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EPISODE 01

第1話 無料のはずが、十八万円

第1話 1ページ目|深夜の住宅街を、拡声器を載せた白いトラックが巡回する。「ご家庭でいらなくなった品物——無料で回収しまーす」
第1話 2ページ目|引っ越しの見積もりを見て青ざめる女性。「引っ越しって…こんなにお金かかるの!?」窓の外の声を聞き、トラックを呼び止める。「すみませーん!お願いしたいんですけど!」
第1話 3ページ目|「回収屋」の作業服を着た金髪の男が笑顔で応じる。「まいど〜!どれでも積んじゃいますよ〜」「全部無料っすよ〜!」不安げに尋ねる女性。「あの、お金って…」
第1話 4ページ目|家財を積み終え、ロープを締める作業員。電卓に180,000と表示して突きつける。「作業費・運搬費・処分費で〜18万円ね」
第1話 5ページ目|「そんな…無料って言ったじゃないですか…!」「“回収は”無料。積んだ後のキャンセルは不可なんで」「降ろしてほしけりゃ降ろし料も別途ね?」作業同意書を差し出され、女性の手が震える。
第1話 6ページ目|ナレーション「——サインしちゃダメだ」。街灯の下に、「お片づけの窓口」の作業服を着た灰谷カイと権田が立つ。
第1話 7ページ目|カイが指を折って数える。「契約書もない 見積もりもない」「社名すら名乗ってない。——それが答えだよ」。金髪の男が凄む。「あ?同業か?邪魔すんな」
第1話 8ページ目|トラックの荷台を見つめるカイ。家電の下に敷かれた布団、転がる食器。「——読める」
第1話 9ページ目|「家電の下に布団。割れ物は無造作」。ていねいな積み方と雑な積み方を◯×で対比。「リユースする気のない“捨てるための積み方”だ」
第1話 10ページ目|「あんた、この荷物の行き先、言える?」「そ…そりゃ、リサイクル工場に…」。山中に不法投棄された家電の山。「言えないよな。——山の中なんだから」
第1話 11ページ目|睨み合うカイと金髪の男、その間で立ちすくむ依頼者の女性。「……ハッタリこいてんじゃねえぞ」
第1話 12ページ目|手を出そうとした金髪の男の腕を、権田が掴む。「にいちゃん、手ぇ出すなら相手を選びな」
第1話 13ページ目|権田が指さす。「その横っ腹、ステッカー剥がした跡があんなあ」。トラックの側面に残る鷲のマークの跡。「——この形…」
第1話 14ページ目|回想。鷲のマークのトラックが古い家に横づけされ、作業員たちが家財を運び出していく。それを見つめる少年。「あの日と、同じ——」
第1話 15ページ目|カイがスマホの録音画面を見せる。「録音してある」「積み込み前の“全部無料っすよ”って声もな」「警察と消費生活センター、どっちから行く?」
第1話 16ページ目|覆面パトカーが停まり、犬飼刑事が警察手帳を示す。「県警生活安全課だ。通報があってね」。動揺する金髪の男。「(いつの間に通報…!?)」
第1話 17ページ目|雨の中、トラックで逃走する男。「覚えてろよ!!」。ナンバーを控える犬飼刑事。「どうせ偽装ナンバーだろうがな…」。降ろされた家財の前に立つ女性とカイ。
第1話 18ページ目|後日。「お片づけの窓口」の店舗と事務所。相談に訪れた女性が席につく。
第1話 19ページ目|相談員が名乗る。「担当の三隅ヒナです!よろしくお願いします!」。見積書を指して「作業費・運搬費の内訳はここ。追加が出る場合は必ず作業前にご相談します」「え…!?」
第1話 20ページ目|「最初からこっちに頼めばよかった…」「“呼ぶ前に比べる”でいいんです」「うちは、その比較に負けない仕事をするだけなので!」
第1話 21ページ目|事務所の壁に飾られた古い感謝状「地域互助会」。「これ、古いですね」「それ、私も由来知らないんですよね〜。所長に聞いても笑うだけで」
第1話 22ページ目|休憩スペース。権田がコーヒーに角砂糖をいくつも落とす。カイ「よく飽きないな、その甘さ」「——こいつが、俺の供養なんだよ」。鷲のマークの入ったマグカップ。
第1話 23ページ目|「本当にありがとうございました!」と頭を下げる依頼者を見送るスタッフ。夕暮れの「お片づけの窓口 不用品回収・遺品整理」の看板。「モノを読む回収屋の、これはほんの序章——」
第1話 24ページ目|深夜の廃工場。逃げた金髪の男が電話をかける。「すんません、カラスさん…“遺品読み”とか言う男に、潰されました…」
第1話 25ページ目|無数の鳥籠が吊るされた洋館。籠の中に吊るされた古い鍵。受話器を持つ男のシルエット。
第1話 26ページ目|「灰谷…カイ?」。口元だけを歪めて笑う男。「——へえ。“あの家”の孫か」。手元には折り鶴。
第1話 27ページ目|祖母の遺影を納めた仏壇に手を合わせる灰谷カイ。月明かりの下、古い鍵を見つめる。「第1話・完/つづく」

