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EPISODE 03

第3話 押し買いの女

第3話 1ページ目|お片づけの窓口の事務所。泣きながら相談に来た女性に、三隅ヒナが寄り添う。「大丈夫ですか?どうぞ、深呼吸してください」「母が、着物を売ったら……指輪まで持っていかれたんです」
第3話 2ページ目|ヒナ「指輪まで……。ご本人は、納得されてるんですか?」。女性「納得なんてしてません!でも、何を聞いても口を閉ざしてしまって……」。テーブルの上で握りしめられた拳。
第3話 3ページ目|扉の陰で話を聞いていた灰谷カイ。手元の資料の「訪問購入」の文字に赤い矢印。「行ってみよう。……本人が“庇ってる”時は、大抵、庇う理由がある」
第3話 4ページ目|古い日本家屋の門前。ヒナがインターホンを押す。「ピンポーン」。やがて引き戸が「ガラ…」と開き、着物姿の老女が顔をのぞかせる。
第3話 5ページ目|座敷に正座して迎える老女。向かい合って座るカイとヒナ。老女は目を伏せて言う。「わざわざ、すみませんねぇ……」
第3話 6ページ目|部屋を見渡すカイの目。畳の上には座布団が2枚。「座布団が2枚だけ日に焼けていない。——業者は2人組だ」
第3話 7ページ目|食器棚に並ぶ3つの湯呑み。うち1つには茶托がない。カイ「湯呑みの跡は3つ。1つだけ茶托がない。……急に加わった3人目がいる」
第3話 8ページ目|老女の肩がビクッと跳ねる。「さ、3人目なんて、いませんよ」。その様子をじっと見つめるカイの目。
第3話 9ページ目|カイの心の声。「嘘だ。……でも、怯えているんじゃない。庇ってる」
第3話 10ページ目|ヒナがお茶を注ぎながら、やわらかく切り出す。「素敵なお着物でしたね。娘さんから伺いました」。老女がはっと顔を上げる。
第3話 11ページ目|老女がぽつりと語り出す。「……あの子はね、悪い子じゃないの」「ただ、お金に困って、道を間違えただけで……」
第3話 12ページ目|回想。バッグを提げて家を出ていく息子の後ろ姿と、それを黙って見送る母。場面が変わり、薄暗い部屋で借金取りに囲まれ、うなだれる息子。
第3話 13ページ目|話を聞き終えたカイが、あごに手を当てて考え込む。「……息子さんも、被害者ってことか」
第3話 14ページ目|数日後。老女の家を見張るカイと犬飼刑事が、塀の陰に身を潜める。
第3話 15ページ目|一台の黒塗りの車が横づけされ、赤いドレスの女が降り立つ。長い黒髪、首には羽根の入れ墨。妖しい笑みを浮かべて門をくぐる。
第3話 16ページ目|待ち構えていたカイと犬飼の前で、女は余裕の笑み。「あら。承諾はきちんと頂いてるのよ?録音もあるわ」。カイがスマホを掲げる。「その録音、こっちも最初から聞かせてもらった」
第3話 17ページ目|再生される録音データ。顔色を変える女に、カイが言い放つ。「返す気のない査定を、世間じゃ盗みって呼ぶんだ」
第3話 18ページ目|門の外に、やつれた息子が現れる。石畳に崩れ落ち、声を上げて泣く息子。母が手を伸ばして叫ぶ。「タケシ……!」
第3話 19ページ目|犬飼刑事が息子から事情を聞き、手帳に書き留める。そして赤いドレスの女に手錠がかけられ、警官に付き添われてパトカーへ連行されていく。
第3話 20ページ目|数日後、千代田警察署。弁護士とともに女が署から出てくる。歯噛みする犬飼。「証拠不十分…だと?ふざけやがって」。詰めかける報道陣。
第3話 21ページ目|釈放された女がカイに顔を寄せ、耳元でささやく。「“遺品読みのカイ”。オーナーがね」「あなたのお祖母様のこと、よーく覚えてるって」
第3話 22ページ目|目を見開いて息を呑むカイ。振り返ることなく、雨に濡れた石畳を去っていく赤いドレスの背中。
第3話 23ページ目|後日、老女の家。娘の手から指輪の箱が母へと戻される。涙ぐむ娘。老女は指輪を光にかざし、静かに微笑む。
第3話 24ページ目|畳に額をつけて土下座する息子。「……母さん、ごめん」。母はその手にそっと自分の手を重ねる。「モノより、あんたが帰ってきたことが嬉しいんだよ」
第3話 25ページ目|夕暮れの帰り道を並んで歩くカイとヒナ。ふと足を止めたヒナに、カイが振り返る。「どうした?」
第3話 26ページ目|ヒナが打ち明ける。「私の兄も、5年前に借金を残していなくなったんです」。財布から取り出したのは一羽の折り鶴。「兄、折り紙だけは天才で。鳥ばっかり折ってました」
第3話 27ページ目|カイが折り鶴を受け取り、夕陽にかざしてじっと見つめる。茜色に染まる路地を、二人は並んで歩いていく。
第3話 28ページ目|無数の鳥籠が吊るされた薄暗い洋館。赤いドレスの女が片膝をついて報告する。「例の男、思ったより厄介です」。肘掛け椅子に座る“オーナー”の影。
第3話 29ページ目|黒手袋の手が、鳥籠に古い鍵をかける。「チィン」。闇の中で口元だけを歪めて笑う男。「そろそろ「窓口」にも、鳥を一羽、飛ばそうか」
第3話 30ページ目|机の上に置かれた「お片づけの窓口・求人応募書類」。氏名の欄だけが黒く塗りつぶされている。それを見下ろす男の背中。
第3話 31ページ目|鳥籠の吊り下がる洋館の広間。大きな籠には古い鍵が下がっている。闇の奥へ歩き出す男の後ろ姿。「第3話・完/つづく」

同じ思いをする前に。

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— 第3話 おわり —

第3話 巻末コラム

その「高価買取」、
本当に高価ですか?

「不用品、
高く買い取ります」

そんな言葉と共に、笑顔で家を訪れる業者がいます。
ですが、その笑顔の裏で――本当に欲しかったのは、着物ではなく指輪だったとしたら、いかがでしょうか。

「査定」という名の持ち去り

訪問して買い取りを行う業者の中には、当初提示していなかった貴金属や指輪を「ついでに査定させてください」と持ち出し、そのまま返さないという手口を使う者がいます。

第3話のスミエさんのように、大切な指輪を「査定するだけ」と言われて渡してしまい、そのまま戻ってこないというご相談は、決して珍しくありません。

なぜ、被害に気づきにくいのか

訪問購入の被害は、ご本人が「自分で納得して渡した」と思い込んでしまうことが多いという特徴があります。
特にご高齢の方は、強い口調で畳みかけられると、断りづらさから流されてしまうことがあります。

どうすればよいのか

  1. ①
    その場で貴重品を渡さない 「後日、改めて検討します」と伝えるだけで、悪質な業者は驚くほど簡単に引き下がります。
  2. ②
    一人で対応しない ご家族や、信頼できる第三者に同席してもらうだけで、被害を防げるケースが多くあります。
  3. ③
    「返してほしい」は、いつでも言っていい 一度渡してしまったものでも、納得していない場合は、はっきりと「返してください」とお伝えください。

大切なものを手放す時こそ、
信頼できる相手を選んでいただきたい。

迷われたら、ぜひお片づけの窓口にご相談ください。

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