあります。もしリストにないものが出てきたら、必ず報告してください」

実際に完璧なリストがなくても構いません。「遺族は何があるか把握している」と宣言することが重要です。これにより、スタッフ全員に「下手に盗めばすぐにバレる」という強烈なプレッシャー(心理的ロック)をかけることができます。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

スタッフ全員に聞こえるように、あえて大きな声で伝えるのがコツです。責任者だけが良い人でも、アルバイトスタッフが盗むケースがあるからです。「管理の目が厳しい現場だ」という空気を最初に作ってしまいましょう。

3. 最強の検問所は「玄関」と「トラック前」

作業中、あなたはどこにいるべきでしょうか? リビングのソファに座ってスマホを見ているのは最悪です。スタッフはあなたの死角で自由に動けてしまいます。

最も効果的な監視ポジションは、「搬出動線上の玄関」または「トラックの積込場所」です。 家の中から持ち出される全てのモノは、必ずここを通ります。

  • 玄関: スタッフが何を抱えて出ていくかをチェックできます。
  • トラック前: 「廃棄用」と「リサイクル用」のどちらに積まれたかを確認できます。

あなたがここに立っているだけで、スタッフはポケットに入れた盗品を外に持ち出すことができなくなります。まさに物理的な「検問」です。

4. 「お任せ(鍵預かり)」は密室を作る危険行為

遠方に住んでいるなどの理由で、鍵を業者に預けて立ち会いなしで作業してもらうプランがありますが、ネコババを懸念するなら絶対に利用してはいけません

誰も見ていない密室で行われる作業は、もはや無法地帯です。「捨てておきました」と言われれば、それが真実になります。 どうしても立ち会えない場合は、親戚に代行を頼むか、カメラでのリアルタイム監視を許可する業者を選ぶなど、必ず「第三者の目」を介入させてください。

【お片づけの窓口独自アンケート】

私たちは、遺品整理の作業に立ち会った男女260名に、「どのような行動がスタッフへの牽制(けんせい)になったと感じたか」を調査しました。その結果、具体的な**「声かけ」「視線」**が、不正抑止に効果的であることが分かりました。

Q. 作業中、スタッフの動きが「ピリッとした(緊張感を持った)」と感じたあなたの行動は?
  • 定期的に「何か貴重品は出てきませんか?」と声をかけ、作業の手元を覗き込んだ(45%)
  • 玄関やトラックの前で、搬出物を一点一点チェックしていた(30%)
  • 作業前後の部屋の写真を、スタッフの前で撮影した(18%)
  • その他(7%)

※調査期間:2023年12月〜2024年2月 対象:弊社コラム読者アンケート

「見ているぞ」というアピールは、言葉以上に効果があります。 遠慮せずに「それは何ですか?」「中身を見せてもらえますか?」と声をかけてください。正当な業者なら、嫌な顔一つせず見せてくれるはずです。逆に、そこで焦ったり隠そうとしたりするスタッフがいれば、その場で作業を止めさせる勇気を持ってください。


参考リンク: 一般社団法人 遺品整理士認定協会:遺品整理のトラブル事例と対策 ※認定協会でも、立ち会いの重要性や、丸投げによるトラブルへの注意喚起を行っています。


ここまでで、現場での防御態勢は整いました。 しかし、どんなに完璧に監視していても、人間には限界があります。万が一、作業が終わった後に「やっぱりあれがない!」と気づいたら、どうすればいいのでしょうか?

泣き寝入りするしかない? いいえ、まだ戦う手段はあります。 最終章となる第5章では、被害に遭ってしまった時のための「証拠」の残し方と、法的・金銭的な解決策について解説します。転ばぬ先の杖として、必ず知っておいてください。

第5章 もしもの時のための「証拠」と「契約」

「作業後に指輪がないことに気づいたが、証拠がなくて泣き寝入りした」 これが、遺品整理における最悪の結末であり、最も多いトラブルのパターンです。

第4章までの対策を行っても、万が一ネコババ被害に遭ってしまった場合、あなたを守る最後の砦となるのが「契約書」と「客観的な証拠」です。 「口約束」はトラブルの元です。ここでは、法的に自分を守り、損害を取り戻すための具体的な準備について解説します。

契約書は「サインする」ものではなく「武器にする」もの

多くの人が、業者から渡された契約書を読みもせず、言われるがままにサインしてしまいます。しかし、悪徳業者の契約書には、恐ろしい免責条項(逃げ道)が書かれていることがあります。