同じ思いをする前に。

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— 第1話 おわり —

第1話 巻末コラム

その「無料」、費用は誰が払っているか
ご存知ですか?

住宅街をゆっくりと流れる、あの音楽。
「ご家庭でいらなくなった品物、無料で回収しまーす」

聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
もしかすると、最近あなたのご自宅の前も通ったかもしれません。

ですが、少しだけお待ちください。

「無料」で成り立つ商売など、
この世にそう多くはありません。

トラックのガソリン代。人件費。作業員の方々の生活。
すべてが本当にタダで済むはずがないのです。
それでも「無料」を掲げられる理由――それは、回収した後の別の場所で、しっかりと元を取っているからにほかなりません。

パターン①積み込んだ後の“手のひら返し”

「全部無料っすよ〜」と愛想よく積み込んだ直後、荷台が満杯になった途端に態度が一変します。

「積んだ後のキャンセルはできない決まりでして」
「作業費・運搬費・処分費で、○万円になります」

第1話に登場したやり口が、まさにこれです。
「無料」なのは、あくまで“回収そのもの”だけ。積む前と積んだ後で、ルールが変わってしまう――これが最も多いご相談のパターンです。

一度トラックに積み込まれてしまうと、「もう自分のモノではない」と錯覚させられ、渋々高額な請求に応じてしまう方が後を絶ちません。

パターン②行き先を、誰も答えられない

無料回収トラックが積んでいった、ご家庭の家具や家電。
「リサイクルするので無料なんです」というご説明を耳にされたことはないでしょうか。

そんな時こそ、こう尋ねてみてください。

「では、それはどちらの工場に
持っていかれるのですか?」

この質問に、きちんとお答えいただける業者は驚くほど少ないのが実情です。
答えられないということは――行き先は工場ではなく、人目につかない山中や空き地である可能性があるということです。回収した品を、そのまま不法投棄してしまう。それも、あなたのお名前やご住所が記されたままの状態で、です。

パターン③狙われているのは、「今」お困りの方

無料回収トラックが多く出没するのは、引っ越しシーズンや大掃除の時期です。
つまり、「今すぐ、少しでも安く片づけたい」と焦っていらっしゃる方のもとに、あえて現れます。

冷静にお考えいただく時間を与えないスピード感。
「今すぐ決めないと損」という空気作り。
これは偶然ではなく、明確な手口です。

では、どうすればよいのか

難しいことではございません。ぜひ3つだけ、覚えてお帰りください。

  1. ①
    その場でサインしない、その場で積ませない 一呼吸置くだけで、相手の畳みかけは効かなくなります。
  2. ②
    「本当に無料ですか?」と、はっきりお尋ねください 言葉を濁したり、話をそらしたりする場合――それがすでに答えです。
  3. ③
    迷ったら、比べてください 1社の言い値をそのまま信じないでください。他社と比較するだけで、悪意のある業者は驚くほど簡単に馬脚を現します。

モノは、嘘をつきません。
ですが、人は嘘をつきます。

主人公・灰谷カイの口癖は「モノは、嘘をつかない」です。
ですが、この言葉には続きがあります。

モノは嘘をつきません。だからこそ、そのモノを扱う人が信頼できるかどうか――そこがすべてを決めるのです。

もし今日、あなたのご自宅の前にも、あの音楽が流れてきたら。
呼び止める前に、少しだけ思い出してみてください。

「その無料は、いったい誰が
払っているのだろう?」と。

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