特に注意すべきは以下の文言です。 「作業終了後の紛失・破損等については、一切の責任を負いかねます」

この一文があると、作業が終わって業者が帰った後に盗難に気づいても、「契約通り責任は負いません」と門前払いされてしまいます。 契約の際は、必ず以下の点を確認し、記載がなければ追記(特約)を求めてください。

  • 損害賠償の範囲: 故意(盗難)または過失(破損)による損害が発生した場合、全額賠償することを明記させる。
  • 発見された貴重品の扱い: 「現金、貴金属、権利書等が発見された場合は、直ちに依頼者に報告し引き渡す」という一文を入れる。

まともな業者であれば、これらの条項を拒否することはありません。拒むようなら、その時点で契約を破棄すべきです。

「損害賠償保険」の落とし穴

「うちは保険に入っているから安心です」 その言葉を鵜呑みにしてはいけません。業者が加入している「賠償責任保険」には、適用範囲(カラクリ)があるからです。

一般的に、業者が加入する保険は「対物補償(壁を壊した、家具を割った)」がメインです。 実は、「盗難」は補償対象外であるケースや、警察による盗難届と犯人の特定がないと保険が下りないケースが非常に多いのです。

「その保険は、スタッフによる盗難もカバーしていますか?」と単刀直入に聞いてください。そして、可能であれば保険証書のコピーを見せてもらいましょう。「盗難」の文字がなければ、その保険はネコババ対策にはなりません。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

口頭での確認だけでは不十分です。見積もりの際、担当者の会話を(許可を取って)スマホで録音しておくのも有効な自衛策です。「盗難も補償します」と言った音声データがあれば、後で「対象外だ」と言い逃れされた時の強力な証拠になります。

スマホは最強の監視カメラ

現場において、あなたのスマートフォンは最強の武器になります。 作業風景を動画で撮影することに対し、法的問題はありません。あなたの家の中で、あなたが依頼した作業を記録する正当な行為だからです。

  • 作業前の部屋の状態: どこに何があったかを証明する「Before」映像。
  • 作業中のスタッフの動き: 特に貴重品がある部屋の作業風景。

これらを撮影しておくことは、証拠保全だけでなく、スタッフへの強烈な牽制になります。「常にカメラが回っている」という状況下で、堂々とポケットに物を入れる泥棒はいません。 もし「撮影はやめてください」と頑なに拒否する業者がいたら、それは「見られては困ることをする」という自白も同然です。

【お片づけの窓口独自アンケート】

私たちは、遺品整理後に紛失や破損トラブルを経験したものの、補償を受けられずに「泣き寝入り」した男女190名に、その原因を調査しました。その結果、圧倒的多数が「存在の証明」ができなかったことで敗北していました。

Q. 業者に損害賠償を求めた際、断られた(逃げられた)最大の理由は?
  • 「最初からその場所にその品物は無かった」と言い張られ、あったことを証明できなかった(58%)
  • 契約書の「作業後のクレームは受け付けない」という免責事項を盾にされた(25%)
  • 業者が音信不通になった(12%)
  • その他(5%)

※調査期間:2023年5月〜7月 対象:弊社トラブル相談窓口への利用者

この結果が示す事実は残酷です。「あったはずだ」という記憶だけでは、盗難は立証できません。だからこそ、作業前の写真や動画が、あなたの財産を守る唯一の証拠になるのです。


参考リンク: 法務省:契約に関するトラブルを防ぐために ※契約書の重要性と、消費者が注意すべき法的ポイントについて解説されています。


ここまでの全5章で、ネコババの手口から、契約前の選び方、現場での監視、そして事後の証拠保全まで、全ての防衛策をお伝えしました。これらを実践すれば、悪徳業者につけ入る隙を与えることはまずありません。

しかし、まだ細かい疑問が残っているかもしれません。 「これって詐欺?」「こんな時はどうすれば?」 最後となる次回のセクションでは、よくある質問にズバリ答える「Q&Aセクション」をお届けします。あなたの最後の不安を払拭します。

第6章 遺品整理のネコババに関するQ&A

ここまで、悪徳業者の手口とその防衛策について解説してきました。 しかし、いざ依頼するとなると、個別の状況に応じた細かい疑問や不安が出てくるものです。

最終章となる今回は、実際に当サイトへ多く寄せられる「ネコババ・盗難トラブル」に関する切実な質問に対し、オブラートに包まず、業界の現実(リアル)を回答します。

Q1. 作業が終わった後に「あれがない」と気づきました。警察は動いてくれますか?

A. 残念ながら、証拠がなければ警察が動くのは非常に困難です。

警察には「民事不介入」という原則があります。単に「物がなくなった」だけでは、それが盗難なのか、家族がどこかにやったのか、最初からなかったのかが判別できないため、事件として扱ってもらえない(被害届を受理してもらえない)ケースが大半です。

警察を動かすには、「いつ、誰が、何を盗んだか」を証明する客観的な証拠(防犯カメラの映像など)が不可欠です。だからこそ、第5章でお伝えした「作業前の撮影」や「事前のリスト化」が、あなたを守る唯一の命綱になるのです。

Q2. 「買取価格」が安すぎる気がします。これも一種のネコババですか?

A. はい、相場より著しく低い査定は「合法的ネコババ」と言えます。

例えば、市場価値が10万円ある着物を「古いので1,000円ですね」と言って買い叩く行為です。形式上は「合意の上での売買」になるため、後から詐欺だと訴えるのは難しいのが現状です。

これを防ぐには、「相見積もり」しかありません。遺品整理業者だけでなく、専門の買取業者(着物買取、骨董買取など)にも査定を依頼し、価格を比較してください。「餅は餅屋」です。整理業者の査定額を鵜呑みにしてはいけません。

Q3. 遠方のため立ち会いができません。絶対に盗まれない方法はありますか?

A. 「絶対」はありませんが、リスクを最小化する「リモート監視」という手があります。

どうしても現地に行けない場合、以下の条件を飲んでくれる業者を探してください。

  1. リアルタイム中継: LINEビデオ通話やZoomを繋ぎっぱなしにして、作業風景を常に映してもらう。
  2. GoProなどの装着: スタッフの視点を録画してもらい、後でデータを提出させる。

これを「面倒だ」「信用していないのか」と拒否する業者は、監視されては困る理由があるということです。潔白な業者は、むしろ自分たちの身の潔白を証明するために喜んで協力してくれます。

【編集長からのワンポイントアドバイス】

立ち会いができない場合こそ、「遺品整理士」などの資格よりも、「地元での評判」や「顔が見える関係」を重視してください。可能であれば、近所の信頼できる知人や、行政書士などの第三者に、当日の立ち会い代行を依頼するのも賢い投資です。

Q4. 「遺品整理士」の資格を持っている業者なら100%信用して大丈夫ですか?

A. 資格は「安心材料の一つ」ですが、「100%の保証書」ではありません。

「遺品整理士」は民間資格であり、取得には一定の講習を受けていますが、それは「知識がある」ことの証明であり、「絶対に魔が差さない聖人君子である」ことの証明ではありません。

実際に、資格保有者が在籍する会社でもトラブルは起きています。資格の有無だけでなく、会社の歴史、スタッフの教育体制、そして何より「あなた自身が対面した時の直感(第3章参照)」を総合して判断してください。

【お片づけの窓口独自アンケート】

私たちは、遺品整理で盗難や紛失トラブルに遭い、実際に警察や消費者センターへ相談した経験のある男女150名に、「その後どうなったか」という追跡調査を行いました。現実は非常にシビアです。

Q. 公的機関に相談した結果、どのような結末になりましたか?
  • 証拠不十分で対応してもらえなかった・泣き寝入りした(65%)
  • 業者が過失を認め、一部返金や示談に応じた(20%)
  • その他(弁護士を入れた等)(10%)
  • 警察に被害届が受理され、捜査が行われた(5%)

※調査期間:2022年4月〜2023年3月 対象:弊社トラブル相談室への過去利用者

この「65%が泣き寝入り」という数字を見てください。一度盗まれてしまえば、取り返すのはこれほど難しいのです。だからこそ、「盗ませない予防」に全力を注ぐ必要があるのです。


参考リンク: 消費者庁:消費者ホットライン「188」 ※万が一トラブルになった際、局番なしの188にかければ、最寄りの消費生活センターにつながり専門的なアドバイスを受けられます。


最後に:遺品整理は、故人との最後の共同作業

ここまで、少し怖い話もしましたが、これが遺品整理業界の偽らざる現実です。 しかし、恐れる必要はありません。

あなたは今、「敵の手口」を知り、「業者の選び方」を学び、「現場での守り方」を手に入れました。 何も知らずに業者任せにするのと、知識武装して業者と対峙するのとでは、結果は天と地ほど変わります。

遺品整理は、単なる片付けではありません。 故人が生涯をかけて築き上げた証を、次へ繋ぐための大切な儀式です。 その大切な遺品を、心無い泥棒たちに奪われないでください。主導権は、常に依頼主であるあなたにあります。 毅然とした態度で業者を管理し、納得のいく、そして心残りのない遺品整理ができることを、心より応援しております。

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